第61話「勇者迎撃戦」

 あの野郎!!

 向こうから来やがったか!!


「いよぉ? 生きてたのか? なんか王都が騒がしいと思ったけど……。オッサンの仕業かよ?」

「黙れクソガキ! ギッタギタにしてやるぜ!」


 ナセルの殺気をまんじりともせず、

「へー? それにしても、オッサンしつこいな~」


 コージは全く気にすることなく、明らかに舐めてかかっている。


「ははは。また返り討ちにしてやるぜ。それより、見ろよ俺の部隊────勇者親衛隊ブレイズの雄姿をッ」


 コージの周囲を護るように旋回している飛竜に怪鳥。

 それをさも自慢気に見せしめる。


 なるほど……空中機動戦力は、全て勇者の戦力ってことか!!


 どうりで、王城が襲われても出てこないと思ったら、勇者の子飼いに成り下がっていたわけだ。

 

 そして、悠々の重役出勤。

 誰が死のうとお構い無く、マイペースで戦力を準備中だったわけだ。


「ま、オッサン相手ならコイツらの出る幕じゃないな────」


 余裕綽々。ゆっくりと空を圧するように飛び退る飛竜に跨る勇者コージ。


 ……どうせ、竜に乗る自分がカッコいいとか思っているんだろうさ!!


「──そのまま一生ふざけていろッ!!」

 俺が叩き落としてやるッッ!!


「──出でよ、ドイツ軍! メッサー……」

「ひゃは! 行くぜぇぇえ!」


 あん?!


 飛び退る飛竜から騎手たるコージが飛び降りやがった。


 ば、

 バカな!


 し、死ぬぞ!!

 そんなんで死なれちゃ……──。


 だが、

「アリシアとしっぽりしてる時に邪魔しやがって────また叩き切ってやるぜぇ!!」


 クルクルクルと意味もなく回転しながら空に身を投げ出し、ナセルから遠く離れた地面にスタン! と舞い降りる。


 落下をものともせず、もちろん傷などどこにもない。


 あ、あの野郎……高空から降りて平気とはデタラメな野郎だ。


 だけど、デタラメさならこっちも負けてはいないぞ!!

 

 一瞬だけ、ナセルが驚愕したのも束の間、すぐさまコージが攻撃動作に移る。


「着地ぃぃぃぃい! 10点10点10点──……99点! かーらーのー」


 何やらわけのわからないことを呟きながら、豪華装備を纏ったコージが立ち上がる。


 そして、

「リアル縮地ぃぃぃぃいいいい!!!」



 ドンッ!!───と大地を蹴り上げて、猛然とダッシュ!


 んな?!

 は、はやい────!!!

 

 バン、バンッと石畳が弾ぜていく。


 うりぃぃぃい!

「──9秒切ってやるぜぇぇぇえ!!」


 およそ人間とは思えない速度で、ナセルとの距離を一気に詰めようとしてくる。


 だが、

「舐めるなクソガキ! 戦場はお遊戯場じゃねぇんだよぉぉぉお!!」


 そうとも、王都はとっくに戦場だ!!

 ガキに軍隊が理解できるものか────!




「出でよドイツ軍───くらえぇぇええ!」




 Lv6召喚獣……ッ!

 V-1────召喚ッッ!!!


ドイツ軍

Lv6:フィーゼラー通称V-1Fi-103無人飛行爆弾

スキル:無人飛行、突貫、850kg炸薬

備 考:パルスジェットによる無人飛行爆弾

    時速600kmで目標に突入し爆発

    遠距離からは命中率が著しく低下


 

 それを、無数に召喚するナセル。


 魔力の枯渇が心配だったが、幸いにもV-1の召喚時間は過少でいい。


 なんたってコイツは────。


「んんな!?───み、ミサイルか!?」


 猛然と突っ込んできた勇者コージが、その直前で目を剥いて驚愕している。


(────みさいる?)


 何を言ってやがる。

V-1報復1号だよッ!!」


 中空に現れた召喚魔法陣から、キラキラとした召喚光を纏った飛翔体が顕現する。


 ズングリとした姿はメッサーシュミットやフォッケウルフのような美麗さはないものの────ある意味で兵器らしい兵器だった。


「ば! うおおぉおおおお!!!」


 ギュリリリリぃぃ!!!!

 と、高速走行を無理やり止めるコージは、あわてて背中の聖剣とやらを引き抜くと構えて見せる。


 左手には菱形の美しい盾があり、合わせて構えるも────遅い!!


 間に合うものかッ!!


「いぃぃぃっっけぇぇぇええええ!!」



 ──ヴァァァァァァァァアン!!

  ──ヴァァァァアアァァンン!!

   ──ヴァアアアァァァアンン!!

    ──ヴァァァァァァァアンン!!

     ──ヴァァァァァァァァアン!!


 ──ヴァァァァアアァァンン!!

  ──ヴァアアアァァァアンン!!

   ──ヴァァァァァァァアンン!!

    ──ヴァァァァァァァアンン!!

     ──ヴァァァァァァァァアン!!



 パルスジェットエンジンの立てる喧しい騒音が一斉にコージへ指向する。


 それはまるでナセルの怒りの体現の如く、全弾が猛烈な勢いでコージに向かって飛んでいき────……ッ炸裂!!!


「ウッソだろぉぉおおお!!」

 嘘じゃねぇぇええ!!


 ──死ねぇぇぇぇぇぇえええええ!



 ──────カッッッッッ!






 ……ッッズッッドォォォォオオオンン!!


 ……ォォォオオオン───!


 ……ォォォオン──!

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