男トモダチ〜友達以上恋人未満な私たち〜
天雪桃那花(あまゆきもなか)
第1話 休日出勤日
今日は土曜日だ。
いつもなら「わーいわいっ♪ 土曜日だ、やったあ、休みだ!」とスキップしたくなるぐらいウキウキ、私の大好きな土曜日です。
うちの会社は基本週休二日制なはずですよね。
ところが――。
ええ、繁忙期じゃなければ、当然のように仕事はお休みだったのです。
だが鬼のような社長のひと声で今日は仕事だ。
こうなったら来月代休とってやる。
三日ぐらいとってやるから〜!
休日出勤するほど仕事は忙しかったが、同期の金子さんは休んでいた。
彼氏と沖縄旅行に行ったのだ。いいなあ、いいなあ。
うん、素直に羨ましい。
金子さんは彼氏と学生時代から付き合っていて交際期間は長いのに、ラブラブっぷりがすごい。
惚気ける彼女はハッピーオーラに包まれていて、いつも幸せそうな笑顔を振りまいている。
会社の駐車場に着くと検査の沢渡さんが待ち構えていて早く納品書を発行してくれと言う。
私は買ってから五年目になるワインレッド色の愛用の軽自動車から降りてさっそく事務所に向かう。
「まだ始業時間には早いですよね?」
「休日出勤だから関係ないよ。早く早く〜タイムカード押してさ」
沢渡さんは私より八つ年上の自称モテない男だった。
でも私は知っている。
物腰が柔らかく誰にでも親切で優しくて、ひそかに女性社員やパートさんにファンは多い。
そうそう、私は電圧の調整をする電子盤などを作る工場の事務員として働いています。
会社では大人しく地味っ子です。
ただ、猫は少々かぶっているかもしれません。
友達と集まる時にはかなり弾けてますから。
女友達にも付き合ってきた彼氏にもギャップ萌えするなどとはよく言われたもんです。
二重人格というわけじゃないけど、仕事とプライベートでは変わります。
仕事は仕事、きっちりこなし。
プライベートは仕事の鬱憤を晴らすために、よく飲みよく食べよく喋り、かなり歌いアウトドアに遊びます。
気心知れた友達と、バーベキューとかキャンプとか旅行にスノーボードに行ったりするのが大好き。
いつも集まる友達は8人ぐらいの仲良しメンバーがいて。
そこでストレス発散できるから私はまた仕事で頑張ることが出来るのだ。
というか、そのためにも働かないとならない。
みんなとのお出掛けお洒落のためには軍資金を稼がねばなりません。うふふ、仕事はプライベートを充実させるために頑張るのだ。
手際よく効率よく、私七海は一生懸命に全力投球します。
事務員として何年も地道に働きながら私は密かに思い描いたプランがあった。
友達が整理収納アドバイザーになってお一人様企業を初めていた。
誘われていたのだ。
今は資格を取るための勉強中だ。
それとこちらは収益は見込めるかは分からないが好きな一点もののアクセサリーを作ってたまにネット通販している。
事務員としては安定しているが、もう同じことの繰り返しに嫌気が差していたのかもしれなかった。
そして同じ社内に去年の秋に恋人関係の終わった上司がいることがなんとも嫌な気分を増幅させていた。
部署が違うのであまり顔は合わせない。
今はとにかく会社を変えたい。
転職したい。
恋愛してた上司に会ってしまうことよりももう一つの理由の方が大きかった。
この会社は三ヶ月前に別れた彼氏の実家の目と鼻の先にあったのだ。
環境を変えたい。
職場恋愛の後味は私が振ったこともあり悪かったと思う。
だけど気持ちが冷めてしまったのだから仕方ないではありませんか。
だけど神様。
次に付き合った彼氏の実家がすぐそこだなんて偶然にしちゃあ、あまりにもひどい仕打ちじゃないですかね?
この間は、偶然にも会社近くのイタリアンカフェで同僚とランチをしてたら、元カレがかなり年下なギャル風な彼女を連れてイチャイチャしてるとこに出くわしたんですよ。
せっかくのパスタが、味がしなかったです〜。とほほ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。