二章 7 『オレの能力! マジすか』
二章 7 『オレの能力! マジすか』
晴香と瞳姉に連れられ山に入り瞳姉の掛け声に合わせ突如として空間が訪れた。
「えっ? またなのかよ!」
しかし晴香と瞳姉は何故か平然としている。慣れているからなのだろうか?
「あぁ、ごめんごめんいってなかったね。これは私が作った空間だから」
はい? 瞳姉が作った空間だと……。そんなこともできるのか。
それでか。相変わらず晴香は普通に落ち着いている。
「正確に言ったら空間とはまた少し違うの。でも説明めんどくさいからはしょるわね」
いや、その辺オレとしてはちゃんとして欲しいんですけどね。まだよくわかってないし。
しかし瞳姉が作った空間ということは異世界のバケモノに襲われることはないんだろうという安心感がある。
また少し山の中を歩く。
「今から会うのはコッチの世界で唯一能力を見てくれるヤツだから。一人が好きで空間を一定間隔作ってそこに住んでる変わり者だけど」
変わり者ねぇ。オレの周りは変わった人間ばかりだと知ったばかりだし、ましては昨日今日で色々あったんだ。ある程度ならどんな人でも多分驚かないだろう。
ーー森の中に一軒の小屋があった。小さい時に何度か来ているがこんなところに小屋なんて無かったはずだ。
ウッドハウスのようだがなんかこう……一言で言うと趣味が悪いというかなんというか。まさに変わり者感が漂っている。
多分ここだろうな〜。
「ついたわよ〜」
やっぱりか。だろうなと思いましたよ。
晴香がなぜか分からないが少し苦い顔をしている。
晴香がこんな顔するなんてこれまた珍しいな。嫌な予感がするような……。
カランカラーン
呼び鈴を鳴らし返事を待つ。
「ほーい……どなた?」
うおっ! ビックリした! 返事をしたのは玄関の横にぶら下がっていたカラスの置物みたいなものだった。
「私よ私」
「んん? ……あぁ瞳か。開いてるし入って来ていいわよ」
ガチャッ
瞳姉、晴香に続いて家の中に入る。
小屋の中に入るとものすごい甘い匂いが充満していた。甘い匂い過ぎて逆に気持ち悪いレベルで匂いがキツイ。
晴香が苦い顔をしていたのはコレか?
奥の部屋に進んでいくと魔法陣のようなものが描かれた部屋があった。
その中心に椅子がありローブのようなものに身を包んだ誰かが大きな杖を持ってそこに座っていた。
「ようこそ私の隠れ家へ! 瞳久しぶりねぇ。そして……晴香ちゃーん!」
ローブを脱ぎ捨て姿を現したのはまさに魔法使いみたいな風貌をしたお姉さんだった。床から首元まではある長い杖を持ち分かりやすいとんがり帽をかぶっている美形なお姉さんだ。
お姉さんは晴香の元へ一目散に走っていき抱きついている。
「ちょっとイーアさん、会う度会う度に抱きつかないでくださいよぉ」
晴香が顔をしかめていたのは多分これが理由だろうなとすぐ悟る。なんせほっぺスリスリまでする勢いだ……なんか見る分にはいいなこれ。
てかオレほったらかしですか……。
「晴香ちゃんスリスリスリスリ……ってあれ? 見たことない子がいるけど、もしかしてキミが今日のメイン?」
「そうよ。晴香がそろそろ怒るからそのへんで止めといた方がいいかもよ。今日はイーアに咲都のステータスあらかた見てもらおうと思って」
そうだ、今日はそれで寝たい体を起こしてここまで来たんだった。決して魔女お姉さんによる晴香への一方的イチャイチャを堪能しにきたのではない。
「そうかそうか。まあ私が見れるのは適性ぐらいだからステータスなんて大げさなものじゃないけどね」
というかこの魔女お姉さんも綺麗な人だな。少し謎めいた美女感が漂っている不思議な雰囲気の女性だ。
なんて考えていると魔女お姉さんがこっちに向かって歩いて来た。
おぉおぉ近いですよ……魔女お姉さんの顔がすぐ近くにある。目合わせられねぇ。
「ふ〜ん……じゃあ自己紹介をしようか。私はイーアっていうの。甘いものと可愛いものが大好きな魔女ってとこかしら。よろしくね。でキミは?」
顔に軽く吐息がかかっている。落ち着けオレ……平常心平常心。
「あ、自己紹介どうも。オレは虹夜咲都って言います。十六歳、帰宅部のエースで昨日いきなり拒否権もなく異世界に巻き込まれた可哀想な人です」
何とか自己紹介をすませ一歩下がる。あの距離に綺麗な女の人がいてはオレの平常心が保てないのは明白だ。
「あぁ昨日のアレか。確か特級排除対象のシリウスが来たんでしょ? よく生きてたわね咲都くん」
確かに昨日といい今日といいよく生きてたよオレは。まあ昨日に関しては右腕吹っ飛ばされてぇ今日は横っ腹粉砕されたんですけどぉ……ほんとなんで生きてるんだオレ。
っと、また魔女お姉さんが近いてきた。顔がオレの耳のすぐ横なんですけどぉ。
「して咲都くん十六歳か。晴香と同い年なのね。歳上のお姉さんに興味……なぁい?」
おふぅ……耳に吐息がかかっておりますよお姉さん。こそばゆいのと男の子的なアレとで大変な事になってしまいそうだ。
フゥ〜フゥ〜
……わざとやってやがるなこの人……
