第23話 続・反省会


 もう少し冷静になった頭で反省会をしてみる。何を隠そう合コンの話だ。


 俺は本当に面白かったのだろうか。分からなくなってきた。

 一緒に合コンに参加した二人の友人、同じ職場の友人を「友人A」、より付き合いの古い友人を「友人B」とする。

 今自分で振り返ってみても、職場で友人Aと話す限りでも、どうやら俺は友人Aに全くハマっていなかったようである。これは大変ショックなことだ。女の子達相手にスベったのは、どうせ二度と会わないんだから正直どうでも良いのだが、友人にウケていなかったとなれば、話は別である。

 合コンの帰り道に、友人Bと「俺たちは所詮田舎者だ」という話をした。そして友人Aの地域ですら、やはり地元とはちょっと違うのだと。俺たちはあまりにも狭い場所で生きていると。この会話から察するに、やはり友人Bも、「俺が友人Aにハマっていなかった」と思っているわけであり、主観的にも客観的にも、俺は友人Aにハマっていなかったのだ。

 となれば、もはや俺で笑っていたのは、俺と友人Bだけということになり、俺は友人Bすら疑わなければならないことになる。俺は自分で思っている以上に、ダダ滑りしていた可能性が、十分にあるのだ。

 いや、もちろん気持ちとしては疑っていないが、まず、12人も人が居て、2人しか(俺を除けば1人しか)俺で笑っていないということがもはや異常事態なのだ。そんな状況あるか? どんなにつまらない奴でも、もうちょっと笑かせるんじゃないか?

 なんにせよ、とりあえず俺は友人Aにハマっていなかった。ならば、俺の合コンでの立ち回りは、完全に正しい物ではなかったのだ。身内だけでも楽しませられたら十分に勝ちではあるが、俺は意外にも楽しませられていなかったのだ。おまけに酔っ払って、迷惑をかけ倒したのだから、なおさらだ。

 俺は反省が足りていなかった。ちゃんと面白かったのにスベり倒した怒りから、反省を忘れていた。もちろん迷惑をかけ倒すというのも笑いの一つではあるのだが、物事には限度がある。俺はしばしばその限度を超える。それを良しとしている節すらある。俺は限度を超えて何度も失敗をしてきたのだから、しっかりと反省しなければならない。高みへ昇るために!


 だがやはり、あの合コンには苦言を呈させてもらう。

 俺が何故あんなにもスベったのか。それはツッコミが不在だったからに他ならない。12人もの人が居て、ボケが俺1人、ツッコミが0人、残りの11人は、何でも無い人達である。 一人くらいツッコミをやってくれても良いじゃないか。これはコミュニケーションの怠慢ではないのか?

 特に、友人ABどちらかは、ツッコミをやってくれても良かったんじゃないのか? 俺がこんなことを言うのは全くもっておこがましいことなのだが、それでも、彼らはサボったのだ。或いは、俺を切って、自らが勝ちに行ったのだ。俺の見立てでは、友人Aは勝ちに行き、友人Bはサボった。いや別に好きにすれば良いんだけど。こうして書き起こしてみると、何も悪いことではなかった。それならば、俺は事前に友人に頼んでおくべきだったのか。ボケるからツッコんでくれって。


 俺は合コンを「誰が一番面白いか選手権」だと思っていた。そのつもりで挑んだ。だが、それは全くの見当違いであった。合コンは、こなす物なのだ。合コン前に書いていた、職場の大学生から聞いた話の通りだ。ただラインを入手するための会なのだ。攻める必要は一切無い。攻めるならば、ラインを知った後で良いのだ。

 実際、友人Aは次に繋がっていた。ズバリ言わせてもらうが、彼は何もしていない。一切攻めることなく、ただニコニコと相づちを打っていただけである。そういう立ち回りの方が上手く行くのだ。俺の職場の先輩も一切攻めていなかったが、やはり上手く行きそうになっていた(向こうからライン聞いてきたのに急にブッチされたらしい)。


 合コンに必要なのは、そういう努力の方向性なのだ。モブになりすまし、牙を剥く。そんな下らない会には二度と参加しないってのは前回と同じ結論なのだが、俺にも反省すべき点はあったってことを言いたかった。合コンの認識を間違えていたのだから、ガッツリ空気を読み違えていたわけで、読むべき空気を読まないのは俺にとって罪であるわけで、これは俺にとって読むべき空気だったのだ。少なくとも身内は楽しませるべきだと思っているから。空気を読まないでぶっ込みまくるというメタ的な笑いは最高に面白いのだが、リスクも高いのだ。そのリスクをちゃんと管理しなくてはならないなと思った。



 少し仕事の話。

 俺は結構良い職場に転がり込んだようである。初めて職場に“厄介者”が居ないってのもあるんだけど、それ以上に、ビジネスチャンスの匂いが凄い。プンプンする。具体的には何も思い付かないけど、とにかく香るのだ。休憩室の前の俺の野糞並に香るのだ。

 なんとなく働かずに、アンテナをビンビンに張る必要がある。ビジネスチャンスのアンテナを。ビッグになるぞ!


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