第59話「バトルオブナセル」


 ゆうしゃ───!




 勇者。勇者!

 勇者ッ……!

 勇者コージぃぃい……。


 ついに、

「──ついに!……ついにここまで来た!」


 まずは、後顧の憂いを絶つために共謀者を一番に仕留めててやった。


 スカッとしたぜ!


 そしてなによりも、怒りが冷めないように、まずは添え物連中から一層してやった。


 ギルドマスターに神官長、そして国王だ。


 いやー!

 ぶっ飛ばしてやったぜ!


 快感、快感!

 爽快だぜ!!


 そして、残すところはもっとも憎むべき二人──!


 そうとも、

 間男、勇者コージと!

 売女、愛妻アリシア!



 ──────あとは、お前らだ!!



 あとは二人。

 残りは二人。

 最後は二人。



 そして、

 二人のうち最初は、もう決めている!


 




 勇者コージ!──お前からだよッッッ!





 今度は負けない!

 必ず、ぶっ飛ばしてやる。


(もう、過去の俺はいない…………)


 そうとも、

 以前のナセルと同じと侮られては困るぜ。

 

 ……ドラゴンはもういない。

 お前らに消された。


 だが、

 俺にはドイツ軍がいる!

「───そんじゃぁ、再戦と行こうじゃないかッ」


 国王の末路など毛ほども興味を示さず、踵を返したナセル。

 その目は、怒りと喜びと、怒気と歓喜に彩られている。


 さぁ、待ってろよ。

「俺のドイツ軍が、必ず貴様を倒す──!」


 以前はドラゴンごとぶっ飛ばされた……。

 だが、次はそうはいかないぞ。


 なにせ、ドイツ軍。

 なんたって、ドイツ軍。

 なにをおいても、ドイツ軍。


 俺の『ドイツ軍』は最強だ────!!

 首を洗って待ってやがれッ!



 ブゥン──……。



 召喚獣ステータスを呼び出し──。



 ────出でよドイツ軍!!



ドイツ軍Lv6:

※  ※  ※:

Lv0→ドイツ軍歩兵1940年国防軍ヴェアマハトタイプ

Lv1→ドイツ軍歩兵分隊1940年国防軍型、

   ドイツ軍工兵班1940年国防軍型、

   Ⅰ号戦車B型、

Lv2→ドイツ軍歩兵小隊1940年国防軍型、

   ドイツ軍工兵分隊

   Ⅱ号戦車C型、

   R12サイドカーMG34軽機関銃装備

Lv3→ドイツ軍歩兵小隊1942年自動車化

   ※(ハーフトラック装備)

   ドイツ軍工兵分隊1942年自動車化

   ※(3tトラック装備)

   Ⅲ号戦車M型

   メッサーシュミットBf109G戦闘機

Lv4→ドイツ軍装甲擲弾兵小隊1943年型

   ※(ハーフトラック装備)

   ドイツ軍工兵分隊1943年型

   ※(工兵戦闘車装備)

   ドイツ軍砲兵小隊

   ※(10.5cm榴弾砲装備leFH18/40

   Ⅳ号戦車H型、

   ユンカースJu87D急降下爆撃機

Lv5→ドイツ軍装甲擲弾兵小隊1944年型

   ※ハーフトラック装備

   ドイツ軍工兵分隊1944年

   ※火焔放射戦車装備

   ドイツ軍砲兵小隊

   ※重榴弾砲装備

    パンター5号戦車G型

   フォッケウルフFw190F戦闘爆撃機

Lv6→ドイツ軍装甲擲弾兵小隊1944年型

   ※重装備(ハーフトラック装備)

   ドイツ軍工兵分隊1944年型

   ※大型ロケット弾発射機ネーベルファー装備

   ドイツ軍砲兵小隊

   ※自走重榴弾砲フンメル装備

   ティーガーⅠ6号戦車

   フィーゼラー通称Vー1Fiー103無人飛行爆弾

   ※He111H後期型に登載可能

(次)

Lv7→ドイツ軍降下猟兵小隊1944年型 

   ※ユンカースJu52輸送機装備

   ドイツ軍降下猟兵工兵分隊1944年型

   ※DFS230グライダー装備

   ドイツ軍列車砲兵

   ※80cm列車砲グスタフ装備

   ティーガーⅡ7号戦車

   メッサーシュミットMe262ジェット戦闘機

Lv8→????

Lv完→????




「Lv…………6だと?!」


 まさか……。

 まさか!


「まさか──……」


 れ、

 Lv5を超えるなんて────。


 それほど過度な戦闘をしていたということだろうか?


 ……それとも倒した人間の数と質による?


 だが、あのバンメル元帥ですら、何年も戦い続け、大軍を殲滅していてさえ、ようやくLv6だったというのに……。


 ナセルはたったの1日でLv6に到達した。


 その理由はわからない。


 近衛兵団を始め、国王を含めて重鎮もまとめて吹っ飛ばしてやったが……。

 それが原因か?


 それとも、元々はドラゴン召喚士Lvが5であったことが関連しているのだろうか?


 …………考えてもわからないな。


 そもそも、ドイツ軍自体がわからないことだらけだ。


 Lvの上昇とともに繋がりが強くなり、彼らの兵器などに対する理解も飛躍的に向上していった。


 だが、ナセルは知らない。


 ドイツ軍を知らない。

 彼らが何者か知らないのだ……。


 ──いや、構うものか……!