「ねぇイーアさん? そろそろ咲都の能力測ってくれない? 咲都も楽しそうに顔赤くしてるんじゃないわよ……」
いやいや晴香さんや、勘違いですよ。この状況が楽しい訳ないじゃないか。ちょっと気持ち良かっただけです。
「あ〜ごめんごめん。晴香に怒られちゃった。じゃあそろそろ本題といきますか」
やっと話が進みそうだ。
お姉さんが魔法陣の中心の椅子を退けそこに立つ。
「ほら咲都くんもおいで」
言われたとおりにお姉さんのもとへ行く。
目の前まで行くとお姉さんは持っていた杖をぶん投げてオレの両手を持つ
えぇ……なんのための杖……。
「じゃあ動かないでね。手も離しちゃダメよ? ーーそれじゃあいっちょやりますか」
そうお姉さんが言うと魔法陣が光り出し七色の光の粒が辺りに浮かび出す。
ーーあぁなんか全身がムズムズしてきた。たちが悪いのが痒いムズムズじゃなく気持ちいいムズムズだということ。しかし動くなと言われている。
どうしようオレ。まさかお姉さんに両手を掴まれただけでムズムズしているのか……ついにオレはそこまで変態に……
ーーなんて嬉し恥ずかしい葛藤に一人で耐えていると魔法陣の光りが消え七色の光の粒がお姉さんのもとへ集まっていく。
「よし終わり。は〜んなるほどね。大体分かったわ」
ふぅ、やっと終わったのか。中々疲れたな……色んな意味で。
まさか能力見るだけでこんなムズムズするとは思いもしなかったしな。
「で咲都くん、ちょっとムズムズしなかった? わざとそういう風にしてみたの。気持ち良かった? お姉さんからのプレゼントッ」
フザケルナヨ! ……あのムズムズはわざとだったのか。
動かないでと言われていたからムズムズに必死になって耐えていたんだぞオレは! まあ確かに気持ち良かったですけどね!
と、体がピクピクしていたのを晴香と瞳姉に見られていたのだろう。晴香がコッチを蔑んだような目で見ていらっしゃる。瞳姉に関しては笑いを堪えているのが見てわかる。
オレだってなぁ! ……まあいいか。今は何を言っても今のオレは分が悪い。
「咲都はほんと根っからの変態さんね。でイーアさん、咲都のステータスはどんな感じだったの?」
「そうねぇ、結果から言うと普通ね普通。体力もまあ人並みかな。咲都くんってハーフよね? 魔力はハーフにしては多い方かな。魔法系統もちょっと水に特化してるぐらいかな」
「瞳姉、魔力とか魔法系統ってなに?」
「あぁ咲都にはまだ何も話してなかったね。魔法系統ってのは火、水、風、土、光、裂、爆の七つの属性のうちどれに向いてるかってことね。咲都場合それは今の話から水ってことね。で、魔力は魔法を使うにおいてどれだけ魔法を使える体力があるか…….ようはゲームで言うマジックポイントが一番わかりやすいかな?」
なるへそね。なんとなくだが分かった。
ようは普通なわけですねオレは。で属性は水にちょい特化、魔力がハーフにしては多いと。
なんかパッとしないなぁ。
こういうのは普通全属性対応でどれでも使える。魔力も半端じゃない量あってオレすげぇ! 咲都すごい! チートかよオレ! ってなるのが理想というか二次元の定番というか……。
現実は甘くないって事ですね。
「イーアさんにはオレが何のハーフかは分からないんですか?」
そう、オレはまだ異世界の何の血が流れているのかが分かっていない。
そろそろ分かってもいいと思うんだけどな〜チラッチラッ……
「なんか期待されてるみたいだけど私には分からないわねぇ。ていうかまだ分かってないんだ」
分からないのか。まあ仕方がないな。
晴香もそのうち分かるって言ってたしそのそのうちを待つか。
「それよりも瞳、気になることがあるからちょっときなさい」
瞳姉とイーアさんがコソコソとなにか話している。
女同士でコソコソ話すなんて……オレの彼女がいるかどうか瞳姉に聞いてるのか? ってそんな訳ないか。
「咲都は水か……どうなんだろう……」
晴香がボソッと言ったのが聞こえた。それはオレが微妙ってことなんだろうな。なんか悔しいな。
でもいいもんね。オレには再生能力があるもんねー。
どうやら瞳姉とイーアさんのコソコソ話は終わったらしい。ちょっと気にはなるが別に聞かないでもいいか。
「じゃあ咲都くん、晴香ちゃん、瞳、またね〜。次会った時は二人ともハグしてあげちゃうよ〜」
ーーこうしてイーアさんと別れ小屋を後にする。
また気がつくと音に景色は元通りになっていた。
携帯を見ると時間は六時前だった。おや?
「空間にいたのに時間進んでるんだけどなんでなんだ?」
「最初に言ったけど厳密に言うと空間とは違うのよ。だから時間も進むの」
そういうことか。というかそんな長い時間あそこにいたのか。
「咲都と晴香、この後三人で晩ごはんでも食べに行く?」
「いいけど一回お財布取りに帰るわ。後お母さんに晩ごはん要らないって言わなきゃだし」
「オレもいいけど同じ理由で一回帰るわ」
「はいよ。じゃあ二人の家の前で待ってるわ」
こうして晩ごはんを食べに行くことになった。
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