幕間


 ナノは鼻歌を歌いながら紙に何かを書いている。

 それにハルカが気づくと声をかけた。


「ナノ、何を書いているんだ?」

「あ、おにい。国を作ったんだったら、国旗が必要でしょ?だから考えてみたの」


 そう言うと、ナノはハルカに紙を見せた。

 それは青を基調として、クジラ、シャチ、海亀が妖精の羽を生やして環を描くように泳いでいる紋章だった。


「へえ……」


 ナノはイラストを書くのが好きで、よく漫画の絵とかを真似して書いている。

 なかなか上手くて、小学校の友人から書いてとねだられるほどだ。


「あれ、どうしたの?」

「何を書いたんですか?」


 ケイト、イツキが気づき、他にもフェアリスたちがやって来る。


「なるほど、テラプロームと我々を描いたわけなのですな。ナノ殿は絵が上手ですなあ。


 ヤナギが感心して話す。クジラ、シャチ、海亀はそれぞれテラプロームのケートス、オルカ、タイタスを、妖精の羽はフェアリスを表していることがよくわかる。


「でも、そうなるとあなた方がこの中にいないのでは?」


 ノインが気になって質問すると、ナノはちっちっと指をふった。


「私たちもいるよ、ここに」


 そう言うと、クジラたちが泳ぐ躍動感を表す効果線を示した。


「確かに、それぞれ4本ずつ描かれてますが……」

「それだけじゃないよー。私たちの苗字は“渡瀬”、“瀬”は川……なんだけど、水辺ってことにして、“渡”はそのまま渡るって意味だからそれぞれのテラプロームをつなげるように意識してみたんだ」

「「なるほど」」


 ナノがどやっと説明すると、みんな感心してうなずいた。

 その後、形式的に国旗や礼服用に国の紋章を作らないといけないことになったが、満場一致でこのイラストが採用された、とのことである。

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