 ドイツ軍はナセルの復讐のために産まれた怒りの産物。

 そして、それを体現するもの。


 ──俺の愛しい召喚獣だ!


 それ以上でもそれ以下でもない!


 Lv6──、

「ふふ……──幸先がいいというものさ! なんたってコージの野郎は腐っても勇者」


 ……一度対峙したからわかる。

 奴は確かに強い。圧倒的に強い!


 おそらく、以前ナセルと戦ったときは本気すら出さずにいたはずだ。

 それでもナセルと、ナセルのドラゴンを降した。


 ならばこそ、Lv6でも対抗できるのだろうかと、不安があるのも事実。


 かつては、ナセルの最強の召喚獣が一瞬で切り飛ばされたのだ。

 あれで本気ではなかったのなら、どれ程の強さなのか……。


 だから今こそ、認めよう。

 勇者コージは強い。──最強だ。


 それは間違いない。

 認めなかったがために、以前は敗北した。


 だが、もう侮らない。


 だから全力で戦う。

 そうとも、ドイツ軍とて精強無比!


 負けるとは微塵も感じられないが……。

 

 Lv6の召喚獣が奴に通用するか──、やって見なければわからないことだ。


 他にも懸念はある。

 それはナセル自身のこと。ナセルは凡人だ。

 今でこそ、Lv6の境地に達したとは言っても、ナセル自身の身体能力は変わっていない。


 当然、地の魔力も増えているわけではなく──バンメルから「魔力の泉」を奪ったが、これとて無限の魔力を保証するものではない。


 実際に、バンメルは大量のドラゴンを召喚していたが、Lv6のドラゴンはほとんど召喚していなかった。


 Lv5以下の大量召喚。


 または、それ以下のLvのドラゴンを使っていた。


 つまり、バンメルであってもLv6を大量に召喚はできないのだろう。

 あるいは、魔力の消耗が激しいのかもしれない。


 奴を参考にするのは癪だが、経験値では遥かの奴の方が上だったのだ。

 しかもLv6の召喚士としては先輩にあたる。


 ならば、奴の戦い方と奴との戦闘経験は、勇者と決戦をするうえで大いに役立つだろう……。


「──やはり、Lv6の召喚獣は複数は呼べないだろうな。……あるいは召喚時間を短くするしかないかもしれない」


 現状できることは、勇者との決戦に備えて戦力の整備だ。


 Lv4の擲弾兵は十分に強いが、今の召喚数は過剰だった。

 少し整理する必要がある。そうとも、何も大軍は必要ない。

 もう、王都にはまともな軍隊は残っていないからな。


 いたとしても戦車を撃破できる戦力など、あろうはずがない。


 ならば、これからは少数精鋭で十分だ。


(では、まずは我が家に向かうか…………)

 その途上で整理していこう。


 揃えた精鋭でコージをぶっ飛ばしてやる!


 ────コージぃ!

 お前と会うのが楽しみになってきたぜ。


 好戦的な笑みを浮かべたナセル。


 もはやここに用はなく、瓦礫と埃と燃える構造物のため酷く臭う王城跡地。

 そこを去っていく。


 そうとも、ここにはもう何もない。


 何も、な──────。


 ナセルはもう二度と振り返ることなくこの場を後にする。


 背後にドイツ軍を引き連れて…………。



 ──ザッザッザッザッザッザッザッ!

 


 堀を渡り切った頃には追従するドイツ軍を少しずつ召喚から解除し、彼らを元の世界へ還していった。


 その上で魔力の補充と、態勢整理だ。


 そして、その結果────今、手元に残っているのはLv5の工兵分隊と、Lv4の工兵小隊のみ。


 擲弾兵は全員一度帰還させ、魔力をナセルに戻していく。


 そして、ドイツ軍の部隊が堀を渡り切った頃には、Lv4の工兵小隊も解除。


 工兵が築いた戦車橋とともに彼らもキラキラと輝く召喚光とともに元の世界に帰還していった。


 残った戦車は一両。

 工兵が装備する火炎放射戦車のみだ。


 それに跨上したナセルは、周囲を警戒するドイツ軍工兵分隊だけを残し、ナセルは新たな召喚獣を呼びだした。



「出でよドイツ軍────!!」



 呼び声に答えるドイツ軍。中空に巨大な魔法陣が現れ3両のハーフトラックが現れる。


 Lv6の擲弾兵小隊だ。


 彼らが一個小隊あれば戦力としては十分。

 Lv6の戦車は、まだ出すには早いだろう。あれは取って置きだ。


集合終わりアンゲトレーテン!』

 バシンと敬礼を受けるナセル。


 それに答礼しつつ────。

 

 ふと、視界を影が通りすぎた。

 何かが太陽を遮っている。


 ん?


 んんん?!


「あれは…………?」

 何だ?


 何かが……。

 何かが──────来るッ!


 そこでナセルの耳が異音に反応する。

 そう、……かつて聞き慣れたあの音を捉えたのだ。


 そう、聞き慣れた──────。


 こ、これは…………。






 ド────────────!






警戒アラート!!』

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