異能者の出現
午後になると宗藤さんの車に乗って向かった先は紅い家のビルだった。
「ここは会議室ですか?」
広い部屋につれてこられた。机と椅子がただ鎮座しいてるだけの部屋だ。
「あぁ。今日は特別授業だ。異能について、そして異能の組織についてなど君に習ってもらう」
確かに、学校の授業じゃやらないしね。
「分りました」
「っと待ちくたびれたよ」
部屋に入ってきたのは前に先輩達を治した綺麗な女性だった。
「私は梅原。梅姉って呼んでくれ」
「姉……」
宗藤さんは苦虫を噛み潰したような顔して呟く。
「なんだい?アンタは早く出てきな。上に用があるんだろ?」
梅姉さんは宗藤先生に向かって手で追い払うように振った。
「じゃ、ナツキ君頑張ってくれ」
そのまま宗藤さんは出て行っていしまった。
前とずいぶん女性の雰囲気が違う。
「何か言いたげだね。あれかい?前の印象と大きく違うって?」
「は、はい」
「これがあたしの本性さ。いつものは営業用というか外様に向けてのだね。あん時はあんたもまだ仲間ではなかったしね。これからは仲間だ容赦はしないよ」
なんだか怖い。
「よろしくお願いします」
「そうさね。さっそく始めるよ。一般的には異能は三つの分類に分けられる。それは知ってるかい?」
「はい」
「まずは、自身の体に何らかの影響を発動させるタイプ。これはナツキお前さんも当てはまる。実際このタイプの犯罪者が一番多い。というか、一番分りやすく捕まえやすいっていうのがあるね」
「暴行事件ばっかりですもんね」
異能によって強化された肉体で相手に暴行を加える。そんなニュースばっかりだ。
「でも、人のためにと異能を役立てるのが多いのもこのタイプだ。異能なんていっちまえばよく切れて頑丈な包丁のようなものだ」
異能は使い方次第それだけで異能自体が悪いわけではない。
「次は自然現象などに影響を及ぼす異能。これはナツキが知ってるのでいうと宗藤と刹那だね。宗藤のは難しい言葉でいうなら、ベクトルの変換。刹那のは影という本来実体のないモノに実体を持たせてる。他には、何もないところで炎を出したり、音波を自由に扱えたりとかね」
ここまでわかる。でも、最後の一つがさっぱりだった。ネットにも総じて最後はそれ以外の異能としか書いてない。
「で、おそらくそういうのと関わりのなかったナツキは三つ目のはお決まり文句しか知らないんじゃないかい?」
「はい。それ以外としか」
「これはまず、相手が異能を使ってるかどうかを見極ることが難しい。既に死んでる異能者のことになるけど例えば、二者択一の力とかね」
「二者択一?」
よくわからない。
「あんたは左右に別れた道の前にいる。どちらかが正解の道で片方は行き止まり。そん時に普通なら確率でいうと半々。これはわかるね」
「はい。でも、とっさに人は左選択しやすいんですよね?」
「そうさね。昔の研究結果であるねそういうの。でも、この異能者は二者択一の状況下のみ確実に正解の方、自分にとって都合のいい方を選択できる。そんなふざけた異能さ」
「それって異能っていうんですか?」
異能ってどうして分ったのだろう。ただ運がいいだけで済まして気づくのは難しいと思う。
「私も見たけどね、昔の話しだけどそいつは一人で違法カジノを潰した、一晩でだ」
「違法カジノですか?」
「カジノのゲームにトランプでアップかダウンかを選ぶゲームがあった。アップとダウン二者択一だろ?」
「そっか。カジノで無双したんですね」
「そう。カジノの蓄えてる金全部巻き上げたのさ」
「へー何かすごいですね。でも自分でもなかなか気づきにくいですよね。そんな異能だと」
「まぁね。あとは人の考えてること読んだりとかね。ナツキが気をつけなくちゃいけなのはお前さんと同じ異能タイプだ」
「僕宗藤さんと出会うまで自分以外の異能者と会ったことがありませんでした」
