底辺勇者のダンジョン攻略〜奴隷生まれの異世界人生はベリーハード〜
あれ東
序章
とある国の首都、その政治の中心地となる街の中でもひときわ大きな建物の中。
白いローブを着た12人の極級魔道士が魔法陣に手をかざしている。
その隣の部屋には要人らしき人物たちの姿が並んでいる。
大陸の中で最も繁栄しているその国の国家予算の半分をつぎ込んで準備した今回の勇者召喚は失敗できないプレッシャーから魔道士たちの額にも汗が光っている。
ひときわ立派な杖を持つ魔道士が杖を掲げると、残りも全員が杖を掲げ、瞬間に魔法陣から光が吹き出した。
通常の召喚より上位の、数ある異世界から適正の合う魂を探す【宝命召喚】と呼ばれる秘術であった。
光の中に一人の人物がぼんやりと浮かび上がる。
魔道士たちは手の中の魔石から魔力を吸い、空になると新しい魔石を手に掴む。
どんどん惜しみなく注ぎ込む魔力は、この国の一年分の魔力量に匹敵していた。
魔法陣の中で、黒髪と黒目の男の姿が徐々に鮮明になる。
その時、一人の魔道士の手の中の魔石が爆ぜた。
握り込んでいた右手が爆けとび、噴き出した血が魔法陣に降り注いだ。
同時に鮮明になりかけていた男の姿は薄れていき、光も消えていく。
光を失った魔法陣を前に魔道士たちは慌てている。
そして報告を受けた隣の部屋の面々は顔面蒼白である。
なんせ一年分の魔力と莫大な予算をかけて失敗したのだから。
そうして、この世界に召喚された勇者は望まぬ場所に生まれ落ちることになってしまったのでした。
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