「あんたたちみたいな子は、もう本当にどうしょうもないね。せっかくこっちが、どうにかして救ってやろうとしても、こうやって問題ばかり起こす。ああ、おまえはあの愚かな妹エミリーと同じだよ! 虚栄と欲の塊。男と見ると色気をふりまいて、罰を受けるんだ。おまえたちは救いのない淫乱だよ! 馬鹿な淫乱は皆天罰を受けるんだよ!」

「……彩花もですか?」

 自分でも思いもよらないことを言ってしまっていた。

 学院長の両目から青い火花が散る。

「何を言っているんだい、この淫売は?」

「あ、彩花も、天罰を受けたから、死んだんですか?」

 ふん。学院長は鼻をそらす。

「ああ、あの愚かな娘だね。あれこれたてついてきた馬鹿な娘だよ。赤ん坊を返せとかわめいて。赤ん坊が死んだのはあの娘の罪の報いだよ」

「そうなるようにしたんじゃない? 食事に毒を盛ったんでしょう?」

 恐怖も過ぎると頭がどこか鈍感になってしまっているのかもしれない。美波の言葉に学院長はのけぞって笑った。

「ホホホホホ! 愚かなこと言うんじゃないよ! 私は毒を盛ったりなぞしないよ! 他の者が口にしてもなんの問題ないものなのに、それでおかしくなるのは、それこそそいつが神から見放された証拠なのさ。エミリーのようにね!」

「……」

「どうもおまえは余計なことを知り過ぎているようだね。馬鹿な娘だよ。これで、おまえはもうここから生きて出られなくなったね」

 学院長はどう見ても正気ではない。美波は恐怖に身体が硬直するのをどうにもできない。

「こうなったら病院で一生飼い殺しにするか……。晃子は素直になったから出ることができただが、あんたはあそこで終わるね」

「お、親が黙っていないわ」

「ふん。あんたの母親なんぞいくらでもまるめこめるさ。父親は新しい女に夢中のようだしね。病院が嫌なら、世をはかなんで……というのもあり得るね、あんたの過去の罪を考えたら、自殺したとしても親もそれほど不思議には思わないだろうよ。だけれど、まずはその小生意気な顔に」 

 忌々しげに学院長が鞭を振り上げた瞬間、美波は目を閉じた。


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