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 黒猫は再び移動を始めた。

 真白はその黒猫を追いかけて雪の中を歩いた。

 すると、ある地点で、黒猫は動きを止めて、後ろを振り返って真白を見た。

 そして「にゃー」と一度鳴いたあとで、まるで最初からそこに『黒猫』なんていなかったかのように、だんだんとその姿が透明になり、やがて黒猫は世界から、吹く風と一緒に消えていった。 

 真白が黒猫の消えた場所までたどり着くと、そこはあの心の病室の窓から見える枯れた柳の木がある場所だった。

 黒猫は柳の木の根元で消えた。

 真白はそこから枯れた柳の木を見上げた。

 柳の木は、近くで見ると思ったよりも、ずっと大きな木だった。

 柳の木のもっと、もっと、高い場所にあるはるか上空からは、ちらちらと白い雪が降ってきた。


 ……疲れた。

 と、真白は思った。

 そして真白はその場所にゆっくりと、体を丸くして、座り込んだ。

 真白は、真白が思っている以上に、とても疲れているようだった。

 真白には、なんだかいろんなことが、この不思議な夢の世界での出来事が、理解できるような気がした。

(でも、その気持ちは、すぐに真白の中から消えて、なくなってしまった)


 ……そうか。ここが僕の夢の終わりの場所か。

 そんなことを真白は思った。


 真白は、ゆっくりと目を閉じた。

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