第6話006★恵里花が聞きはぐった、神官による聖女候補についてのお話し1

 恵里花が神殿の窓の外に出現した魔物?と、倒れた人達を救助する方法を、騎士様わんこに、相談している頃。


 恵里花を除いた、6人の聖女候補は、半分パニック状態で、聖女の資格についての説明している神官に叫ぶような勢いで質問する。


 「その聖女の資格って、何なの?

  えぇーと…説明を担当している

  神官様?


  貴方のお名前をうかがっても

  よろしいかしら?」


 ストレートのセミロングを神経質にかき上げながら、1人目の聖女候補・神崎牡丹かんざき ぼたんは、強い口調で質問した。

 が、それはもっともな疑問なので、淡々と神官は頷いて、自己紹介する。


 「ああそうですね

  これは失礼いたしました


  私は、見たとおり神官です

  名前は、ワルターと申します」


 なんともあっさりというか端的な説明である。

 それでも、疑問系に気付き、自分が神官であるときちんと告げたことを考えると、本人なりに気遣いしているつもりなのだろう。

 そう、彼、ワルター神官は、残念さんなのだ。


 そんなコトを気にするワルターではないので、自己紹介はしたと、また、淡々とした口調で、聖女の資格について説明し始める。


 「聖女候補の皆様は

  試練の森にて


  神獣、聖獣、幻獣の内のどれかと


  感合かんごうしなければ

  聖女失格となります」


 突然、異世界召喚された少女達の気持ちなど一切考えていないというような、端正なワルターの顔には表情が無く、その声は冷たく響き、その答えも端的な説明のみというモノだった。


 すると、2人目の聖女候補・椎名撫子しいな なでしこは、むっとした顔でポニーテールを揺らしながら、酷い言葉使いをしないようにと、手のひらを何度開いたり握ったりした後に、ワルター神官に問掛ける。


 「とりあえず、聞きたいのは


  聖女の資格を

  手に出来ないって人は


  過去に居たのかどうか?


  ってコトと


  もし、いたのなら

  その彼女はどうなったか?


  ってコトなんだけど………」


 その質問にも、説明するワルター神官は眉ひとつ動かさずに、淡々と答える。


 「聖女の資格を手に

  出来なかった方は

  過去に数名います」


 ワルターの発言に、聖女候補達は、顔を見合わせながら叫ぶように言う。


 「「「「「「うわぁ~……

  やっぱりー」」」」」」


 ほんの少しの間だが、聖女候補の美少女達は、暗い表情で黙ってしまう。

 が、落ち込んでいても何も始まらないと、3人目の聖女候補・相沢百合あいざわ ゆりが、目立つツインテールを揺らしながら、恐る恐るという表情で質問する。


 「あのぉ~………その人達は……

  どうなったんですの?」


 異世界から召喚されて、ドラゴニア帝国の国民では無い、勿論、何の情報も常識も身分も持っていない弱い立場の聖女候補達に、ワルターはあっさりと酷い事実という名の情報を口にする。


 「この王城内にある

  貴族専門の娼館に

  入っていただきました」


 いや、そうなる理由があったのだが、ワルターは聞かれないことは答えない男なので、事実のみを告げたのだ。


 「…………」


 聖女候補達の予想の斜め上を遥かに突き抜けたワルターの発言に、返す言葉を失って黙ってしまう。

 そして、お互いに視線を交わした後に、目に涙を浮かべて悲鳴を上げる。


 「「「「「「うっそぉー…マジで…

  ひっどぉぉいぃぃ……」」」」」」


 この先に待ち受ける、最大の恐怖に叫ぶ美少女達。

 その姿に、説明しているワルター神官は静かに微笑すると、改めて美少女達に声を掛ける。

 今更、優しい声で説明しても遅いワルター神官は、完全なコミュ不足男だった。


 その、ワルターのコミュスキルをほぼゼロにした原因は、ルーセア大公の嫡男で、第5皇女サンディーヌ・セアラと婚約している為だったから…………。

 現皇帝の甥で、娘婿という立場だったので、聖女候補には何の興味も無かったから…………。


 それ故に聖女候補に怨まれる可能性が、多大な説明役をヘロッと引き受けてしまえるのだった。


 聖女が怨んで何か仕返しをしたくても、簡単に手が出せないいや秩序の為に手を出すことが出来ない相手だったりする。


 ワルターの立場や、性格などを知らない聖女候補達が、いやぁぁ~んな雰囲気を醸し出すと、控えている他の神官や騎士達が、あぁ~あという表情をする。

 だからと言って、誰も注意はしない。


 だって、そういう身分なのだから………。

 そう、彼・ワルターに注意できるのは、彼の両親と第1皇子だけだったりするので、その性格は直らない。

 そして、ここには、第1皇子も、彼の両親もいない。

 閑話休題。






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