第29話 しゅらば
ショップでのダンジョンバトルが終わった後は、解散となった。
その後は俺も帰宅──ではなく、茜の家にいた。
まるで、修羅場の様な雰囲気が漂っている。
「先輩・・・今日、対戦相手の事、嫌らしい目でチラ見してたっすよね」
修羅場だった。
「いや、あれは・・・そう、男性の本能でだな・・・」
「私の事は見てくれないし、手も出してくれない癖に」
「いや、茜は極めて魅力的なんだが・・・」
実際、相当意識はするのだが。
どうしても、茜の態度が本心に思えなくて・・・
「私、魅力無いっすか?」
茜が、上着を脱いでいき・・・そして、大きなものがこぼれ出る。
真剣な目。
「いや、茜は極めて魅力的だ・・・ただ・・・どうしても無理している様に思えてな。自暴自棄というか・・・自分を傷つけたいというか・・・」
そっと茜に服を被せる。
「・・・そこまで分かってるっすか、流石先輩っす・・・」
茜が、表情を消し、漏らす。
「そうっす・・・私は、自分を汚したくて・・・先輩を選んだっす・・・でも同時に、先輩なら分かってくれる、そんな事も期待してた気がするっす」
茜は俺をまっすぐ見ると、
「先輩、私──俺の話を聞いて欲しい」
そう言った。
俺娘。
「俺は、かつては、ウォリアーだった。そこそこのチームで、それなりの活躍をし。中学校の全国大会出場経験も有る」
茜が続ける。
「残念ながら連携が苦手で、チームとしては2回戦敗退だったけど。クラス別MVPに選ばれたから、それなりの実力はあったと思う。そんなある日・・・」
茜は目を瞑り、頭を振ると、
「俺は気づいてしまった。PTのスカウトが・・・ドロップ品を誤魔化していた事を」
スカウト、というクラスは、宝箱の解錠や、ドロップ品の回収等、ドロップ品に接する機会が多い。
誰も気付かない間にレアを拾えば・・・甘い誘惑に晒される。
「俺は、そのスカウトに注意したんだが・・・嵌められ、レアを秘匿したと冤罪をかけられて・・・PTを追放された。俺は、身を粉にして、リーダーをやっていたつもりだったが・・・結局、誰も俺を信じてはいなかったんだ」
「茜・・・」
酷い話だ。
「それで自分を変えたくて・・・いや、先輩の言うとおり、自分を汚して欲しかったのかも知れない。俺は・・・」
「茜、俺はお前の味方だ。俺を信じろ」
茜を抱きしめる。
「先輩・・・ありがとう。本当の俺は・・・女の子っぽい喋り方でもないし・・・魅力も無いけど・・・それでも、先輩の彼女でいたいです」
「大丈夫だ、茜──正直、ぐいぐい来るのは若干引いてたし、お前の喋り方は別に女の子っぽく無かったぞ」
「えっ?!」
いや、〜っす、とか、女の子っぽく無いしな?
無理に語尾つけてる感あったし。
「あと・・・あの・・・その・・・恥ずかしいので、するのは・・・その・・・時間を下さい」
真っ赤になって、茜が顔を埋める。
エロく迫って来てた時より魅力的だよ、畜生。
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