第18話 全国レベル

PVモード。

普段のダンジョンとは異なり、小部屋へと繋がる。

条件設定によっては、アスレチックの様なオブジェクトも出るらしい。

今は、謎の光が天井照らすだけの、石造りの部屋。


副会長は、恐らくウォリアーだろう。

銀色の鎧に身を包み、小さめの丸盾に、レイピア。

スピードタイプか。


「・・・デフォルトの見た目・・・初心者ブラフですか?関心しませんね」


副会長が、呆れたように言う。

気に入ったのが見つからないだけだよ。


「俺に相応しい武具がなかなか見つからなくてね」


花柄とか、ごついフルプレートとか。



斧、蒼天牙を構える。


「しかも、斧とは・・・槍か剣・・・もしくは弓、それが一般的ですが。なかなか変わった武器を使うのですね」


「強いからな、斧」


半分意固地になってる感があるが。


「では、開始の合図は私がさせて頂くっす」


茜が言う。

行くぞ・・・


「始めっす!」


予測線──無数に伸びてくる?!

なんとか隙間に潜り込もうとするが──あっさりそこも埋まり──


ガッ


一撃で俺の視界はブラックアウトした。


--


気づいたのは、拠点部屋。

HPは1だけ残り、死んではいない。

というか、リアルに気絶するんか。


HPが急速に回復し・・・逆に、エアがどんどん減っていく。

ぎゃああああ。


「・・・手を抜いたのですか・・・?」


困惑した様に、副会長が言う。


「副会長、酷いですね。始めて1週間に満たない初心者に本気出すなんて」


茜が半眼で言う。


「始めて1週間?!実力が有るから、全国大会を目指す部活を作るのでは無かったのですか?!」


副会長が驚きの声を上げる。


「全国大会は出たいが、流石に始めてすぐに実力は無いぞ。見ての通りだ」


俺は胸を張って言う。


「・・・それは申し訳有りません・・・私も、会長も、誤解していたようです・・・もちろん、本気で全国を目指していなくても、活動は可能です・・・でも、今後方針の折合いがつかない可能性が有るので。君達は、部ではなく、同好会扱いとするのを勧めします。補助金は出ないですが、空いてる部屋の提供くらいはしますよ」


「部屋の提供は有り難いな」


大会が目的ではなく、ゲームを楽しむ事が目的だからな。

そっちの方が良さそうだ。

ゲーム機本体は、俺でも買えそうだし。

何故かネットワーク設定はおろか、電源すら不要だし。


「お詫びと言っては何ですが・・・時間がある時なら、我々も潜入ダイブに付き合っても良いですよ」


副会長の申し出。


「それは有り難いな・・・全国レベルのプロダイバーとの潜入ダイブ、か」


「私は全国レベルじゃ無いですよ?!まだレベルは36です!」


副会長が叫ぶ。

十分高いじゃないか。


「私は54レベル」


ぽそり、と書記が言う。

更に強い?!


「では、だんじょんぶ・・・同好会としての活動を認めます。名前に『ぶ』が入ってますが、ひらがななので良しとします」


副会長と書記が去っていく。


「ちなみに、全国大会は、80オーバーがごろごろ。100超えてる人もいるっす」


その情報は聞きたくなかった。

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