ある天使きょうだいの話~誕生前編~

柴田 叶

第1話~姿が見えないお兄ちゃんからの 初めてのお願いごと~


あるところに自分が

産まれる前にお空に帰った

お兄ちゃんを忘れられない

女性がいました。


その人の名前は「叶」かなみと言い


叶さんには、お姉ちゃんがいて

お姉ちゃんの名前を「夢」ゆめ


お兄ちゃんの名前は「想」そう

と言う名前です。


想くんは夢ちゃん赤ちゃんの時に

お空に帰ってしまいました。


もちろん叶さんは

産まれる前なので

一度も会ったことさえありません。


それなのに

大人になってずいぶん月日が流れて

いるのに


いつまで経っても

お兄ちゃんが一緒に育ってない

違和感を

日々ただただ感じていて


いまだに外出すると、

いるはずがないと

どこかでわかっているのに

無意識に

お兄ちゃんを探したり


年の離れた幼い兄妹を

見かけたり

お兄ちゃんがお空に帰った年くらいの

男の子親子が電車など

近くの席に座るだけで


なぜか自然と涙が溢れては

なかなか止まらない

日々を過ごしてました。


どうして自分が長年

一度も会ったことのない

お兄ちゃんを探していたり

自然と涙が溢れることを

自分でも上手く説明することが

できませんでした。


本人は忘れようとか

前に進もうと思ったけれど


お兄ちゃんと一緒に育っているはずの

人生を、なぜかわからないけど

いまだに諦めることができなかったのです。


そんな日々をただ淡々と過ごしていた

とある晴れた日


それは

電車を待っている時

突然

叶さんを呼ぶ声が

聞こえてきました。


急いで後ろを振り返りますが

そこには

誰もいません。


気のせいかと思っていたら

また


『叶ちゃん

久しぶりだね!

僕、叶ちゃんのお兄ちゃんだよ!』


「えっ?お兄ちゃん?

お兄ちゃんって

もしかして想くんなの!?


本当に、想くん?

久しぶりって何?

まったく


叶はずっとずっと想くんの事を

探してたんだからね!」


『知ってたよ。でも


叶ちゃんは

久しぶりの意味はわからないんだね!』


ふふふっ

口を押さえて笑う想くん


『あっ!でも

ごめんね!叶ちゃん

僕も叶ちゃんとお姉ちゃんの夢ちゃんと

一緒にふたりのお兄ちゃんとして

生きたかったんだよ。


ずっと2人と同じ気持ちだったんだよ。

それを伝えたかったの。』


話しているうちに自分と姉の名前を知っているこの声に


本当に

お兄ちゃんなのかも

と、信じ始める叶さん


「そうかぁ、

想くんも私とお姉ちゃんと

同じ気持ちだったんだね!

それを聞けただけでも

なんだかとっても安心したよ。」


『わかってくれて、良かったよ。

僕もずっとずっと伝えたかったんだ。


あとね!叶ちゃん、

もうね、いくら僕を

探したって見つからないんだよ!


どうしてだかわかる?


想はね。


外の視える世界にはいないの


叶ちゃんの近くにいつもいるんだよ。


まぁ、たまにお空に帰ることもあるけど


だからもう探さなくていいからね。


それを忘れないでね!

もう探さなくていいの

夢ちゃんにも伝えておいてね!


それにね!実は

こうやって叶ちゃんが

僕の声を受け取れるように

なったのは意味があるんだよ。


僕のお願い聞いてくれるかな?


「いったい何?」


僕達、きょうだいの話を

叶ちゃん

みんなに届けてくれないかな?


この世の中にはね!

理由があって

離ればなれになったきょうだいが

たっくさんいると思うの


天使になってお空に帰った子供の

天使きょうだい



その天使になった子供と

一緒に育ってたのに

突然きょうだいを亡くしてしまった

天使きょうだい


その後に産まれた

天使きょうだい


いろんな天使きょうだいの

立場の想いがあると

思うの


夢ちゃんも叶ちゃんもママとパパに

話せず我慢したり辛い思いがあったでしょ

それを伝えてほしいの。


僕も夢ちゃんと叶ちゃんと

一緒に大人になりたかったこと


いつも空から見守っていることも


ずっと辛かったでしょ。

ずっとパパとママに

笑ってほしかったんでしょ

それを伝える日が来たんだよ。


それが叶ちゃんとして

産まれてきた役割なの。』


「そんなこと簡単にはできないよ。

一緒に育ってきた、きょうだいの方が

すごく辛い思いをしていると思うし。

私はそもそもお兄ちゃんに

会ったことさえないんだよ。


叶さんは断ろうとします。


『でも、叶ちゃんはずっとずっと

長い間

想をお兄ちゃんを探してくれてたじゃない?


それに

辛いに大きいも小さいもあるのかな?

悲しいに大きいも小さいもあるのかな?


叶ちゃんだから書けることがあるんだよ。

叶ちゃんじゃないと

書けないことがあるんだよ。


もう一度よく考えてみて!

僕は、もう書けないんだよ。

お願い!』


しばらく考えて叶さんは


「わかったよ。

今までお母さんから聞いたことや

自分の気持ちなら

書けるかもしれない。

本当は怖いけど、それでもいいなら。」


『うん。3人の天使きょうだいの

立場を伝えてね!

約束だからね!叶ちゃん


そして僕のお願い聞いてくれたら

良いこと教えてあげるよ~』


「えっ?何!教えて!」


『それは叶ちゃんがみんなに僕達

天使きょうだいの話をしてくれたら

教えてあげるからね~」


「もう!すっごい気になるんだけど」


『もしかしたら

叶ちゃんは覚えてなかったりして?』


お兄ちゃんは1人で口を隠しながら

ケラケラと笑い


お空へ帰って行きました。


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