第20話 遠藤宿名

茜と楽しくDDSをプレイして。

晩御飯をよばれて。

自室に帰る。

エア残量は・・・


1326/3200


だいぶ回復したな。

自宅に本体が有れば、寝る前に1潜りできるのに。


・・・


待て。


俺は今・・・

どうやって・・・エア残量を確認したんだ?


こぷ・・・


苦しい・・・く・・・


こぽ・・・こぽ・・・


暗い部屋を照らす、蒼白い光。

これは・・・ああ、俺が吐いたのか。


こぽ・・・こぽ・・・


地面を伝い、広がる。

まずい・・・このままでは・・・


ごぽ


塊を吐き出すと、後は飲み込む。


今日・・・


茜と青森がおかしかった。

でも、あれは・・・おかしいのは俺じゃないか?


何故、俺は、茜や青森が──オーラを出している様に見えたんだ?

現実にそんな物が有るわけ無いだろう。


そして何故・・・


俺は、青森のんだ?

妄想?

それとも事実?


吐き出したものが、急速に補充されていく。

何だっけ・・・


そう。


明日は、4人PTでのプレイ。

早寝しなければ。


--


「遠藤君、待って欲しい」


俺は、遠藤君の腕を掴み、帰宅を阻止する。


「君は・・・転校生の朱智君だね。俺には関わるな、そう誰かに教わらなかったのか?」


遠藤君は、手を翳すと、


「我が右手に宿る黒龍が暴れている。早く帰って、沈めなければ」


「実は、遠藤君に是非、だんじょんぶに入って欲しいんだ。僕達と一緒に、潜入ダイブしようぜ!」


「俺には、他者と潜入ダイブするのは困難だな。俺はディガー故に」


「遠藤君は、クラスは何かな?俺はウォリアー!」


「いや、やらないからな?俺は用事が有るから直ぐに帰ると言っているんだ」


「帰ってDDSやるんだろ?なら、部室で俺達と一緒に潜入ダイブしても一緒じゃないか」


「人の話を聞け?!」


遠藤君が叫ぶ。


「・・・遠藤君が突っ込みに回っている所なんて初めて見ました」

「先輩、ぱねっす」


青森さんと茜が何やら言っている。


「遠藤君。部活に入るのに躊躇しているのであれば、それは一旦おいておこう。取り敢えず、今日だけでも一緒に潜らないか?」


「・・・分かった。今日だけだからな」


遠藤君は、そう溜息をついた。


--


「改めて紹介しよう。俺は、レベル12のウォリアーだ。DDS歴は1週間、ってところだな」


「「1週間でレベル12?!」」


青森さんと遠藤君が叫ぶ。


「・・・鷺谷さん、と言ったか。君が、効率よくレベリングしてあげている、とかかね?」


「いえ、先輩は何だかレベルが上がるのが早い、というか・・・何故か私までレベルが上がるのが加速していますね。この1週間で、8から12になりました」


遠藤君の問いに、茜が答える。

いや、このゲーム、基本こんな感じで上がるんじゃね?


「私は、レベル12のスカウト。ディガーっす。DDS歴は、結構初期からやってるっす」


茜が答える。

結構初期からやってて、最近まで8だったなら、確かに結構なペースだな。


「俺はレベル9のメイジ。同じくディガー。DDS歴は長い」


ばさあっ


遠藤君が、朱いマントを翻しながら言う。

格好良い黒魔道士の衣装だ。


「私は、レベル8のプリーストです。ディガーですね。DDS歴はそれなりです。回復は任せて下さいね」


青森さんが微笑む。


「丁度4職が揃った・・・下層にも挑戦できるな」


俺は、興奮を抑えられずに言う。


「「「下層行くなら、フルパ必須だから」」」


茜、青森さん、遠藤君が口を揃えて言う。

フルパ・・・6人PTの事だ。

このゲーム、6人まではPT経験値ボーナスが良い感じに上がるので、6人PTが一番効率が良い。

最大12人まで組めるが、経験値効率が落ちるし、大会の規定は6人だ。

その為、6人をフルパと呼ぶ、らしい。


ダンジョンの設定・・・レベルは低めにして、下層を目指そう。

設定したレベルは、1階層目の敵のレベルの目安であって、それ以降の階層ではレベルが跳ね上がるらしい。

ダンジョンクリアボーナス・・・最後の宝箱、を手に入れようと思えば、相当なレベルが必要となるようだ。


レベルは1、ダンジョン種別は森林。

深林を選ぶのは、灯りが無くても見やすいからだ。


「よし・・・行くぞ」


俺は、剣を掲げる。


チャ


茜が短剣を、青森さんが杖を、遠藤君が本を・・・掲げ・・・


ダンジョンへと降り立った。

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