第37話 悩んで倒れた夏帆
夏帆が明日、六月二十三日に15歳から16歳になる。
ちょうど夏帆と知り合って三年ぐらいになる計算だ。
俺はそんな夏帆を見守って.....二年間。
三年目に切り替わるもう直ぐの今が一番幸せに感じる。
夏帆は.....まだまだ戦っている様だが.....。
さて、それは良いとして.....誕生日をどう祝うか。
俺は今、頭を駆使しながら考えている。
フル稼働と言えるかも知れない。
因みに夏帆にはもう誕生日の事はだいぶ情報が漏れている。
俺はその事も配慮しながら考えていた。
夏帆が.....最も喜ぶ物。
一応、俺は.....花束を贈る予定だ。
それが心に残れば良いのだが。
と思いながら居ると日付は二十二日になった。
その間、夏帆に色々隠すのが大変だったけど.....何とか、たっちゃん、と、祐太朗、のプレゼントを渡す事などを隠せて良かった。
そして.....誕生日の前日。
母さんと智久さんと家族で食事をしていると.....魚を解体している夏帆を智久さんが見て優しげに言葉を発した。
「夏帆。お前、変わったな」
「.....?.....何処が?」
「.....色々と、だよ。何故かって言われたらお前の全体が変わったな」
智久さんは嬉しそうな感じで笑みを浮かべる。
俺はそれを見てから.....良かったな、と夏帆を見た。
母さんも夏帆を見ている。
夏帆は俯きながら顎に手を添えて考える。
「.....そうなのかな。私は特に変わって無いよ。パパ」
「.....それはお前が思っているだけだ。変わったよ。お前は。.....お前の母親.....の事が有りながらも乗り越えつつある。前はギスギスしていたから.....」
智久さんは視線を外に向ける。
その様子に夏帆は.....お茶碗を置いた。
そして.....顎に手を添える。
それから智久さんを真っ直ぐに見つめる。
「.....でもまだ悩みが有る。私がどう生きたら良いのか.....って」
「.....」
「.....だけど三島さんに出会って.....皆に出会って.....私は生きる目標が出来たと思う。それで.....将来の夢が出来たんだ」
「「「.....え?」」」
俺達は?を浮かべる。
そして胸に手を当てて夏帆は意を決した様にして.....俺を見た。
それから.....言葉を発する。
「.....私は臨床心理士になる」
「.....!?」
「.....それって.....」
「.....人の心を知りたいんだ。私は。だから.....決めたの。そんな感じで」
人の心はまだ分からない。
だけど知りたいの私は.....人の心を.....!と夏帆は言った。
こんなに成長していたんだな.....と俺は思う。
智久さんは笑顔で言った。
「.....夏帆。本当に変わったね」
「.....夏帆ちゃん.....」
智久さんも母さんも嬉しそうだった。
夏帆は笑みを浮かべて俺を見る。
俺は.....その姿を見てから.....頑張れ、と一言、言った。
頑張るよ、私、と夏帆は話す。
「おっと、そう言えば明日、誕生日だったから。夏帆」
そして.....智久さんは何かを取り出す。
それから.....夏帆にそれを渡した。
その誕生日プレゼントとは.....オルゴールだ。
開けてから驚く、夏帆。
「.....そのオルゴールは俺達の家族写真が出てくる仕組みになっているんだ。どういう事かって言うと.....そのオルゴールを鳴らしたら出てくるっていうアンティークなんだ」
「.....パパ.....有難う」
「.....誕生日おめでとう。早く喜ぶ顔が見たくて渡してしまった。御免な」
「.....いいや。とても嬉しい。有難うパパ」
ニコニコしながらオルゴールを見て鳴らす、夏帆。
それを見ながら.....俺は思いを馳せる。
本当に色々有ったけど.....良かったと.....思いながら。
明日は.....盛大に祝ってやろう。
思いながら.....明日を待った。
☆
「お兄ちゃん」
ノックがした。
それから入って来た夏帆を見る。
どうしたのだと思いながら。
パジャマ姿の夏帆は.....俺を見てくる。
「.....どうした?夏帆?」
「.....ちょっと頭が痛い」
「.....頭が痛い?」
確かに夏帆の顔が.....赤い。
どういう事だ?さっきは気が付かなかったけど.....?
