91話 訓練の成果

 結局のところ、脳内アナウンスについての詳しい事は分からず終いだった。

 N2が知らなかったのは把握していたが、ピノに聞いても同様の反応をしていた。

 アーティファクト本来の機能として脳内アナウンスがあるなら、バックアップにそういった情報が残っていてもおかしくないそうなのだが、それがないということはN2にも関与していない機能なのでは、なんて事も言われた。

 けれど、最初に会った時のN2の初期状態から考えてバックアップごと消えている可能性もある……。



 そんな煮え切らない状態のまま訓練を繰り返す。

 武器生成の訓練になると相変わらず脳内アナウンスが流れ、登録済み以外の武器が生成できたとしても実用性に欠けるものばかりだった。


 マニュアルのないコマンドゲーをひたすら試してる感じだ。

 嫌いじゃないけど、命に関わる以上焦る気持ちが募っていく。


 それ以外の訓練は思いのほか順調だ。

 武器練度上達訓練のおかげで、むちゃな体勢でハンドガンの引金を引いてもN2のアシストできちんと狙った物にあたることが分かった。

 ミニN2達に撃たれる一方だった射撃訓練も、牽制しながら少しづつ進み、部屋の奥の壁が見える程の距離まで来ることが出来た。

 進んだ歩数はもう数えていないが、訓練部屋の奥行はだいたい50メートルくらいだろう。


 訓練場から時々N2がいなくなるときがある。

 なにをしているのかは聞かなかったが、N2自身の修行か何かをしているのかもしれないな。



 そういえばピノは知らないような気がしたので、ピノにこの訓練の意図的なものを話してみた。


「レイ様はピノが守るのでそんなことしなくても大丈夫ですよ! 星中の植物を集めて、黒い機械達なんかめっためたにしてやります! ので、N2もそんなひっつく必要もありません!」


「ははは、そうだな。でも俺も守られるだけじゃなくて、自分で出来る事は自分でしたいんだ。だから、ピノも気付いた事があったらどんどん教えて欲しい」



 ピノは相変わらず腑に落ちない様子だったが、N2とは違った視点のアドバイスはとても参考になった。

 N2は失敗した事 (射撃訓練では撃たれる事)に対しての瞬間的な要因のアドバイスをしてくれる。

 例えば、さっきの状況なら手前のミニN2達を迎撃してから移動するのがベストかな、というようにその瞬間にどうすべきか、というアドバイスだ。

 逆にピノのアドバイスは戦略的というか、詰み状態にならないためにどう動くか、というようなアドバイスが多い。

 囲まれる前に、植物の配置を考え、より安全に戦える方に移動するべきでしたね、なんて具合に。



 訓練を繰り返し、3日が過ぎた。

 戦闘技術向上のためだけに費やした時間の見返りは自分でも驚くほどで、3日目の後半は3回に1回のペースで的を撃てる程になった。


 就寝前の最後の訓練をしている最中、ふとN2が呟いた。


「ん、お客さんだっ」

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