第49話 『協定』 その7


 現れた三体は、つまり、明らかな、ロボットさんであった。


 あたまは、前半部分しかなく、後頭部は平らになっている。


 顔色は、真っ白だ。


 しかし、体には、紺のスーツを着用し、赤い、しゃれたネクタイをしている。


 『ご挨拶を、なさい。』


 娘さんが指示した。


 すると、彼ら(?)はいかにも、しおらしく、両腕を前側に低く組んで、頭を下げた。


 『ぼくらは、ガード・ロボットたちです。よろしく。』


 ひとり(?)が、そう、しゃべった。


 なんだか、他人とは思えない。


 『あなたさまの、アナウンスから、音声を作りましたの。』


 『なるほど。』


 他人とは思えないわけだ。


 しかし、次の瞬間、ぼくは、彼らとはマッタく違うと、認識したのだ。


 

 『ファイト✊』


 すると、彼女が、叫んだ。


 二人がいる空間の周囲に、筒状の防護ドームが下ろされた。


 彼女の叫びは、深い気合いに満ちた、それだけで、もう、逃げたくなるくらいの、迫力満点な声であった。


 しろとでは、あるまい。


 すると、ロボット三体が、着ていたスーツを体から剥ぎ取り、文字通り、さんすくみの、戦いを始めたのである。


 それは、すさまじいものだった。


 人間とは、そもそも、スピードが段違いである。


 倍速フィルムを見ている感じだ。


 さらに、ファイトの中では、さまざまな、デモンストレーションが、行われた。


 分厚いブロックを持ち上げ、相手に殴りかかるが、相手は、その真ん中を、素手で撃ち抜いてしまう。


 やがて、長く太い、たぶん、鉄棒が天井から降ってきた。


 ひとりが、それを真ん中から二つにちぎり分け、相手に片方を投げわたし、お互いに、武器として戦い始めた。


 身体中、殴打しあうが、傷ひとつ入らない。


 頭を、ぶん殴っても、平気である。  


 アニメみたいに、頭が飛んだりもしない。


 腕が、もぎ取れたれもしない。


 もちろん、足も。


 『すごいんだか、すごくないんだか。でも、すごいな。たぶん。』


 わが、ボスがつぶやいた。


 『ばらばらに、されてみますか?』


 娘さんが、笑いながら言った。


 『人間モードにすると、戦えますよ? やりますか?』


 我がボスが、うなずいた。


 『あのひと、柔道とかの、達人らしいですよ。』


 安田さんが、ぼくに、耳打ちしたのである。


 『むむ。』


 ぼくは、やたら、緊張した。


 隠された、ボスの側面が表されるのか、と、思いながらだ。


 

        ✊‼️

 

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