第9話 盤聖戦・名人戦

年に1度行われる由緒正しきタイトル戦。それが盤聖戦であり、名人戦だ。主催はもちろん日本バックギャモン協会。全国各地区の予選を勝ち抜いた16名が2日間にわたってトーナメントを行う。賞金の話は省略しよう。私は貰ったことが無いからだ。

 基本的な誤解があるといけないので書いておくが、バックギャモンは運のゲームではない。基本的に実力(技術)のゲームだ。ただ少しだけ運が左右する。囲碁や将棋を100%実力のゲームという人もいるが、どうだろう。指運(ゆびうん)という言葉がある通り、運が影響するのである。

 さて、白熱したゲームの模様を伝えたいのだが、どう考えても私は適任ではないし、取材もしていない。しかし、私は名人戦、盤聖戦の大阪代表経験がある。自分の戦ったゲームは流石に記憶にある。そのことを少し書こう。

 トーナメント戦は1回が赤坂、もう1回は後楽園だった。私は東京に20年住んでいたが、東京でバックギャモンをするのは初めてだった。緊張して普段のムーブが出来ない。赤坂での1回戦、華々しいレースになり、有利なのでキューブを出したらテイクされた。かなり驚いた。しかし、そこから四鹿氏は6ゾロを連発した。萎えた。負けた。

 そんなことよりも、同じ会場で武宮先生と、北海道大学の山本教授の試合が凄かった。完全なる静寂。禅の道場のようだった。

 2回目の後楽園ではなんと世界の矢澤(旧姓阿部)プロと戦った。完敗だった。終わってからレクチャーを受けた。その話を景山プロにすると半ば呆れ、かなり怒っていた。それでも大阪代表か。という訳だ。

 もう、10年以上になる。当時とはメンバーも雰囲気もシステムも変わっているようだ。

 ああ、私もお金と時間があれば、バックギャモンの世界に戻りたいのかもしれない。

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