第254話 番外 子供達の鍛え方
子供というモノは走り回る。やたらと楽しげに、目標も無く延々と走り回るモノである。
そして、一眠りしただけで、あっという間に筋肉痛も何もかも治る世代だ。
更に言うと、猫のゴロゴロ音と言うのは、謎の超音波で、最新の骨折治療法として使用されている、筋肉痛なんかも治るらしい。具体的には通常の3倍速で治るとかなんとか。
つまりどんなことに成るかというと・・・・・・
平たく言うと、若いときにだけ出来る、勝手に出来上がるフィジカルモンスターシステムだ。
何時もの様に仕事中、不意に窓の向こうに落ちる巨大な影を見つけて、びくりとした。
「ん?!」
ギョッと目を剥き、窓の向こうに視線を合わせる。
小さな影が幾つも、それに続いて落ちてくる。
「って?!」
一緒に書類仕事をしていたカナデも驚いた様子で続いて叫ぶ。
「ここ二階!」
屋根からベランダもテラスもない、目測、高さ約5m程で真っすぐ地面だ。
窓を開けて捕まえる余裕もなく、そのまま地面に落下する、一歩遅れて窓を開けて、落下先を確認、ぬーさんの浅い足跡に続いて、がっつりと小さな足跡が2つ並んでいた。
犯人達はそのまま何事も無かったかのように、とんでもない速度で、楽しそうに走り続けていた。
「あれ、危ないから止めろって言うべきだろうか?」
庭にある障害物、数メートルは有る花壇や生け垣の上を、ひょいひょいと飛び跳ねて移動した挙げ句に、塀の壁を壁蹴りしながら登り、そのままバランスを崩す様子も無く、塀の頭頂部、細い足場を走って行くのを呆然と見送った。
子供の成長が著しいと言うか、身体能力が大人達より凄いことに成っていた。
「あそこまで見事だと、難しくありません?」
カナデも同意見な様子だ。
「何だか凄いですよね?」
灯にも相談したところ、先に知って居た様子で、ウンウンと肯かれた。
「今の所、怪我する様子も無いんですよね、限界点自体は自分達で分かってるというか、転びそうに成ると、ちゃんとぬーさんがフォローに入ってるんで、一生に居る限りはまあ良いかなあって」
教育ママである灯も納得済み。
「子供が自分で鍛えてる分には、後々のためにも良いんじゃ無いでしょうか?」
エリスが、寧ろもっとヤレという感じの肯定意見だ、こうなると下手に縛り付けるよりは、それぞれの自主性に任せて良いだろう。
「まあ良いか、自転車見たいに身体能力超えてるわけじゃ無いだろうし」
一定速度を超えると、下手な転倒は命に関わる。
「韋駄天真言付いてますけどね?」
灯がとんでもないことを言い出した。
「常に強化中?」
「はい」
「自力で?」
「この間、仏とか、お経、真言やら何やらって色々言ったじゃ無いですか、試しに教えてみたら、便利だからってあっという間に覚えまして」
あちゃーと言う調子で、それほど失敗したつもりも無い様子で解説してくれる。
「反動というか、筋肉痛は?」
会話の外で、子供達の足は止まっていない。
既に見つけてから結構な時間を走り回ったまま過ごしている。
自分だったら筋肉痛と疲労が抜けずに倒れている時間の方が長くなってしまう。
「筋肉痛と小さな怪我は自分達で薬師如来真言使ってある程度回復して、疲労分はぬーさんと一緒に昼寝と夜寝で一晩で全回復、昨日よりも今日、今日より明日って感じでどんどん速くなっていくから、もう関心しつつ見てますよ」
灯がお手上げと言った調子で、口の上では呆れつつ、どこか自慢げに語る、やんちゃが過ぎるのは困るが、活発に楽しげに遊んでいる分には問題は無いと言うことで結論が出たらしい。
「流石に、保護具、ヘルメットぐらいは着けさせような?」
頭のダメージは流石に怖いので、精一杯の譲歩だ。
「其れが一番ですかね?」
灯が苦笑いを浮かべていた。
「格好良いの作ってね?」
いつの間にかヒカリがどや顔で混ざってきた、見られていた自覚は有ったらしい。
その後ろで流石にバテたらしいぬーさんとイリスが木陰で休んでいる。
ヒカリも汗だくだが、まだまだ余裕が有りそうな、元気が余っている雰囲気がある。
「分かった分かった、ちゃんと着けろよ?」
そう言いつつ、ヒカリの頭を撫でる、ニシシーという感じの笑みを浮かべていた。
後日、驚異のパルクールに、義父上の所のウルザも混ざっていた、混ざれるんだアレ? という感じに感心する羽目と成った。
追伸
ぬーさんに真言は乗っていません、素でそれぐらいの能力値です。休んでいるのは体力的にと言うより、オーバーヒートの冷却のためです。
子供達は未だ写経の枚数少ないから強化率はそれほどでも無いのが救い。
因みにこの韋駄天真言の限界突破トレーニング、鍛える効率は素晴らしいのだけど、オーバーワークがエグいため、この時点の和尚だと残念ながらデスクワーク主体の訛りとお歳のため、この時点では1週間寝込むぐらいと成ります、疲労の回復速度と筋肉等の強化速度が上手く釣り合わないため、鍛えても無駄な感じです、世知辛い。
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