第27話 下着ドロ発覚?

 奥に進むとすぐに、エレベーターなるものがあった。チェルシーに案内され、俺、リーゼ、ルキナも一緒に乗り込む。


 異世界でもこの辺は一緒なのだろうか。そういや中も特に明るいし、上を見れば光を発する電灯みたいなのがある。やっぱりこっちにも電気があるのか。異世界という想像上だった世界に触れたせいか、はたまた本物のメイドさんに出会えたせいか、気持ちはいまだに舞い上がっている。いっそのこと尋ねてみようかなと思う。けど、余計なことを口走って転生者だとバレてしまうのは避けたい。どうしようかな。


 そんなことをふと考えてしまったわけだが、隣にいるルキナを見て思う。……あぁ。そういえばそういう魔法があるよな。





 エレベーターは、一気に八階にまで登るようだが、その間チェルシーに色々と質問された。





「ラルク様は何処から来られたんですか?」


「えぇっと、……確か北のほうの遠い国……だったかな」





 分からん。アドゥルス先生が適当なことを言ってたせいで俺には全く分からないぞ。確か北って言ってたような気がする。





「何て所ですか?」


「あの、ほら、前に戦争をやってたとこだよ」





必死にアドゥルス先生が言っていた内容を思い出すけど、戦争というワードしか出て来なかった。





「ああ、ノルタジアですね」


「そう、それ。いやぁ最近物忘れが激しくてまいった、まいった」





 チェルシーに教えてもらう形になって良かった。こんなんで転生者とバレたらやってられん。





「そんなところから。ということはラルク様は戦争に巻き込まれてしまったのですね」


「うんまぁ。いやでも、アドゥルス……先生に助けてもらったから大丈夫だったよ」





チェルシーがウルウルと涙目になりながら同情してきたので、慌てて問題ないと付け足す。実際戦争なんか経験してないから分かんないよ俺。





「良かったですねラルク様。でもアドゥルス先生に認められて、その上、リーゼちゃんやルキナちゃんと同じチームになるなんて凄い魔法を使うんですね」


「ぅ、うん……まぁね」





もうそこまで伝わってたのか。背後に刺さるリーゼの視線が痛い。話題は反らせていたものの、俺がどんな魔法を使うのか。という疑念を思い出させてしまったのは明白である。





「いったいどんな魔法を使うのですか?」


「……」





安心したのもつかの間、チェルシーからまずい質問をされてしまった。チェルシーはワクワクした様子で尋ねてくる。使えるもんなら俺が知りたいよ。





「いやそれは……」


「そうね。私も知りたいとこだけど」





 背中に感じていた視線がより一層に強くなる。気のせいか一瞬寒気がした。





「お、俺の魔法は……」


「魔法は?」


「ひ、火の魔法を使うんだ」


「へぇ、じゃあリーゼと一緒なんだ」





 ルキナが尋ねる。俺はそうなんだとだけ返す。もちろん大嘘だ。モーリス学長に見せた七色花火とかいう魔法。俺が使えるということになっているはずの魔法だ。嘘を嘘で塗り固めるなら、出来るだけちぐはぐさは抑えておきたい。





「私と……」


「そ、そうなんだ。だからその、リーゼの魔法があまりに凄すぎて、俺は自分の魔法を見せる気にならなかったんだ。リーゼに比べたらしょぼくてさ」





 取って付けたような言い分だが、意外にそれっぽく弁明出来たのではないだろうか。喋りながら手応えを感じる俺だけど、リーゼはむぅと油断ならない風だ。そして何故ルキナは笑みを浮かべているのだろう。嫌な予感しかしないぞ。





「だったら最初からそう言えばいいのに」





 とルキナ。意地みたいなもんだと笑って誤魔化しておいた。一応ルキナは疑ってないみたいだし大丈夫そうだ。チェルシーも、むしろキラキラと目を輝かせていた。





「それでもアドルゥス先生に見込まれたのだから凄いと思いますよ」


「あ、ありがとう」


「ねぇ、その魔法……」





リーゼが何か言いかけた時、チェルシーが着きましたよと教えてくれる。どうやら話しているうちに部屋にたどり着いたらしい。茶色い扉が廊下の横を並んでいたが、立ち止まったには806と書かれている。





「ってか私の隣なんだ」


「え?」





 ルキナの一言に俺は驚く。隣はルキナの部屋なんだ。マジか。不安に思うのは、これだけ近いとパシリとかにされないかなってことだけど、大丈夫かな。そもそもここって、男女分かれてるわけじゃないんだな。





「私の隣でもあるわね」


「ぅえ?」





 再度びっくりする。俺の部屋から右隣がルキナの部屋で、左隣がリーゼなのか。だ、大丈夫か。リーゼは今も何か疑ってるっぽいんだけど。





「何? 何か文句あるわけ?」


「い、いや問題なんかないよ」





 俺の裏返った反応に不服だったらしく、リーゼは腕組みをして睨んできた。普通に怖いよ。





「すいません部屋が余ってなかったので。それに、同じチームなら近いほうが便利ですよ」


「そうだよねぇ。シャンプーとか借りやすいし便利だよね」


「あれはあんたが勝手にパクったんでしょ」





 チェルシーをフォローするようにルキナが付け加える。けど余計リーゼの反感を買ったようだ。もうこの二人、本当は仲良いんじゃないの? むしろそうであってくれ。





「まぁまぁ」





 もう既に毎度の言い合いが始まってしまったので、チェルシーが間に入る。





「だいたいちゃんと鍵締めてるのに、どうやって入ってんのよ」


「それは……」





 リーゼの質問に、ルキナはチェルシーを見た。





「ま、まさか……」


「あ、え、ち、違うよ。リーゼちゃん落ち着いて。別にスイーツで釣られたわけじゃ……」





 おいおい、自分で全部喋ってるぞ。





「そうなんだ。チェルシーが……」





 この流れはやばいって。リーゼが怒りに震えてる。





「でもリーゼって大胆だよね。あんなエロいパンツ持ってるなんて知らなかったなぁ」


「なっ……、あ……」





 そして面白おかしく油に火を注ぐルキナ譲。にひひじゃないよ。笑ってる場合じゃないよ。羞恥で顔真っ赤にしたかと思いきや、すぐに怒りで炎を溢れさせるリーゼ譲。





「る、ルキナああぁぁぁぁ!?」


「ぎゃあああぁぁぁ!?」

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