第34話 不死鳥

「ここはどこだ? 私は死んだのでは?」

 カエンの体は、悪魔ベリアルの炎で燃え尽きて灰になってしまった。

「あなたは死にました。」

「声?」

「カエン、あなたは死んだのです。悪魔ベリアルの黒い炎によって。」

「あなたは!?」

「私は、フェニックス。」

 不死鳥が擬人化した美しい女が現れる。

「フェニックス!?」

「あなたは精神体として、私と出会ったのです。」

「精神体!?」

「悪魔ベリアルは、私に出会うことはないでしょう。悪魔は死なないので。クスッ。」

「どういうことか分かりません!? 教えてください!?」

「私は再生を司る不死鳥。私と会うためには死ななければいけないからです。」

「そんな!? フェニックスには死んだ時にしか会えないのですか!?」

「はい。そして、死んだからといって、必ず会える訳でもありません。」

「え?」

「私に選ばれた者しか、フェニックス会うことはできないのです。」

「どうしてですか?」

「それは、あなたが生き返る運命にあるからです。」

「私は生き返る!?」

「さあ、私に出会えた幸運な炎の剣騎士よ。我が炎により・・・。」

 フェニックスの女は、カエンを生き返らせようとする。

「ちょっと待って下さい!」

「なんですか?」

「あなたは死んだ人間としか会えないといいましたが、そんなの悲し過ぎませんか?」

 見つめ合うカエンとフェニックス。自分のことを心配してもらえたのが嬉しかったのか、フェニックスは少し嬉しそうな表情をみせた。

「・・・そうかもしれませんね。カエン。あなたが一生懸命に戦いなさい。そして死ぬのです。そうすれば私に再び会うことができるでしょう。」

「はい。」

「そして、私に会うことができれば、あなたは不死鳥フェニックスのように何度でも甦る。」

「分かりました。私は、この炎が燃え尽きるまで、一生懸命に戦います。そして、あなたに会いに来ましょう。」

「死ぬとは、あまり良くないことですが、お待ちしています。」

「あなたに会うために、私は何度でも死にましょう。」

 初めて出会ったカエンとフェニックスだが、同じく炎の属性を司る者同士なのか、心が通じ合ったように感じ合った。

「また会いましょう。カエン。」

「約束します。フェニックス。」

「甦れ! 炎の剣騎士よ! リジェネレイション!」

 フェニックスの必殺技で、死したカエンの魂が現世に再構築されていく。燃え尽きたカエンの体が元通りに戻っていく。

「わ、私は生き返ったのか?」

「さようなら。」

 カエンにはフェニックスの声が聞こえたように感じた。

「これも、あの人の力なのか。クスッ。」

 カエンは少し嬉しそうに笑った。

「いでよ! 炎の剣騎士の鎧!」

 カエンは炎の剣騎士の鎧を身にまとう。

「待っていろ! サラマンダー! 私は、おまえと戦うことが怖くない! 何度、殺されても、死の淵から何度でも甦ってみせる!」

 気合十分のカエンは炎の山の奥に進んでいく。

 つづく。

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