第24話 会いたい理由
おちついて。
加護で確かめてないので、100%の確証があるわけではないけれど……
ノアはミランダとは会う暇はなかったはず。
だって彼は私から占い師の情報を聞き出すためか、御機嫌伺するべくべったりだった。
それはもううざったらしいほどに……
となると答えは簡単だ。
僻地で自宅の庭で野菜を育てるマクミラン領のギリ貴族の私のところだって、情報は必要だからと、諜報部のようなところがある。
王都で指折りの名家なんだから、情報を集める手段は私の家とは比べ物にならないはず。
「諜報員とかをつかったわけではないよ」
「心を読むのをおやめください」
おかしい、ウソかホントかを見抜く加護を持っているのは、ノアではなくて私のはずなのに……私の心を見透かすかのように言ってくるのが気に入らない。
「で、それではどうしてマクミランに来たばかりのノアはミランダを知ったのですか?」
腕を組んで、じとっと下から身長の高いノアを睨みつける。
「熱い視線ありがとう」
気の抜けた声でノアはそういって、睨む私の目を大きな手で覆う。
「私は目立つ」
目を覆われて言われた言葉は、実に鼻につく言葉だった。
「それはよく存じ上げております」
「立っているだけで声を掛けられる」
なんとか結婚相手をと奮闘する私とはまさに正反対のうらやましすぎる理由だ。
「そりゃ、よございました」
ノアの手を払いのけつつも私は考える。
ノアは確かに目立つ。社交界の華を簡単に手折るなど言われるほどに……
僻地のマクミランに、そんな目立つものをポンっと置けば、そりゃ人も寄ってくるかも……
噂話が大好きなミランダ。
こんな僻地の貴族など、マクミラン公爵家の私でさえ大きなパーティーにしか呼んでもらえないのだから。
子爵家のミランダともなると、実際にノアのご尊顔を拝見できるような場に呼ばれることはまずない。
だけど、ノアはゴシップの重鎮。
ノアの顔はゴシップの姿絵としてそれはもう腕利きのやつが見事な絵を毎回つけているのだから顔は割れているわけで……
ノアはミランダを知らないけれど、ミランダは一方的にゴシップ紙のおかげでノアの顔を知っている。
何より、先ほどノアが言ったように。
長身で顔立ちが整っているノアはその辺にポンっと置かれているだけでも無駄に目立つ。
ノアだと知らずとも、見知らぬイケメンがいるとなれば、そのご尊顔を拝もうと思う気持ちは仕方のないこと……
顔さえ見てしまえば、ノアだとすぐにわかるだろうし。
となれば後はもう過去のゴシップを握りしめて、ランランと目を輝かせるミランダの姿がすぐに思い浮かんだ。
「話しかけてきたのですか……ミランダが?」
ノアは軽く人差し指で自身のこめかみをトントンと叩くとすらすらと話し始めた。
「ミランダ・ランドルフ子爵令嬢。この辺にとても詳しいとのことで、占い師についていろいろ話してくれたよ。マクミランの姫君である君のこともね」
悲しいことに、ノアの言葉にはホントが浮かぶ。
あ~と思わず頭を抱えたくなる私をしり目にノアは話を続けた。
「ランドルフ子爵は王都の騎士団からも声がかかった優秀な人材。その血は6人いるお子さんのなかでどうやらミランダが引き継いだようだね。さて、ずいぶんと彼女の誘いを袖にしたそうだけれど」
ノアの発言にホントが並ぶなかで、なんだかノアの言い回しが引っかかる。
ミランダにノアがばれないようにと誘いを理由をつけて断ってきたけれど、誘いが多かったのはノアのことだけが理由じゃないから?
疑問に気が付くと、今まで狭くなっていた視界がいっぺんに開けるものだ。
マクミランは王都からほど遠い僻地も僻地、三方向を山に囲まれた不便な土地で。
平らな場所は貴重だから、仮にも公爵という爵位であるマクミラン公爵家の庭は畑となっている。
そんな不便な場所に公爵という称号を与えここに止まらせる理由はただ一つ。
最近慌ただしく飛び回る両親……
ハッとして顔を上げると真面目な顔のノアと目があった。
「ミランダは他に何かいっていた?」
「――――――戦争をするのか、と」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます