〔あなたの腕に…〕


誰も居ないはずの 放課後の教室


1人で座っている あなたを見つけた


平静を装い 声をかける


「なにしてんのよ?こんな所で?」


「おう?出たな!チビッ子怪獣『ペタゴン』め!」


「誰が『ペタゴン』だ!」


これがあたし達の いつもの挨拶


「で?なにしてんの?」


「ん?ちょっと忘れ物、お前こそ、なにしてんの?」


「ん?あ、あたしも忘れ物…」


「え?お前のクラス隣だろ?教室間違えたのかよ、このおっちょこちょいめ。」


いつもと変わらない あなたの態度


でも あたし知ってるんだよ


あなた あの娘と付き合い始めたんでしょ?


頭が良くて 大人しくて 胸も大きくて あたしとは正反対


あたしの方が 一緒にいた時間は長いのに…このバカ!


「手!出して!」


「え!?いきなりなんだよ?」


「いいから!」


あなたの手を取り 手の平に マジックで「バカ」って書いた


「あ~!なにしやがる!だったら…」


あなたも あたしの手を取り「チビ」って書いた


それからは お互い手を取り合い 悪口を書き合った


あなたの手を触るたび 胸が熱くなる


あなたの指が触れるたび 顔が赤くなる


薄暗い放課後の教室 手を取り合い笑っている

2人の男女


こんな所を 他の人に見られたら


他の女子に 見られたら


知らないよ 変な噂がたっても


知らないよ そのせいで あなたがあの娘にフラれても


あ…もうだめだ…


これ以上ここに居ると


あなたの腕に「好き」って書いちゃう


「あ、あたし、そろそろ帰るね…」


「おう!また明日な!」


笑顔で手を振る あなたの腕に 1番大きく残ってる


あたしが書いた 最後の言葉


「この!うわきもの!」




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