8-4
『心配かけて悪かったね。だけど、もう大丈夫だ』
はっきりと明瞭に聞こえる声。それは、紛れもなく神代アタルのものだ。
「どうして……だって、あんなに苦しんでたのに…………?」
尋常でない苦しみ方をしていたアタルの姿が、レイラの脳裏にフラッシュバックする。たとえあの状態から持ち直せたとしても、無傷では済まないはずだ。それなのに、ヘッドセットから聞こえる声に、不調は微塵も感じられなかった。
『とにかく話はあとだ。はやく、そこから離れたほうがいい』
確かに、その通りだ。アタルが吹き飛ばした幻獣の触手は、再生を終えかけていた。すぐさまレイラは立ち上がり、その場から離れるために走り始めた。その背中を追うように、触手がまたしても追尾してくる。だが、レイラは気にしていなかった。
再び、数発の銃声。アタルが放った弾丸はレイラのすぐそばを
「いまどこにいるの!?」
『ここだよ』
あたりをキョロキョロ見回すレイラの視界の端に、きらきらと明滅する光が引っかかる。そこは、レイラとアタルがいた建物の幻獣が空けた大穴のそば。崩れた外壁の影から、銀色に輝く拳銃をもった腕が伸びていた。
(さっきの射撃。あんなところから、撃ったっていうの!?)
レイラは驚いた。建物から幻獣まで、ゆうに三十メートル以上は離れている。オーストラリアの留学時代にレイラも何度か拳銃を撃った経験はある。だが、十メートル離れた静止標的に十発中、四発当てるのがやっとだった。それなのに、彼は外すことなく、動く触手を狙って命中させていた。何かの間違いだろうか。
「それよりも、アタルっ! あんた、なんで無事なの!?」
『どうやら、岩森が持っていた注射器に
――本当は違う。アタルが岩森に打たれたのは、正真正銘の幻想子だった。それも、今までにないほどの純度の高い幻想子。しかも、岩森は首筋の静脈に注射してきた。急激に幻想子が全身にまわり、一時、アタルは本当に死ぬかと思った。
だがそのおかげで、朝から悩まされていた幻想子不足による体調不良は一発で吹き飛んだ。体が軽いし、おまけに頭も冴えている。アタルとしては、最高の気分だった。
『……で、僕が気を失っていた間に、何があったっていうんだい? 起きてみれば、君があの気持ちの悪い触手と
「………………………………………………」
『あれ、どうしたんだい?』
軽口をたたくほどの余裕を見せるアタルに、本当に無事であることをレイラは悟った。だが、言いたいことはたくさんあるのに、すぐには言葉が出てこなかった。
「……本当に……心配……したんだから……」
ヘッドセットを通して、アタルの耳には、レイラの詰まるような声が聞こえたような気がした。遠く離れた物陰にいるせいで、彼女がどのような表情をしているのか見ることはできない。それでも、アタルはレイラを安心させるために、もう一度、自分の安否を伝える。
『悪かったよ、でも今は、本当に大丈夫だ』
しばしの沈黙の後、ようやくレイラから返信が返ってきた。
「もう……ふざけたことは言わなくていいから。あの幻獣は、あんたが変な薬を打たれて失神した直後に現れた。おかげで岩森は取り逃がすし、もう最悪よ!」
いつもの調子の声が聞こえ、アタルは胸をなでおろした。これ以上、彼女の士気が下がってしまったら面倒だ。
『なるほど。だいたいの状況は分かった。それにしても、
「待って!!」
今すぐにでも建物から出ようとするアタルを、レイラは引き留めた。このままでは、先ほどの二の舞になることは見えていた。
「あの幻獣の大きな口の下、大きな房みたいなのがぶら下がってるでしょ? あれが奴の本体の心臓よ。あたしはさっきあれを粉々に破壊した。……だけど、また何事もなかったかのように再生したの。きっと、奴の弱点はあれ以外の他にもあるはず。それがわからない限りは下手に攻撃しても無駄。いい? まずはそれを見極めるの」
