47 ……なんだか、まだちょと眠たいね。

 ……なんだか、まだちょっと眠たいね。


「……くしゅん!」と、その闇の中で心がくしゃみをした。大きなくしゃみだ。真白はその音につられて上を向いてみたのだけど、真白の目は星の光に慣れてしまっていたようで、その闇の中で心の顔をはっきりと見ることはできなかった。

 その病室までの帰り道、心はずっと寒そうに体を震わせていた。休憩所でじっとしていたことがいけなかったのか、どうやら心は今日も随分と体を冷やしてしまったようだった。真白が「にゃー」と小さな声で鳴いても、そのときから心はにっこりと笑うだけで、言葉を話したりはしなかった。

 心はいつもよりもさらにゆっくりとした足取りで病室まで戻っていった。病室の中に入ると、心の顔が真っ赤に火照っていることに真白は気がついた。もともと真っ白な顔をしているせいか、赤みがかった心の顔はいつもよりも正気に満ちているように見えた。実際に今の心の顔はロウソクでも雪でもなくて、きちんとした、『生きている人間の顔』に見えた。

 心は着ていた小さな子供用のコートと厚手のマフラーと手袋を脱ぐと、それらを壁の出っ張りにかけてから、とても小さな声で、「おやすみ、猫ちゃん」と言って、いつものようにベットの中に潜り込んで眠ってしまった。真白は少しだけ間をおいてから、病室の丸椅子とテーブルを利用して、心のベットに飛び乗ると、それから心の胸の上に移動して、そこに座った。

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