夏帆の熱を測る為に夏帆の額に手を添えた。
無茶苦茶に熱い。
俺は驚愕して見開いて夏帆を見る。
嘘だろオイ!
「お前.....!なんで今の今まで言わなかった!?」
「.....さっきから熱かったから.....その言いそびれた.....御免なさい.....」
だんだん声に力が無くなっていく。
明日.....夏帆の誕生日なのに.....!
こんな事になるとは.....!
思いながら.....俺は慌てて母さんと智久さんを呼びに行く。
そして夏帆は.....そのまま病院に連れて行かれた。
俺は留守番の為に家に居たのだが母さんにメールで知らされた。
夏帆は.....夏風邪をひいていた様だった。
高熱が出ていた様で三十八度有り.....って何で今なのだ。
夏帆は念の為に入院になってしまった。
俺は歯を食いしばる。
何故今なのだ、と、だ。
☆
総合病院に入院した、夏帆。
俺はこんな感じで花束を渡す羽目になるとは。
と思いながら放課後、総合病院を見上げる。
二日は入院だそうだが.....。
「ずっと色々と悩んで.....考えていたんだね。夏帆ちゃん。だから.....熱が出たんじゃ無いかな」
「.....そうかもな.....」
たっちゃんが言った言葉に俺は賛同した。
祐太朗もウンウンと納得する様に頷く。
俺はそれらを確認してから、行くか、と言う。
それから.....総合病院の中に入った。
大事には至ってないので良かったが.....と思いながら病室に向かう。
そうして夏帆の居る病室に辿り着いた。
ノックをする。
☆
ノックして中に入ると元気そうな夏帆が居た。
俺達を迎えてくれて.....取り敢えずは大丈夫そうだ。
その様子を見ながら俺は夏帆に花束を渡した。
目を丸くする、夏帆。
「.....誕生日プレゼントだ。御免な。こんな場所になっちまって」
「.....ううん。嬉しいよ。お兄ちゃん有難う」
それから、たっちゃん、が包みを取り出す。
その包みは.....丸かった。
俺は?を浮かべつつ、たっちゃん、を見る。
包みを静かに受け取った夏帆は開けた。
「.....スノードーム?」
「そう。スノードーム。夏帆ちゃんにちょうど良いかなって思って」
夏帆は目をパチクリしながらスノードームを見る。
その中にはこの街の景色が見えた。
値段高いだろうにと思いながら見つめる。
夏帆は頭を下げた。
「.....ありがとうございます」
そして最後に祐太朗が動いた。
祐太朗は四角い包みを夏帆に渡す。
見た感じ本に見えるが。
と思いながらプレゼントを開ける夏帆を見つめる。
そして中から出て来た物は。
「.....ライトノベル!?」
某有名なタイトルの.....ライトノベルだった。
それも強烈な美少女が表紙の、だ。
俺は驚愕して.....祐太朗を見る。
祐太朗は.....どうだ、的な感じの顔をしている。
馬鹿なのかアホなのかコイツは?
夏帆は女の子だぞ!?
受けるわけねぇだろ!!!!!
「.....お前.....無いわ」
「無いわー。祐太朗、無いわー」
「え!?駄目か!?」
俺達の言葉に、汗を噴き出した。
あわあわ、しつつ愕然とする祐太朗。
駄目に決まっているだろ.....つーか。
何でよりにもよって美少女のラノベなんだ。
祐太朗.....。
現代の女子のプレゼントにこれはドン引きだろ。
あちゃーと俺とたっちゃんですら頭に手を添える。
と思ったが夏帆は咳をしつつ満更では無い様だった。
笑みを浮かべる。
「.....ありがとうございます。読みます」
「.....え?あ、マジ!?あ、有難う!」
「.....まぁ.....夏帆がいうなら良いけど.....」
額に手を添えて俺は苦笑しつつ盛大に溜息を吐いた。
喜んでいるから良いのか?と思いながら、だ。
誕生日はこんな感じになってしまったが.....まあそれなりに良い感じだとは思う。
俺は病室の窓から外を見つめた。
夏帆の事を心配しながら、だ。
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