起承転結

ある1軒の家に中年の男が暮らしていた。

今日の朝は新聞を読みながら

コーヒーを飲む。

なんて朝らしい朝なのだろう。

これが起だな。

するとインターホンが鳴った。

これが承なのだろうかなどと

思いながら男は扉を開けた。


「宗教に興味はありませんか?」


若い女性で聖書を持っている。

またセールスまがいのことをしてくる。

しかたないこれを承にするか。

だが宗教に興味はない。


「いいえ。結構です。」


扉を閉めた。

一体作者は何を考えているのだろうか。

男は残っているコーヒーを飲み、

今日の承転結を探しに出かけた。

普段の街路樹。その他全て変わりはない。

いつもの生活と言ってしまえる。

男は街を歩いている若い女性に尋ねてみた。


「あなたは私の転かね?」


不思議そうな目で見られた。

そしてどこかへ行ってしまった。

次に男は街を歩いている青年に尋ねてみた。


「あなたは私の転かね?」


不思議そうな目で見られた。

青年は面白そうな顔で


「なにかお困りのようだ。

何があったんです?」


「この話の作者は頭が狂ったらしい。

俺という主人公に起承すらよこさない。」


「なるほど。この世界、

あなたの存在、私ですら

ストーリーの1部なのですね。」


「そうだ。

無理矢理だが起と承を作ってきた。

転を今探しているんだが。

やはり今日もダメらしい。」


「私の人生はある作者の

書いたストーリーですか。

私もそのような気がしてきました。

こんなのはどうです?

我々が転を作るのです。」


「なるほどな。その時○○が起こった。

の○○を自分達で作るのか。面白そうだ。」


その後、彼らは

無差別大量強盗殺人という事件を起こした。

裁判で「お話の中だから何をやっても良いと思った。」

という不可解な発言をした2人は奇人として

マスコミに大きく取り上げられた。

結は裁判長に決められたらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る