#132:恫喝な(あるいは、枠の中の、懲りない池面)
作戦タイム中、鳴り響いていた重低音サウンドが徐々に収まっていき、各々「カード」を携えた参加者6名が壇上中央に戻ってくると、まばゆい金色の照明が僕らを照らした。歓声がピークに達する。僕は緊張感と共に、うまく表現できないような不思議な高揚感も同時に感じていた。
「対局っ!! 開始だっ!! 『スクエニック・ハーフナーパイプ』っ!! ライドォォォンっ!!」
桜田さんがマイクを持っていない方の手を高々と上げる。よっしゃ、気合い入れろっ!! 僕はアオナギ・丸男と軽く目を合わせ頷くと、それぞれアクリル足場のレール上に取り付けられた、鋼鉄の直方体へと歩を進めるのであった。負ければ地獄へと誘う、性悪なマシーンに。
「……」
その装置の中心あたりに位置する、ドーナツ状の……座席というよりは輪投げの輪っかを大きくしたような黒い樹脂製のリングに尻を着ける。思ったよりぴったりフィット。黒服の係員たちの手により、その黒ドーナツを固定しているパイプに五点式のシートベルトで上半身、両肩と腰とを固定される。固定はされたが、体は結構動かせる余裕を持たせたままだ。つまりこれがのけぞることの出来る範囲ということだろう。
もちろんのけぞった時間=装置が進む時間であるので、あまりしてはいけないのだけれど。このシートベルトはどうやら対局者が途中で逃亡するのを防ぐのを主目的としているのでは? そう勘ぐってしまう(たぶん当たり)。
「バーに固定されたカードスタンドに手持ちの『属性カード』をはさんだらぁっ!! 準備は完了っ!! さあ行くぜっ、限っ!! DEPっ!! ジャンケンっ!!!」
桜田さんの煽りに会場はもう怒号のような歓声でうねっている。僕はその間もそそくさと、目の前に渡された「バー」に固定された透明な書類挟みのような器具にカードを差し込んでいくわけだけど。
「おやおやおや〜? これはこれは、お久しぶりでございますね、みなさまぁ?」
僕を6時方向とすると、左前方-10時の方から、聞き覚えのある粘着質な声が聞こえてくる。マイクで音声拾ってるんだね……まあその慇懃無礼にもほどがある声をわざわざ聞きたいとは思わないけど。
「本戦で当たるなんて、何たる僥倖……っ!! いつぞやの借り、熨斗をつけて返して差し上げますよ?」
為井戸新四段……こいつの喋り口もテンプレ感漂う物言いも気に障る。でも今回はお互い無傷では済まなさそうだ。決着をつけるには……ちょうどいいかも知れないけど。
「……だとよ少年。何か言ってやんねえ」
アオナギが眉間に皺の寄った渋い顔つきで僕を煽る。ですよね、こいつはホント、痛い目見なわからん系の奴ですよね。よし。
「……向こう一ヶ月」
わざと可愛らしい顔と声を作り、僕はタメイドに向けてそう切り出す。こいつは僕の中ではいちばん与し易い相手……アオナギやサエさんに比べたら下の下の下っ端に過ぎないわけで。
「固形物を、
そのままの表情と声色でそう凄んでやった。エヒィ、というタメイドの小さな叫びがマイクに拾われる。
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