第6話 そりゃやだな

今の声は美玲だ。


「今の声は烏杜かっ!」

「あっちからだよ!」

二人は声のした方へ走る。

角を曲がると、夏目神社の近くだった。

そこには美玲が沢山の烏天狗達に包囲されて手を掴まれている。

「さぁ、お戻り下さい!」

「いやよっ!絶対いやよっ!」

美玲は振り払い羽を広げて飛び上がるが、他の烏天狗達に囲まれている為逃げ場がなかった。

「姫様!あまりわがままを言わないで下さいまし」

「誰があんな爺さんと見合いなんかするもんですかっ!」

「致し方がない、皆の者姫様を捕らえよ」

高齢な烏天狗が指示を出し皆錫杖を取り出し構える。

美玲もお面を付け錫杖を構える。

「かかれ!」

烏天狗達が一斉に美玲に突っ込む。

美玲は白い翼を広げて舞い上がる。

美玲は何とか振り払おうとするが数が違いすぎて一変には対処できなかった。

「妖術 狐火」

玉緒が美玲の前に現れ周りの烏天狗達に狐火をお見舞いした。

周りの烏天狗達の錫杖が燃え上がり周りにいた烏天狗達は拡散した。

「よっと!何とか間に合ったかな?」

「大丈夫、烏杜さん」

「高円寺、夏目さん」

美玲が二人の元へ降りてくる。

「何だ小僧狐!」

「おっさんこそ嫌がる女の子を無理やりつれてく事ないだろ」

「貴様には関係ないだろうが!」

「ダチを助けて何が悪いっ!」

玉緒は烏杜達にそういった。

「ん?この妖気…貴様半妖だな」

「ああ、悪いか」

「中途半端な化け狐風情が我らの問題に首を突っ込むでないわっ!

烏杜達は再び集まり3人を取り囲む。

「ごめんね…二人共巻き込んで」

「喧嘩を売ったのは俺だから大丈夫だよ!」

「もうしょうがないな…」

撫子もお札を出す。

烏天狗達が突っ込んできた。

3人は交わす、美玲は錫杖で打ち返したり、懐から葉っぱみたいな団扇を取り出した。

「喰らいなさいよ!芭蕉扇!」

扇子を扇ぐと強風が吹き烏天狗達はバランスを崩し地面に叩きつけられた。

「悪霊退散!」

撫子の放った札から稲妻が流れた。

烏天狗達は痺れて地面にバタバタと落ちた。

玉緒はリーダー格の高齢な烏天狗と交戦していた。

しかし、相手は空を飛べる為いくらジャンプしても届かず妖術も当たらない。

「どうした?半妖!かかって来ぬか!」

烏天狗は錫杖から稲妻を放つは羽が槍みたいに飛んでくるはで全く隙を見せない。

玉緒はただ逃げ回るしかない。

「くそ!飛んでる相手はキツイな」

母親の玉藻前は浮く術を使えるが、玉緒はそれができない。

半妖は色々と制限付きだからだ。

めんどくさいなほんとに…

「もう見てらんないわね!」

美玲が玉緒を抱き抱え空へ飛び上がる。

「うわ!高いな!」

「 あまり長くは無理だから一発で仕留めなさいよ」

美玲は玉緒を抱き抱えたまま突っ込み烏天狗目掛けて飛ばした。

「喰らえや!」

玉緒は烏天狗目掛けて蹴りを放つ。

烏天狗は錫杖を使い受け止めるが…

「悪霊退散!」

撫子が背後からお札を投げ、背中に貼り付け雷撃を放出させ、烏天狗の動きを狂わせた。

「隙あり!妖術 狐火落下蹴」

烏天狗の頭上に狐火を纏ったかかと落としを食らわせたお面は割れ烏天狗は地面に思いっきり叩きつけられた。

「ぐはっ!」

その後烏天狗達を皆紐で縛り付けると改めて事情を聞いた。


「お見合いから逃げただぁ」

「はい、姫様は貴族の方とのお見合いが嫌で逃げ出したのでございます」

美玲は烏天狗一族の族長の姫で年が何百と離れた高齢の烏天狗とのお見合いがあったのだ、美玲はそれが嫌で逃げ出したのである。

「何で若い私が爺さんの花嫁にならなきゃいけないのよっ!絶対お断りなんだから!」

確かに爺さんの花嫁になるなんていくら政略結婚今でもある現代でもジジイなんてそれはないだろ。

「まあ確かに年寄りと結婚なんて普通に嫌だわな」

「私でもちょっと…」

「でしょっ!」

「ですが、これは決まりでございまして!強い妖力がある殿方と婚約して頂かない事には」

「嫌なものはいや!」

烏天狗一族も色々と苦労が絶えないみたいだ、何代もそうやって来た以上はいきなりは変えられない。

美玲の言う通り家の為に何百と離れた相手なんか十代からしたら悪夢以外の何者でもない。そりゃ逃げ出すわな…だが

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