第26話 ちょっと待った!

「姫が戦いを好むとは!? 100年前の世界では考えられん!?」

「これが現代です。」

 伝説の剣騎士と姫の話合いが平行線をたどる。

「まさか!? 100年前は伝説の剣騎士だった私が、100年後の世界では邪悪なる者だというのか!? このような仕打ちが許されてもいいのか!?」

「眠り続けていれば良かったのです。あなたは100年前に永遠の眠りにつくべきでした。そうすれば、いつまでも英雄として語り継がれていたでしょうに。」

「姫!? なぜ、そのように冷たいことをいうのですか!? 私はあなたのために世界を邪悪なる者から救ったのに!?」

「私には話の本質が見えてきましたよ。おそらく100年前、私の先祖は、あなたにストーカーされて、追い払うために結婚の約束をして、邪悪なる者と戦わせて、あなたを殺すつもりだったに違いありません。それなのに、あなたは死なずに永い眠りについてしまった。そして再び、姫である私の幸せを阻んでいるのです。」

「伝説の剣騎士は、姫のストーカーだったのか!?」

「違う!? そんなことはない!? 私と姫は愛し合っていたのだ!? 永遠の愛を誓ったのだ!?」

「そういえば、ご先祖様はシングルマザーだったような?」

「ほれ! みろ! 私が邪悪なる者と戦いに行く前に、姫と愛し合ってできた子供だ!」

「まさか!? 戦地に行く前に姫を襲ったのか!? 何て卑劣な奴だ!?」

「もし、その話が本当であれば、私と伝説の剣騎士は血縁関係。ということで、私と結婚することはできませんね。ふ~っ、安心しました。」

「私は呪われているのか!?」

「あの世に帰りなさい。」

 姫は、現代女性らしく、とても強かった。

「分かりました。」

「おお! 分かってくれたのか!?」

「こんな乱暴な姫とは結婚はしたくない。きっと幸せな家庭は築けない。」

「なんですって!?」

「ただ、姫の血縁の者として、姫と救世主様の結婚は認めない。」

「なんだと!? どうしてだ!?」

「私はかつて伝説の剣騎士と呼ばれた英雄だった。だから姫と結婚する権利があったのだ。だが、救世主様は、まだ邪悪なる者を倒していない。仮に私を倒して、私よりも強いと証明出来たら、その時は姫との結婚を認めようではないか。」

「自分のことを邪悪なる者と認めたわ。」

「やっぱり、かつての伝説の剣騎士って、目覚めると邪悪なる者になる運命なのか。」

「さあ、救世主様よ! 姫と結婚したければ、邪悪なる者となった伝説の剣騎士の私を倒して、人々に英雄と認められろ! そうすれば私は、おまえたちの結婚を認めるだろう! そして愛した姫の元に召されるだろう。」

「おお!? なんだか伝説の剣騎士に見えてきたぞ!?」

「いいでしょう。望むところです。救世主様、私のために邪悪なる者を倒してください。」

「はい。姫と結婚するために、俺は邪悪なる者を倒します。」

 愛を確かめ合う姫と救世主様。

「言い忘れたが、私は邪悪なる者として、人々を襲い、救世主様を殺そうとし、姫を連れ去ろうとすることは継続するからな。」

「それは仕方がない。その度に俺は戦うぜ。」

「それから私は修行して、現代の剣騎士の様な、強さを手に入れるからな。覚悟しておけ。今日のところはこれで退散してやる。さらばだ!」

 伝説の剣騎士と悪夢の剣騎士は消えていった。

「これからが俺の救世主としての本当の戦いだ!」

「ここからが私のバージンロードね。キャハ!」

 救世主様と姫の物語が始まった。

 つづく。

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