第46話:水浴び
歩いてる途中壁や岩肌にこびりついた物を拭ってきたけど、さすがにそれだけでは、気持ち悪さは消せなかった。
惨めだ・・・
そんな思いをしつつも早く合流したかった。
こんな所でモンスターと遭遇するんじゃないかと不安でもあった。
一歩一歩、足を前に出す度、服の隙間に汚れが捻り込んでくるので早くは歩きたくはない。
そんな心配をしている所だった。
気配を感じる・・・
鋭い牙が口元から見えている。狼型モンスターが目の前から現れた。
最初の不安がヒット!!
こいつは確か、ウォー・ウルフだっけか。
マッド・ウルフ程ではないけど、かなり凶暴で低レベルの冒険者も気をつけなければやられてしまうと聞いた。
僕よりも少し小さい140cmぐらいか。
これぐらいの大きさのモンスターだと、多少無理してでも攻撃をしかけてくる。
だけど・・・
そのウォー・ウルフの毛並みは純白で洗い立ての様にふっくらとしていてた。
少しの動きでその毛並みが、柔らかくたなびく。
タオルのように綺麗だった。
そう、僕のこびりついた汚物を拭くのにちょうど良さそうだった。
いや待て!あれはモンスターで危険だ!!
・・・だけどモフモフ。
あれに噛まれたら毒が回ってやばいかも。
・・・でもモフモフ。
肉を食いちぎられたら大量出血で死ぬかも。
・・・モフッ・・・
「くっ!モンスターのクセに何であんなにモフッモフッなんだ!!」
僕のその声にウォー・ウルフはビクつき、少し身をひいた。
こちらの意図はきっとまだわかっていない。
普通モンスターだったら体を洗う事なんてしないから、汚れまくっているもんだろう。
その純白タオルの様な体に僕は引き寄せられた。
ウォー・ウルフは僕をエサだと思って近づいてきたのか?
でも、来た道から彼に向かって風が吹くと、その臭いに気が付いたようだった。
ウォー・ウルフの表情が歪んで、硬直した。
彼が気がついた臭いは奥からか?それとも?
僕はその綺麗な毛並みで汚れを拭うチャンスを逃したく無い。
少なくともクランのメンバーにこのままの汚い格好では会いたくは無い。
汚名を汚物はいつまでもつけたままにしたく無い。
僕は覚悟を決めた。
「ほら大丈夫だよ。怖くないよ。僕を食べたかったんだろ・・・」
ゆっくり優しく警戒されないように近づいた。
でも僕の意図が読めたのか、前足を上げ身を引こうと警戒した。
僕は足を止める。
沈黙がほんの少し訪れたが、僕は我慢が出来なかった。
「逃すかぁあ!!」
タイミングがうまい具合にはまり、ウォー・ウルフは逃げ遅れた。
そして後方を確認していなかったらしく、逃げた先が壁だった。
僕はテーブルから落ちたコップに飛び付くようにウォー・ウルフに抱きつく!
キャウン!?
ウォー・ウルフがさっきまでの威勢も無く、悲鳴に似た泣き声を出した。
顔から脱ぐって手腕体の順にそのモフモフに全身をあてがった。
「おっなかなか良い毛並み。こんな毛布なら夜も快適に過ごせそうだ。」
そう、汚れてなかったら・・・
キャウ!キャウ・・・!
ウォーウルフが身を捩りながら前足、後ろ足を使って、僕から離れようと体にキックをしてくる。
でもそんなに強くないので、痛くない。
噛み付いてくるなら僕も少しは警戒したんだけど、臭いがきついらしく鼻を僕の方へは向けたくないらしい。
攻撃をするでも無く、ただ逃げたいアピールを全身でしてくる。
させないぞ!モフモフ!
ガッチリと両足で胴体をホールドし、体のいろんなところを拭った。
『ジョナサン?大丈夫?』
唐突の声が魔法石から聞こえた。
このふんわりとした話し方は!ローリアさん!
