第23話 リサイクル
落下している。光の線が下にぐぬーっと伸びていく。
バラバラと落ちていく壁や床は少しずつボロボロと崩れていく。
崩れて砂になりやがて細かな粒子となる。
最後には物質ではなくなったようで光の粒子となりくるくると渦を巻くように集まりながら落ちていく。
上からも大量の光の粒子が合流してくる。
崩壊したダンジョンの分なんだろう。
ダンジョンの存在がそのままエネルギーに変わっているようであった。
そっかー。おいちゃんに嫌われてたのかー。
勘違いかー。あー涙でそう。
落下はまだ続く。
中には生きた甲虫人もいる。
見つけ次第、脳を焼き切ると甲虫人も光の粒子へと変わっていく。
時間が経つごとに甲虫人の数が増え、虫との戦いで忙しくなる。
甲虫人たちも落下に慣れてきたようで、ヴィイイイイと羽を動かして迫ってくるのをボンボンと火をつけていった。
どれくらいの時間が経ったのか。
俺の周りにはカラフルに様々な色が混ざった光の粒子が濃厚に渦巻いている。
おいちゃんの顔を思い出す。
そういえば最近、俺にはあまり笑顔を見せてくれなかった気がする。
透けるような透明感ある肌に、紫色の瞳。額のねじれた角。
すらっとした細い体に、少しだけ膨らんだ胸。
揉みたかった。くそっ。
落下はずっと続いていた。
かなりの時間が経ったはずだが、腹も減らず喉も乾かない。
やがて落下が止まると、光の粒子はキュルキュルと音を立てながら渦の中心に集まり始める。
ズゴゴゴゴとあたりの粒子は残らず渦に引き込まれ、中心に光る珠が残された。
ほう、これはボスの魔石玉じゃないか。
ダンジョンコアとでも言えばいいのか。
その珠は俺の方に向かってくると、俺の腹に引っ付こうとする。
拒否する。
ぴたっと肌にくっつかれた瞬間に引き剥がすと、腹の肌ごと持っていきやがった。即座に【治癒】を打つ。
ダンジョンは崩壊した後、再度エネルギーを吸収して、生き残ったモンスターの腹部に寄生して再生するのだろう。
だって、めっちゃお腹狙ってくるし。
腹に寄ってくるダンジョンコアを両手で防ぐ。押し合いである。
不思議と手にはくっつかない。あくまで腹狙いだった。
そうだ、とオークと仲良しミリアムを思い出す。
あいつにハメられてダンジョンコアのコピー品だっけ?なんかそんな珠に魔力を注いだ時のことを。
あの時は延々と吸われてオリジナルのところに飛ばされたが、オリジナルに注ぐとどうなるのか。
やってみなはれ精神である。
ぐっと手に魔力を込める。
思ったとおりダンジョンコアは俺の魔力を吸い始める。
俺は自分の魔力の底を知らない。
最近では全力で魔力を使うと大変なことになるので控えているのだ。
じゃぶじゃぶと魔力を注ぐ。
じゃぶじゃぶ。
じゃぶじゃぶ。
………
最初はカラフルだったダンジョンコアだが、魔力を注ぎこむと色が濁りだす。
そういえば色は混ぜるほどに黒に近づくんだった。
キレイだったコアがどす黒く変色していく。
俺の魔力を注いだせいでどす黒くなるとか悲しい。
なんか逆に光り輝いてくれてもいいと思うんだけど。
そんな事を考えていると、ピタッと魔力を吸う力が止まる。
ダンジョンコアが俺の腹を狙わなくなったのだ。
コアから浮力を感じて手を離す。
停滞していた空気が動き出す。
目の前のダンジョンコアと俺の間に太い光の線が出来ている。
あくまでも下腹部を狙っていたようで、俺のへそのあたりに光が繋がっていた。
ダンジョンコアとともに身体が浮かび上がる感覚がある。
繋がったダンジョンコアからエネルギーを使え、という意思を感じる。
他のダンジョン例みたいなものが頭の中を駆け巡る。
コアの中の魔力を使ってダンジョンを造りたいようである。
早く決めて欲しげなコアは上昇スピードを加速させる。
だが、俺にはわかる。これ、俺を焦らせるための演出だわ。
だって異空間だし、本来上がろうが下がろうが関係ないし。
いろんなタイプのダンジョンが頭に浮かぶがそそらない。
そもそも地下にあるってのが最悪である。
日光欲しいやん。
そうだ、せっかくイメージ通りできるなら、地上に作っちゃお。
でもその前にダンジョンコアよ、お前だ。
ダンジョンコアに人型の受肉をイメージする。
もう、俺の好み通りの女の子にしてやる。
髪型はポニーテール。
背はちょっと低め。
四肢が長く、華奢な体である。
胸は少し控えめの手のひらに収まるサイズにする。
黒髪のボブにして気の強そうな目の少女である。腹についたダンジョンコアがぽっこりとしていて妊婦のようである。
まあそれはそれでロリ妊婦的な無しではないが、やはりスレンダーが好きだ。
ダンジョンコアの魔力を、より圧縮させるが、コアの野郎め抵抗しやがる。もう許してくださいこれ以上縮まりませんとか頭に浮かぶ。
構わず圧縮すると魔力が漏れ出し、受肉した身体に蓄えられていく。
コアはどうやら肉体もコアの一部とすることにしたようである。
さぞ頑丈な身体になる事だろう。
小さくなったダンジョンコアはみぞおちの辺りで小さく輝いている。
素晴らしい。好み通りの女である。
いや、二十歳よりは少し若いかな。少しだけな。
薄い身体に少し膨らんだ胸。その下にはダンジョンコアが輝く。黒光りである。
少し浮き出たあばら骨とかすかな腹筋はなだらかなカーブを描く。
引き締まったウェストの下には大きめの骨盤がぐっと出ていて、つるんとしたお尻があった。
黒髪ボブに気が強そうな目つきの少女。
見ているだけで楽しい。
もうおいちゃんとの勘違いも忘れられそうである。
我ながら現金なものだと思う。
少女はゆっくりと目を開ける。
ブラウンの瞳が輝いている。
少女は微笑みながらゆっくりと口を開く。
「アーサー大しゅき!セックスしよ!」
「ふぇ!???」
少女はいきなり抱きついてきた。
胸もとに顔を押し付けもの凄い匂いを嗅がれている。
太ももがぬるぬるする。
見ると少女が、自分の腰を俺の太ももに強烈に擦りつけていた。
あ、あれー?
まってまって。違うの。
そうなんだけど、違うのよ。
欲しいのは紆余曲折あってのそれよ!
直球は違うのよ!
何故だろうか。グイグイ来られると引いちゃうのは。
なんか失敗したかもなあと、ぼんやり思った。
でも、その手は少女の胸を遠慮なく揉んでいるのであった。
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