6年1組 30番


「これで全員かぁ〜」


 全ての生徒の日記を読み終え、僕は大きく伸びをした。もたれかかった椅子が、わずかにキシキシと音を立てる。


 みんなそれぞれ個性があり、そして、みんなそれぞれ楽しく毎日を過ごしているに違いない。この日記を通して、僕はそう確信した。


「……そういや、原稿1枚余ったな」


 30枚組の原稿を買ったため、ちょうど一枚白紙の原稿が残っている。


「......」


 少しだけ悩んだあと、僕はペンを手に取る。


『6年1組30番』


 存在しない出席番号と自分の名前を、原稿の一行目に書く。そして1文字ずつ、とりとめもなく原稿を埋めていく。





────────────────────


6年1組 30番


 小学校生活は彼ら彼女らにとって今年で最後。


 最後にいい思い出を作ってあげられるよう、精一杯頑張るぞ!


────────────────────



「......」


 なんか恥ずかしくて、生徒には見せられないなぁ。僕はその原稿を畳み、机の中にそっと入れた。


「……よしっ!」


 今から始まる一年間の学校生活に期待しつつ。僕は原稿の束をオフィスワゴンの中へと大切に仕舞った。

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