第4話 結婚をきめる時!

母が部屋を出ていくとすぐに吉川さんが話しかけてきた。結構せっかちな性格かもしれない。


「どうして僕ともう一度会いたいと思ったのですか? 断らなかったのですか?」


「はっきりとこれだからと言うことはできません。自分でもどうしてか良く分からないんです。だからもう一度お会いしてそれを確かめようと思って」


「漠然と? 迷っている?」


「何故かしら、吉川さんには安心感があるんです。あなたとなら安心して生活できるみたいな」


「安心感といいますが、どんなところですか?」


「漠然とですが、私の気持ちを大切にしてくれて、平穏に幸せに暮らしていけそうな気がするんです」


「そういわれるとあなたの気持ちを大切にしなくてはいけない気になってくるから不思議ですね」


「それと父があなたを勧めるんです」


「お父さんは僕のどこを気に入ってくれているんですか?」


「はっきりとは言わないんですが、自分と同じ匂いがするから安心して私を任せられると言っていました」


「お父さんと同じ匂いって?」


「分かりません。父はあなたに何か感じるところがあったのでしょう。でも確かにあなたには父と似ているところがあるような気がします。感じだけですが」


「それが安心感につながっている?」


「分かりません。そうかもしれません。父と母は見合い結婚なんです。母は7歳年下です。でもとても仲がいいんです。父は母に頼りにされています」


「僕たちと同じ年の差ですね」


「だから、見合い結婚もいいかなと思って」


「お父さんとは仲が良いの?」


「父は私を小さい時からとても可愛がってくれました。いつも父に守られていると言う安心感がありました。今でも父が好きです」


「ファザコンかな?」


「どういうのをファザコンというのか分かりませんが、母よりも父を頼りにしています」


「お父さんに気に入られたとは意外だ。可愛い娘を奪っていく男なのに」


「あなたはどうして私と交際しても良いと思ったのですか? どこを気に入っていただけたのですか?」


「男は単純だ。君は美人だし、頭も良い。僕は素敵な美人に憧れていました。でも、なかなか自分では声をかけたりはできません。新幹線で席が隣だったけど、すごい美人でいい感じの人だな、こんな人が今日の相手だといいなと思って横目でみていました。ラウンジで会ってまさかと驚きました。こんなチャンスは二度とないと思いました。例の理論分析からもそう思いました」


「見かけだけでその気になったのですか?」


「人は見た目が9割というのを聞いたことがあります。ほかのことも感じているのかもしれませんが、言葉にして言うことができないだけだと思います」


「私がこんな容姿でなかったらその気にならなかったのですか?」


「仮定の話には答えられないけど、美人と言っても好みがあります。君は僕の好みの美人だ。いや好みだから美人なのかもしれないけど」


「容姿と学歴だけですか?」


「言葉にして言うことができないことがあると言ったけど、話していて、どうしてか君を守ってやりたい衝動に駆られた。君には寂しそうな何かを感じる。僕を含めて男って、そういうのには弱いんだ」


「何かってなんですか?」


「分からないけど、今までに会った女性にはなかったように思う」


「そういうものがあってもいいんですか? ない方がいいんじゃないですか?」


「そういう風にでも思わないと僕にとって君は眩しすぎる」


「気おくれするんですか?」


「そんな感じかな、そうでも思わないとね」


「それでいいんですか?」


「よいと思うから、付き合ってみたいと思った」


「父の言っていることが分かったような気がします」

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