声はこの間と同じくキョウコさんなので、違和感は多少はあるけど、何よりも話せるのが嬉しい。
声に反応して、ウォー・ウルフを離してしまった。
でも大きな汚れは拭けたっぽい。
僕は、ローリアさんに何をやっていたか気が付かれたくはなかった。
だって、きっと側から見ると変態じゃない。
「ええ!ちょっとポカしましたけど、大丈夫です。」
『動物の声がするけど?』
「ちょっと可愛いモンスターがいたので可愛がっていたところで・・・」
僕はこのウォー・ウルフで汚物を拭っていたなんて言えなかった。
ウォー・ウルフは悲鳴を上げながら逃げ去っていく。
『そうなんだ。でも気をつけてね。』
「はい。ローリアさんは元気にしていますか?」
『そうね、こっちの世界では何の問題もなく平穏に過ごしてるよ。クフランで大変だったんだってね。』
「そうなんですよ、まさかあそこでも追いかけ回されるなんて思いもしなくて、でも皆さんに助けられ・・・」
魔法石からクスリと笑う声が聞こえた。
『助けてもらうにも大変だったでしょう?』
「えっええ・・・」
『おい、そこは感謝してしきれないってスパッと答える所だろう?』
ホーウェンさんの声だ。
そういえば他の人もこの魔法石で話が聞けたんだった。
『あんたたちはあんたたちで、楽しんでただけでしょう。』
これはキョウコさんの話だ。
続けて同じ声質だけど柔らかい口調でローリアさんが話した。
『何だか不思議ね、助けにきてもらっているのにこうやって話ができるって。』
「早く普通に話せるように頑張ります。」
『無理はしちゃだめだよ。』
「はい!」
そう答えたものの、無理せずに、ローリアさんを救出する事はきっとできないだろうと思った。
そして10分後。
僕はやっとクランメンバーと合流した。
クランメンバーは僕のいる所より1m程上の高台で待っていた。
「どうやら無事だったみたいだね。」
ミランさんが高台のヘリに座って完全に寛いでいた。
彼らの姿を見たときはほっとしたけど、同時に近づきたくない思いもある。
そんな思いを知っていか知らないでか、ドゥベルさんが話し始めた。
「もう2歩前に、おっとそれ以上こっちに近寄るな。キョウコ、ミラン頼むわ・・・」
「はいよ。」
何だろう?疑問を持った矢先にキョウコさんが魔法を唱えた。
「ちょっと痛いけど我慢してね。」
ミランさんも合わせて唱えると。
バッシャーン!
頭上から、大量の水が降り注いぎ、体に当たり痺れに似た痛みが走った。
どうやらこの上段で貯水槽があるらしい。
魔法を注ぐと水が流れる仕組みのものだった。
「通称巨人の便器。ここはそう呼ばれているよ。どう?自分がう○こになった感想は?」
シャナンさんがニヤニヤしながらこちらを見ている。
なんですか?その通称?嫌がらせの設備と言うものですか。
でもそれでも水の勢いが足らないようで、ミランさんとキョウコさんが水魔法で僕を水鉄砲の様に細い水流を僕のほうに当てる。
「ほら、脇あげて。」
言われるがまま腕を上げるが、結構痛くすぐった・・・
いや痛い。
キョウコさんが僕の表情を見て、余裕そうだと判断して、徐々に水圧を上げてくる。
徐々に汚れた体をその水が洗い流してくれる。
「いきなりやらかしてくれるとは思わなかったよ。」
「ほら、鎧を脱ぎな。内側もこびりついてるんだろう?」
「エレメンタルアーマーは全属性に態勢あるから・・・脱いだらそこに置きな。」
言われる通りに装備品を脱いで目の前に置いた。
「ちょっと離れて」
ミランさんが水魔法の詠唱を辞め、今度は炎魔法を唱えた。
ちょっと強めの火力を感じたけど、一瞬で周りの水分を奪い、エレメンタルアーマーは結構綺麗になった。
「エレメンタルだけに魔法的抵抗力あるけど、物理的な汚れや匂いは無理なんだね。」
「落ちた所が、土属性によってくれれば、守れたかもしれないな。」
「ったく世話の焼ける。」
「ん〜?誰がそんな事言ってるのかな?3回もトラップにひっかかった事がある人から聞こえた様な気がするよ。」
キョウコさんが魔法を維持しながら。ミハエルさんに目をそむけた。
「先に言っておくべきだった。」
「まぁいい。こう言う罠があるから今後も気をつけるんだぞ。」
そう言いながらシャンプーボトルをこっちに投げてくれる。
「ほらジョナサン!シャツもパンツも脱ぐ!」
「パンツも!?」
「じっくり裸を見てやるから、安心してスッポンポンになりな。でもこいつらみたいに裸になれるんじゃないよ。」
キョウコさんも容赦ない人です。
「さて、ジョナサンの乳首の色は何色?遠慮なく晒すとイイ。」
ヤヒスさん・・・幼い顔でそんな事を言うのはやめてください!
マジマジと向けられる目線が痛かった。
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