「だろうね。そもそも、身体強化の異能は基本的に本人の意図と関係なしに相手を傷つける恐れがある。それに異能者の六、七割が子供の時に異能が目覚めてる。確認されたら普通は政府だ自治体が監視する。けれど、あんたみたいな人畜無害な異能は基本放置が多いからね。子供のうちは生活環境が重なる範囲で異能者と遭遇は珍しいと思うよ」
「監視って検査のことですか?」
昔はよく数ヶ月に一度指定された病院に行っていた。
「それ以外もだよ。異能を制御するための訓練などもやってる。そして、基本今は異能者として届出があったら戸籍に登録して一生情報が把握できるようにしてるのさ」
「そこまでは知らなかったです」
「そりゃそうさ。一般人が戸籍を見ても異能については載ってないからね。権限のある役人しか知らないさ」
「僕のにも載ってるってことですよね?」
「だろうね。人畜無害だろうが異能は異能だからね」
「僕みたいに人畜無害の異能者っているんですか?」
「もちろん。ごまんといるさ。それに、果たしてそれは本当に異能者に分類していいのか?というのもいるさ。私が実際に知ってるのだと歯が一生生えてくる、自身の血液はB型だが、輸血すると相手の血液型に変化するとかね」
「歯が一生生えてくるってネズミみたいですね」
「ふ、あんたのと同じで自分で制御できない。爪と同じさ。でもそれは異能じゃなくて突発性の遺伝子障害に分類してもいいんだけどね」
「確かにそうですね」
人間は昔から人間ではなく哺乳類が進化して人間になった。ごく稀だがその名残を持って生まれてくる人間もいるそうだ。
「で、お次は異能者の出現と歴史だ」
これは僕も知らない。授業にだって一切出てこない。調べても正確なことが記録がなく噂ばかりだった。
「想像の通り正確に異能者第一号は誰も知らない。それに何を異能者とするかにもよる。けれど一般人の想像する異能者が現れ始めたのは大戦前だ」
「大戦前なんですか?」
百年年以上前の話だ。
世界中で戦争が起こった。その時各国は電子兵器、無人ロボや無人戦闘機を使って戦争したそうだ。
「戦争については学生さんの本分だろう?そこは説明はしないよ。で、戦時中は精神状態も、命の危険だってあった。そこで異能者がぞろぞろと生まれてきた。で、戦争維持どころではなかった。本人だってそれこそ当時は知識がないんだ。いきなり、自分の体が変化したら驚くだろう。すぐに戦争が終わった」
「そうなんですか。てっきり戦時中かと思ってました」
「あぁ。だけどね、この国含め人の上に立ち、自分が賢いって思い込んでいる連中っていうのは愚かで異能者を新しい兵器として利用しようとした。これがあんたの知ってる異能者の暴動に繋がった」
「初耳です」
今まで異能に目覚めた一部の異能者が犯罪行為に走りとしか聞いたことなかった。
「それは世界的な情報操作さ。仮にも人間を兵器扱いして失敗しましたは言い訳のしようがないからね。戦争直後は電子機器の麻痺状態だったから情報操作もやりやすかったろうね」
「でもそれが真実だったら兵器にされそうになった異能者が暴動起こしたってしかたないと思います」
「それお前さんだから言えるのさ。確かに仕方ないかもしれないが、その異能者たちの中でも過激なあほは無関係な人間すら標的にした。それはおかしいだろ?」
「……」
確かにそうだ。関係者ならともかく、無関係な人にはとばっちり以外何んでもない。
「それがいい口実さ。一般人と異能者の溝がさらに深くなった」
「お前さんには何でもない、異能だ関係ないナツキ個人を見てくれる人間がいるんだろ?」
茜だ。それに両親だってそうだ。
「はい」
「大事にしな。失ってからじゃないと大切さが、かけがえのない物に気づかないけどね。あんたは絶対後悔する」
「大丈夫です。たまにケンカもしますけど。それでもこうしてやってきました」
「若さとは勇気で、暴力なんだね」
「え?」
声が小さくて聞こえなかった。
「なんでもないよ。これにて授業は終わりだ。宗藤が終わるまで自由にしてな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます