夜の買い物
春の雨はアスファルトと人々の足首を濡らしていた
靴が水の層を踏む度に卵が割れるような音が響いた
駅はめまぐるしく人間を吸っては吐き出して
演奏家の語らいに誰一人耳を貸さなかった
暗くなった大通りは取りこぼした時間を補おうという焦りで溢れていた
確かこの通りにあったはずだと
胸を痛めながら私は傘の隙間を流し見た
行き過ぎて、とうとう見つけた
傘を閉じたとき、雨が髪にかかった
「好きな飲み物があればあの人も少しは生きる気になるだろう」
甘い考えだ
しかし写真と同じパッケージを探し回った
なかった
鼻が痛んだ
別の物を贈ることにした
慣れないレジに菓子の箱を出した
外には入ったときと同じ景色が展開されていた
歩きながら
女の気持ちに浸った
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