第33話 暴走
ハッと目が覚めて入ってきたのは、見慣れた部屋の天井と心配そうな顔横に座る、見慣れた赤毛のくせっ毛のミランダだった。
「あぁ、もう一体どれだけ心配したと思ってるの!」
私が起きたことにミランダがほっとひといきついてそういうけれど。
もう私の意思とは関係なしに文字が浮かび上がることはなくなっていた。
「いったいどうなって」
「ティアが倒れた、とにかく傍についていてほしいって屋敷のメイドが呼びに来たのよ」
「セバスや私の父や母は?」
ミランダは親友であるけれど。私の父や母、そして護衛のセバスを差し置いてなぜ呼びに行ったのだろう? とつい疑問が出てくる。
「あーーー、あんたの婚約者が、王都から治癒師や医師を連れてくるっていってて、なんでかそれを総出で止めてる。もう聞きたいことや言いたいことがいろいろあるんだけれど」
ミランダは自身の髪をさらにくしゃくしゃとかくとそういった。
「なんてこと」
あわてて私は起き上がった。
ノアは私の加護を知らない。
でも父も母もセバスも私が特殊な加護を持っていることをしっていて、具合が悪いわけでもなく、物理的に負傷したわけでもなく急に倒れた理由は加護のせいかもしれないと思ったのかもしれない。
下手に調べられたら困る分野だというのに、私の加護をしらないノアは当然王都から優秀な医師を連れてこようとしているわけで。
ノアの実力が今嫌というほどわかってしまった今、あれをどうやって止めてんのよとすら思う。
いったいどれくらい横になっていたのかわからないけれど、とにかく止めないと。
「ちょっと……、そんな状態で起き上がって平気なわけ?」
立ち上がる私に慌ててミランダが肩を貸してくれた。
「とにかく私が行けば収まるはずだから。それとミランダ」
「何?」
「遅かれ早かれ戦争が始まる……」
「なんですってぇ!? ちょっと、改めてそういうってことは、確証があるってことね」
「えぇ、私の感はよく当たるでしょ」
「はははっ、そうね。前から言おうと思っていたんだけれど、ティアは占い師になったらいいかもね。こんなことまでわかるだなんて相当な売れっ子占い師になれるわよ」
それはもうすでに経験して、とんでもない目にあって……私の人生が大きく変わった。
「ミランダ。マクミラン家の跡継ぎとして命じます。有事に備えよ」
普段はため口で話している私たちだけれど、何かあるときの私たちの立場は対等では決してない。
私は改まった口調でミランダにそういうと。
「はい、かしこまりましてお嬢様」
そういってミランダは軽く会釈をした。
「それでね、ミランダ。まず今を助けて頂戴」
「え? なんて?」
「すぐにわかるわ……」
「医師も治癒師も呼ばないだなんてどうかしている」
ノアの声がよく通った。
「ちゃんと主治医がおりますから、そこに手配をちゃんとしてます」
父はそういうけれどノアは引かない。
「もう倒れて半日経っても来ないのに? 正確な場所を教えてくだされば迎えに行くといっておりますのに、なぜそれすら拒むんですか?」
あぁ、珍しくノアが言っていることの方がまともである。
話から推測するに、王都からの医師や治癒師だけは何としてもダメってことで。
この辺にかかりつけがあるからと言ったものの、そちらにも私の加護をばらすようなことはしたくないから実際は呼べない。
のらりくらりとしている間に半日たったのに、主治医は来ないことに当然ノアは不信感を募らせたということか。
結局リスタンと護衛は?
私が目の前で倒れたけれども。
ここからは私の推理だけれど、おそらく屋敷にまだ残っているのだと思う。
だから、万が一、憶が一でも私の加護がばれるような事態は避けたいからこそ。
治癒師や医師を呼ぶほどの緊急性が高い状態ではなさそうだからノラリくらりといったところかしら。
「ノア!」
私が呼びかけるとノアの視線がこちらを向いて、私の母が私と目が合うとコクリとうなずいた。
いざというときの口裏合わせその3発動ね。
「驚かせてしまってごめんなさい。でも、もう大丈夫なのよ」
ミランダに肩を借りてるという全く自分で言っても説得力ない! 状態だけど、そういい張るしかない。
「どこが?」
ごもっともすぎる。
「緊張しすぎたみたいで、こういうことは珍しくないの。心配させてごめんなさいね」
そういってニコっとわらって見せるけれど。
ノアは長い脚で私のところまでツカツカと歩み寄るとじっと私の瞳をみた。
「何?」
「私はイカサマとインチキには寛容だ。ただ、それはあくまでバレなければ問い詰めないという話だ。ティア君は一体何を隠しているんだ?」
私と同じ加護はないはずなのに、ノアは私たちが嘘をついていることをわかっていて、それが納得できなくて、いつものように私に問い詰めてきた。
ただそれは今までのように、イライラした様子ではなく。
本当に心配そうな顔をしていて。
それをみて私はどうしていいかわからなくなった。
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