『了解、だったら、君は幻獣の弱点に探りを入れてくれないか。僕は邪魔になる触手を何とかする』
「オーケイ。それじゃ背中は任せたわよっ!!」
二人の幻闘士は、おのおの身を潜めていた場所から同時に飛び出す。
レイラは両手剣を下段に構えつつ、再び心臓めがけてまっすぐに突っ込んでいく。対して、アタルは彼女から少し後ろに離れた場所から、幻獣の出方をうかがっていた。
獲物を一時見失っていた幻獣の触手は、またしても現れた
「マナっ! ポルクスの
『了解なのです!! ご主人様、どうかお気をつけて!』
そう言ってアタルは、背面にしまってある連射拳銃、ブレイジング・カストルに左手を伸ばす。走りながら銃を正面に構えると、ごくわずかな時間で狙いを定めて、
弾ける音とともに、二丁の拳銃が同時に火を噴いたかと思えば、レイラの頭上に迫る触手は、朽ちていくかのように地面にこぼれ落ちていく。これで、道は
アタルの援護のおかげで、レイラは難なく肉塊の幻獣の心臓に近寄ることができた。だが、レイラの心の中で
両手剣の有効攻撃範囲に届いてるのにもかかわらず、レイラが攻撃動作に入るまでにワンテンポのタイムラグが生じていた。そして幻獣も、二度も同じ攻撃を受けるほど、愚かではなかった。
レイラが剣を振り下ろしたとき、鋼と鋼がぶつかり合うような、甲走った音が一面に響き渡った。
「え、なに――これっ!?」
レイラの両手剣は何か硬いものに弾かれ、両手は空中に放り出されていた。その間、彼女の胴体は、無防備だ。
彼女の攻撃を弾いたのは、やはり幻獣の触手だった。だが、それは今まで彼女たちが見てきたものとは少し様相が異なっていた。無数の紅い結晶に覆われた
「まずいっ!!」
無防備な姿を晒すレイラの姿を見たアタルは、切羽詰まった。このままだと、防御が追い付かずに、彼女が攻撃を受ける。とっさに、手に持つ拳銃のありったけの弾丸を心臓に向けて撃ち込んだ。
だが、放たれた弾丸は結晶を打ち砕くことなく、虚しく大気に散っていく。9ミリの弾丸の威力では、結晶を破壊することはかなわない。アタルに打つ手なしかと思われた、その時――
「こうなったら、秘蔵のとっておきを使う! 頼むっ、マナ!!」
言い放ったアタルは、右手に持つフリージング・ポルクスを左手に持たすと、空いた右手をジャケットの
『〝ピアッシング・スコルピオ〟の使用要請を確認。
マナの声が耳に伝わると同時に、アタルは懐からブラッククロームに塗装された一丁の
マテバ社製オートマチックリボルバー〝
鈍く輝くリボルバーの引き金に、アタルは人差し指を乗せる。軽く力をかけると同時に、引き金と連動する撃鉄は滑らかな動作で、持ち上がっていく。やがて、限界まで起き上がったところで、撃鉄は元の場所に一気に引き戻される。その瞬間、
戦場に、それまで鳴り響いていたカストルとポルクスよりも重厚かつ、大きな銃声が轟いた。巨大な
結晶で覆われた触手は、バラバラに砕け散る。何本もの触手が層を形成するかのように幾重もかかった防御は、あっけなく破られた。アタルによってぽっかりと空けられた穴の奥には、心なしか、鼓動の速まった心臓が見え隠れしていた。
「もう一発だ!」
二発目の弾丸が発射される。凄まじい発射音が鳴り響いたかと思えば、幻獣の心臓はすでに跡形もなく爆裂していた。紅色の結晶の隙間から、ぼたぼたと赤黒い血が漏れ、地面をゆっくりと侵食していく。
心臓を再び破壊され、肉塊の幻獣は身を
「何してる、早くそこから離れるんだ!」
呆気に取られているレイラに、アタルは声をかける。レイラは、ハッと我に返ると、すぐさまアタルの背中を追った。やがて二人は、幻獣から少し離れた建物の中に身を隠した。
「はあっ、はあ……ありがとう、おかげで助かったわ」
