#149:伽藍な(あるいは、双子座のサーガ)
決勝トーナメント第5試合。僕らにとっては決勝3試合目。何というか、決勝に入ってからの疲労度が予選の時とは段違いだ。重い重い。そんな疲労困憊模様の僕らが、何とか惰眠の誘惑を断ち切ってテントからグラウンドにまろび出ていくと、
「それではっ、次戦始めますっ!!」
球場に響き渡る爽やかな声。声も正統派だ。池田リアちゃん(黄緑)。曲者ぞろいのダメ関連の中で、ほぼ唯一と言っていい、マトモな実況少女の再臨だ。僕はその声に少しだけ元気をもらうと、ぐいと顔を上げて内野方面へと向かう。
「6組の最下層から8つの勝ちを積み上げて、遂に頂を臨むここまでたどり着きましたっ!! チーム19、メイド3人娘の戦いっぷりをとくと御覧じろ!入場ですっ!!」
ごうっというような歓声が沸き起こる。既に僕らは結構な注目株だ。元老院はよくは思ってはいないだろうけど。
「……」
目指す内野側には、短時間で設えられた次の戦いの場が、既にその異形を晒している。今回のも6人全員の総力戦のようだ。中心から放射状に伸びる6枚のアクリル製っぽい足場。何かもう見慣れた感じ。先の戦いの時と同じく、中心には円柱状のプールらしきものが鎮座しているのも同じ。まったく、ようやるとしか言えない。
「対するは、1組まさかの初戦敗北っ!! か〜ら〜の3連勝っ、で決勝へと駒を進めたっ! 実は今いちばん勢いがあるかもしれない、チーム10! 輝く3人の美貌に刮目せよ! 入場ですっ!!」
リアちゃんの紹介を受け、相手チームが対局場の真向かいから姿を現す。例のごとく、そちらだけスポットライトと出囃子付きなのが気に食わないけど。
「白銀のジェミニ、ミリ×タリ×シスターズ、ミリィこと元老ナンバー28、ログ=メ降臨っ!!」
さっきから僕に何かと突っかかってきた銀色の方だ。深緑を基調に、黒や茶色が散った迷彩色のワンピースを身につけているのは先ほどからだけど、今は軍帽っぽい、ひさしの付いたごついのも被っている。相変わらずの無表情だが、しかし僕と目が合うと心持ち眉を歪めて見せている。
そしてやはりの元老の者かっ……もはや当たり前になってきてはいるけど、ガンガン投入されてきているよね……そもそも予選をちゃんと勝ち上がってきているのか? それすら怪しく思えてくる。
「黄金のジェミニ、ミリ×タリ×シスターズ、タリィこと元老ナンバー20、ロジ=メ爆誕っ!!」
同じような紹介で、同じような容姿の金色の方が、完全周り無関心状態で壇上に出てくる。こちらが身につけているのは青白の迷彩ワンピで、さらに略帽的なのをあみだに被っている。コンセプトは……よく判らない。
「やつらには気をつけろ。難解DEPで評価者を煙にまく天賦の才の持ち主たちだからよぉ」
その様子を見やり、アオナギが忠告をしてくれるけど、何かダメ人間って感じはしないんですよね。ダメ感もなければ、もっと言うと人間感も希薄というか。
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