第34話 羽休めの休日 4 ミラージュ
古代文明が生み出した遺物スフィア、それは今を生きる人々にとって超便利アイテムとして重宝されていた。飛空艇という大型のものから、消しゴムのような小さなものまで、その形や大きさは様々だ。だが大抵は、厳重な防護を固めた遺跡の中にそれは眠っている。
しかし、そんな場所に眠っているスフィアを、遺跡から発掘して生計を立てる者達がいた。
しかしそんな者達、トレジャーハンターにも休息の日々があった。正しく休息かどうかはさておいて。
飛空艇イルカ号のブリッジにて二ャモメ団の三人は、同じ団員で操舵主であるセツナさんの話を聞き、とある鏡の前に集まっていた。
「これが、アネキさんの言う、よく分かんないもんが映る鏡……」
「本当に映るのかなー」
「鏡さんに何かが映るの? ポロンたちが移ってるだけだよって、ポロン思う」
鏡は静かにそこにある。ただ、そこにある。
「何も映んないじゃん。どーせ、酔っぱらったアネキさんが
「裸の王様みたいに、見える人にしか見えないとか、そういうカラクリだったりしてー」
「その場合、心がきれいなポロンちゃんには見えることになるけど……て、遠回しにあたしの心が汚いって言ってんのかっ!」
「いひゃいよー」
心が汚い認定されたミリは、腹いせにケイクの頬をどこまでもつねっている。
「あ、ミリちゃんケイクくん。何か鏡さんの表面がうねうね波立ってるよ! どうしたんだろね。具合わるいのかな? ポロン鏡さん心配だよ」
ほっぺたの限界突破にいそしんでたり、いそしまれているミリとケイクの前で、今までただそこにあるだけだった鏡の表面に変化が生じた。
「あ、これって、体感センサー付きだったんだ。人が一定距離近づかないと作動しないんだよー。伸ばされたほっぺた分が近づいたのかなー。あーポロンちゃん、それ病気とか怪我とかしてるわけじゃないからー、そんな心配しなくていいよー」
「鏡のくせに人様を動かそうってわけ? ほら、ポロンちゃん危ないから近づいちゃダメだって」
動いたのは人ではなく人体の一部だったが。
ミリとケイクが息の合った、ポロン引き止めコンビ術を行使する間にも鏡は変化する。
「ほらポロンちゃん、何か見えてきたよー」
「ふははははっ、この世界はもうすぐ、この魔王様によって滅ぼされるのだ。命乞いをするなら今の内だぞ勇者よ」
「ひぃ、助けてください魔王様。実は勇者なんてなりなくてなったわけじゃないんです。どうか命だけはー」
「何だって!?」
・・・という感じの映像だった。
どこかの王座の上で踏ん反りかえっている魔王と、その前で命乞いしている勇者ようだ。
「何だって!? 勇者、あんた勇者でしょ! 簡単に命乞いしてんじゃない」
「やー、何か世界の危機感が溢れる映像だったねー。いろんな意味でー」
「ふぇ?」
次に映し出されたのは、薄暗い場所だった。
「ああっ、おやめになって、あなたは義理の兄。このような関係を持つべきではありません」「よいではないか、よいではないか、ぐへへへへ・・・」
何か、大人な世界が映し出された。
「ポロンちゃん見ちゃダメ、アイ・クローズ!」
「いいこだから、耳もふさごうねー」
「ふ?」
それからもいろいろ、三人は見たのだが。
「ったく、何が何だか分かるもんではあったたけど、映してはいけないもんばっか映ってんじゃん」
「放送禁止になっちゃうようなものばっかりだねー」
「ポロンよく分かんないけど、何だか鏡さん忙しそうだったね」
そんな感想にならざるをえなかった。
「ほんとさぁ、セツナさんってば何考えてこんなものイルカ号に置いてんの? 著しく目の害にしか、ならないんだけど」
「さあねー。でもあのセツナさんの事だから、何か考えがあるんじゃないかなー。本当に必要ない物は置かないと思うよー。あれで
鏡の処遇に対して大変ご不満であるミリに、ケイクは続ける。
「今回の話だって、マッカさんやメッカさんには言ってないみたいだしー。僕たちに見せたい何かがあるんじゃないかなー」
「見せたい何か? 何それ」
「たとえばー、この鏡ってひょっとしてー……」
ケイクが自分の考えを説明しようとした時、鏡が次の映像を映し出した。
「なあちゃん、こんなところにいたんだ」
「ふぇ、姫ちゃま。ごめんなさいなの。お部屋間違えて入っちゃったの」
「限界回廊には入っちゃ駄目って言われてたよね。何が起こるか分からないからって、でも入り口近くでよかったよ」
「なあ、かくれんぼさん。しようとおもってたの。そしたら兵士さんが居眠りしてたから、起こさなきゃって思ったんだけど、お部屋さんの隙間が開いてたの。なあ、気になったの。何があるんだろうって」
その映像を見てミリは呟く
「レジーナ……?」
「なるほどねー。やっぱり別の世界の映像を映す鏡なんだー」
「レジーナちゃんだっ、ポロン驚く! でも、見れて嬉しいねっ」
二ャモメ団のメンバーになれてたかもしれない一人の少女の姿がそこには映っていた。
映像はあっという間に切り替わってしまう。
「ああっ、いけません、あなたは義理の弟。結ばれるわけには……」「ぐへへ、よいではないか、よいではないか」
次はそんな大人の世界だった。
「次これ来るかっ!? てか、アンタ義理の兄はどうした!」
「ポロンちゃん、はいアイ・クローズしようねー」
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