〔二人の秘密〕
〔二人の秘密〕
私が唯一 テストで勝てないアイツ
いくら勉強しても アイツだけには何故か勝てない
背が高くて スポーツも出来て おっとりしていて みんなから好かれていて
その上 勉強も出来るなんて ズルいじゃない
学校の帰り道 アイツを見かけた
家の帰り道とは違う方向に歩いて行った
塾?それとも特別な勉強法?
息を殺して 跡をつけた
着いた先は 川に架かる橋の下
置いてあった 段ボールに近付くと
小さな子猫達が顔を出した
アイツは鞄から缶詰を取り出し 子猫達に与え始めた
すると一匹の子猫が 川に近付き水面を覗き込んだ
アイツはそれに気付いていない
子猫が何かを取ろうと 川に手を伸ばす
「あ!危ない!!」
私は思わず 叫んでしまった
それに気付いたアイツは 川に半身を乗りだし
川面ギリギリで 落ちそうになった子猫をキャッチした
私は隠れて見ていた事を忘れていた
「ほっ」と胸を撫で下ろし アイツに近付いた
「こんなところで何をしてるの?明日テストなのよ。」
すると
「ドッポ~ン!」
アイツは子猫を持ったまま 川に転落した
「ち!ちょっと風見君!大丈夫?!」
急いで駆け寄り 声をかけた
アイツはすぐに上がって来て
「大丈夫、大丈夫。無事だ。」
と、子猫を見せると 私に手渡した
私は ずぶ濡れの子猫を ハンカチで拭いてあげる
「も~、何やってるの!」
顔をあげると そこには上半身裸のアイツが立っていた
父親以外 初めて見た男子の裸
私は 顔が赤くなって行くのがわかった
私は子猫を顔の前に持って行き その赤い顔を隠した
そしてアイツに話を聞いた
捨て猫の飼い主を探しながら世話をしていること
私が後を付けていた事を知っていたこと
私の猫好きを知っていたということ
「お前は可愛いから目立つんだよ。それに猫好きだから、もしかしたら飼い主になってくれるかもしれないだろ?」
私は「可愛い」のフレーズにまた顔が赤くなッ行くのがわかった
それでも自分の腕の中で 寝ている子猫を見ると このままにはしておけなかった
「お母さんに聞いてみる。」
そう答えた瞬間
「ギュ!」
「ありがとう!水川!」
アイツが裸のまま 私に抱きついて来た
「ち!ちょっと!?」
ガッシリとした胸板が 私と子猫を抱き締める
「子猫が…子猫がつぶれちゃう…」
恥ずかしさのあまり それを言うのが精一杯だった
気が付くと雨が降り出していた
「あ…私、傘が…」
「なんだ、傘が無いのか。これ使えよ。」
アイツが傘を貸してくれた
「でも…風見君が…」
「ハハハ!これ以上、どこが濡れると?」
アイツは両手を広げ胸を張る 裸のままで
「ど…どうせ濡れるなら早くシャツを着なさい!」
家に帰っても、アイツの裸が頭から離れない
私の事を「可愛い」と言ってくれた
ネコ…好きなんだ
傘…貸してくれたし…優しいな…
い!いやいや…アイツはライバルだ!て…敵なんだ!
…敵……、なんだけどな…
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