「どうってことないさ。それにしても、あの幻獣、見れば見れるほど、おかしなところだらけだね」
「ええ、あたしも、あの結晶の生えた触手は初めて見た。おかげで、余計に倒すことが難しくなったわ」
そう言って、レイラは口元に手をあてて考え込む。
(あたしの攻撃がことごとく効かなかった。まるで、対策でもされたかのように……)
黙り込んだレイラを置いて、アタルは建物から少し顔を出して、幻獣の様子を観察する。肉塊の幻獣は、皺だらけの干からびたミイラのように、地面に横たわっていた。このまま、形象崩壊してくれれば苦労はないのだが。
「マナ、ここら一帯の
『周辺の幻想子反応の脅威レベルは
「
『えーっと、特に幻想子の減少傾向はありません。四等級のまま一定を保っているのです』
(減らない、ということは、奴はまだ死んでいないということか。さて、困ったものだね……)
『ご主人様! 幻想子反応が上昇しているのです!!』
マナの警告とともに、地面に伏していた幻獣に動きがあった。萎んでいた胴体は徐々に膨れ上がり、地面に伸びていた触手もビクビクと
「まいったな。どうやら君の言う通り、心臓を破壊したくらいじゃ奴は死なないようだ」
「こうなったら、本部に連絡して増援を呼ぶしかないようね」
「増援を呼ぶのはいいけど、それまで僕たちが、奴を抑え込めるかどうかが問題だね。ここから、市街地は離れているのかい? ……って、そもそもここはどこだ?」
今更なことを言うアタルであったが、事態は一刻を争う。そんな説明をしている時間などなかった。
「一から説明している時間はないわ。簡単に言うと、ここは人の住む市街地の中にある廃墟よ。敷地から出られたりでもしたら、人的被害が間違いなくでる」
そう言ってレイラは携帯端末を取り出すと、幻災対策庁の非常連絡ダイヤルにコールしようとする。……が、またしてもアタルはその手を掴んで引き留めた。
「待つんだ」
「ちょっと何!? まさか、あんたまた――」
「人命がかかってる状況で、僕は自分のことは優先しない」
「じゃあ……」
「奴の心臓を破壊すれば、多少の時間は稼ぐことができる。どうせ増援を呼んだってすぐ来やしない。だったら、ここは奴を倒す方法を考えたほうがよくないか?」
「それは……そうだけど」
ためらうレイラに、アタルはさらに迫った。
「あの幻獣について、他に知っていることはないかい? それが奴を倒すための、何かしらのヒントになるかもしれない」
「……私が知ってるのは、あれが本部のデータベースに登録のない新種の幻獣だってこと。そして、あの心臓部分が、最も大きな幻想子反応を出してることだけよ」
「他には? 岩森が何か言ってたりは?」
「あいつは……実験で死んでしまった動物の肉体をつなぎ合わせ、最後に核となる幻獣を埋め込んで作りだしたって言ってた。……まったくもって、不快だわ」
そう言ったレイラの脳裏に、岩森の狂気に満ちた笑顔が浮かび上がった。虫酸が走るほどの不快感に彼女は唇を強く噛む。
レイラの様子を見たアタルは、よほど嫌なやり取りがあったのだろうと察する。だが、彼女の言った言葉の中に、アタルは気になるものを感じた。
「岩森は、あの幻獣が実験で死んだ動物と、一体の幻獣からできてるって言った。それは、間違いないね?」
「ええ。正確には、実験で死んだ九体の動物と一体の幻獣よ」
(実験で死んだ九体の動物。その実験というのは、僕が打たれた高濃度の幻想子を使ったものだろうか? だとしたら、幻獣になれずに、すべて脳死した個体ということか。……でも待てよ、たとえ脳が死んでも、それ以外の臓器はすぐには死なない。ってことは――)
闇の中に一閃の光明が差し込む。
アタルの頭の中に、ひとつの仮説が成り立った。その仮説を証明するため、アタルは潜んでいた建物から身を出し、携帯端末を幻獣へと向けた。
「マナ、あの幻獣の体をくまなくスキャンするんだ。体表だけじゃない、中身までしっかりとだ」
「ハイなのです! 幻獣の幻想子スキャン開始」
携帯端末にスキャンの進行状況を表すためのバーが表示される。ゆっくりと進んでいく速度から、完了するまでにはそれなりの時間がかかりそうだ。
「なにか分かったの!?」
「まだ仮説さ。これからそれを確かめる」
そうも言っている間に、携帯端末の中のバーが画面端まで到達した。
『スキャンが完了しました!』
「それじゃあ、マナ。あの幻獣の体内で、一番強い幻想子反応を示しているのはどの部分だい?」
『口腔のある部分の真下、心臓と思われる部分に、強い幻想子反応を検知しました』
「なによ、やっぱりあの心臓が弱点じゃない」
失意に沈んだ、レイラの低い声が背後で聞こえる。それでも、アタルにはこの結果は当然ながら想定していた。そもそも、スキャンをしたのは一番強い反応を示す場所を知るためではなかった。
「まだ結論を出すには早いよ。マナ、次の質問だ。一番強い反応を示す場所はわかった。だったら、その次に強い反応はどこから出ている?」
『次点で強い反応ですか? それは……』
画面の中のマナは答えに窮する。
「どうしたんだい、マナ? ありのままの答えを言ってくれればいいんだ。もしかして、同じくらいの強い反応が複数あるんじゃないのかい?」
アタルの問いかけに、画面の中のマナは素直にうなずいた。
『そうなのです。幻獣としての反応が一つに対して、体内に
「どういうこと?」
端末に映し出されるマナを覗き込みつつ、レイラは小首を
「本体の幻獣を破壊しても、死なない不死身のトリックさ。なあに、そんなに難しい話じゃない。なぜなら、あの幻獣には本体以外に別の心臓が九つ存在しているんだ」
「なによ、それ」
アタルの言うことが理解できず、レイラはムッとした表情で迫ってくる。
「岩森のセリフを思い出すんだ。あの幻獣は本体と、実験で死んだ動物の体でできている。ポイントは実験で死んだ動物だ。その実験というのは、何の実験だと思う?」
「それは……幻想子を使った実験でしょ」
「そうだけど、ただの幻想子を使ったものじゃない。岩森が僕に打ち込もうとした純度の高い幻想子だろう。でも、それは二割の確率で脳死する欠陥品。つまり、体を構成しているのはすべて、脳が死んでしまった動物たちさ」
「まさか、九つの心臓っていうのは――」
「ようやく理解したみたいだね。そうだよ、口の下にぶら下がっている本体以外にも、実験で死んだ動物の心臓が奴の体を補助しているのさ。その証拠に、本体を破壊したところで、脅威レベルが
アタルの推理を聞いたレイラは、考え込む。アタルの言う通り、別の心臓が補助をしているのであれば、本体を潰したところでいくらでも再生できる。スキャンの結果から考慮すれば、この説は正しいのだろう。
「あんたの推測に、あたしも同意する。でないと、説明がつかない。でも、それがわかったところで一体どうやってあいつを倒すの? そう簡単に十個の心臓を、同時になんて破壊できないわよ」
もっともな意見をレイラは述べる。正体を知ったところで、それを倒せるかどうかは、また別問題だ。
だが、アタルは待っていたとばかりに不適な笑みを浮かべていた。いままで見せたことのないアタルの表情に、レイラは一歩引く。
「剣を使う君には難しいと思うからね、九個の心臓の破壊は僕がやろう。こいつなら、体内を貫通して破壊することができる。で、本命の心臓は君に頼む。僕が補助の心臓を破壊してる間、なんとか奴の気をそちらに引き付けるようお願いするよ」
そう言って、アタルはおもむろに、懐から黒光りするリボルバーを取り出した。.44マグナムの〝ピアッシング・スコルピオ〟なら、威力は十分だろう。
アタルの取り出した拳銃を、レイラはまじまじと見つめた。普通のリボルバーと違って、弾倉の下側から弾丸を発射する機構になっている。変わった拳銃だ。
「さっき結晶の触手を砕いたのはこれね。……なるほど、大口径の弾丸ならあの威力には合点がいくわ。それにしても、呆れた。一体あんた、何丁の拳銃を持ち歩いるのよ」
「
「でも、ちょっと待ちなさい。その拳銃の威力は、この目で見たからわかるわ。でも、心臓を破壊するためには、致命的な欠点を抱えてるじゃない!」
「なんだい?」
「六発よ! その拳銃に込められる弾丸は六発まで。それでどうやって九個の心臓を破壊するっていうのよ。途中で
至極当然な指摘だ。
スコルピオに装填できる弾数は六発。一発につき、ひとつの心臓を破壊していたら、当然数が足らない。体内を貫通させて、心臓を破壊するという方法もなくはない。だが、そんな神業とも呼べる芸当は、心臓の正確な位置を知っていなければできるはずもない。途中で再装填など、もってのほかだ。
鈴のような、小さな金属音が地面から聞こえる。音を出したのは、アタルが持っていたリボルバーの
その様子を見ていたレイラは眉根を寄せて、怪訝な表情を浮かべていた。
「……十分さ」
そういってアタルは、手に持っていた弾をポケットにしまい込む。そして、代わりに別のポケットから、また別の弾を取り出して、レイラの前に掲げてみせた。
それは、今まで見てきた弾薬とは少しばかり様子が違っていた。まず、弾丸を収めている薬莢が、真鍮製の光沢のある黄色ではなく、鏡のようなシルバー。それだけではない、薬莢の先に埋め込まれた弾丸は、アタルの拳銃と同じく、真っ黒に塗りつぶされていた。
「なによ、その弾は」
「六発で、九個の標的を破壊できる魔法の弾だよ」
「ふざけてなくていいから……」
そう言いかけていたところで、レイラは口をつぐんだ。弾を持つアタルは笑ってなどいなかった。こちらを見つめる彼の瞳に、冗談や場を和ませようとする意図は全くない。真剣な眼差しを向けるアタルの自信に、レイラはすこし圧倒された。
「……わかったわ。でも、もしうまくいかなかったら、討伐は諦めて増援が来るまでの防戦に徹するわよ」
それを聞いたアタルは、表情を緩ませ、にこりと笑う。つられて、戦闘で張りつめていたレイラも、心が軽くなるようだった。
彼の本当の実力を知らないのに、どうして心が安らぐのだろうか。レイラは不思議に思った。まだ、戦いが始まってもいないのに、一種のやり遂げたような雰囲気が二人の間に漂っていた。
「大丈夫さ。きっとうまくいく」
そう言いながら、アタルは弾倉に弾を込め始める。やがて、弾倉の中に六発の弾を装填し終わると、アタルは携帯端末をレイラに向ける。
「なに?」
「君も端末を出すんだ。戦ってる最中、お互い連携が取れてないと、何かあったときマズいだろう。
「……いいの?」
レイラは驚いた。川崎での戦いでは、あんなに
「僕の過去を知ってしまった以上、隠したってしょうがない。ただし、このことは他言無用で頼むよ」
『お嬢様、【ID:神代アタル】から、積極的同期の認証要求がありました。認証なさいますか?』
「ええ、頼むわ、ヴィラル」
レイラは、端末画面の新規ウィンドウに表示された〝認証〟の文字に触れる。一瞬の間をおいて、アタルの端末との同期が開始された。彼の過去の戦闘データを取り込むのに、多少の時間がかかっているようだ。
だが、これで戦闘中の指揮系統での混乱はなくなる。それどころか、初対面の相手でも息の合うような連携で戦闘が有利に進められるだろう。
「
「やれやれ。できれば、面倒ごとは、これで最後にしたいところだね」
自信に満ちた足取りで、アタルとレイラは幻獣めがけて、建物から飛び出した。
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