第228話 回復と依頼の達成
「やっと治った……」
寝台から起き上がって伸びをする、ぬーさんもそろそろ良いかな?と言った調子でボディプレスを止めてコチラの様子を興味なさそうに観察している。
結局自力でぬーさんを押し退けられる程度に回復するまで解放してくれなかったのだ、色々尊厳が大変な事になっていたのは察して頂けると思う。
烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)万歳。
因みに、他の患者の様子だが、寝込んでいる内にアカデさんとEXのチームが製薬系の諸々を済ませ。
灯たちが病人達の世話を済ませ。
猫達がこの地域のネズミを粗方食い尽くし。
クリスが獅子奮迅と言った様子で建物全体を掃除して。
本気で現場での自分の仕事はほぼ無く成っていた。
「いやあ、あなた方に依頼したかいが有りました、想像以上の成果です」
役人さんがニコニコと笑みを浮かべる。
前半は兎も角、実質的に後半は倒れたままだったので、自分自身は何もしていない感が凄いが、個人を褒められている訳では無く、複数形なので、全体評価として受ける分には特に問題は無いだろう。
「お役に立てたのなら何よりです」
当り障り無く賞賛を受け取る。
「実際の所、この薬、薬効としてはどれほどの成果が有りましたか?」
思わず聞く。
「まあ、貴方が直接担当したこの教会での病人の生存率が9割、その他の人員が担当する薬が届かなかった場所での生存率が3割、薬が届いた所での生存率が7割と言った所です、貴方が居るかいないかで数字が大分違う気もしますが、十分と言った所ですよ」
アカデさんはある程度外にも薬を回して居たらしい。
専門外だろうに、この役人さんの言葉には淀みが無い、よっぽどよく見て居るのだろう。
「更に言うと、貴方に最初に書かせた酢のレシピ、アレだけで治療に当たった数百人助かって居ますからね、今更疑う余地は有りません」
「其れは何よりです」
「後は、各地でこの薬の作り方が最適化されて数が揃えばこの騒ぎは終息と言った所でしょうか?」
其処までは判らないと言った様子で少し遠い目をする役人さん、何だかんだで駆け回って居るらしい。
「其れでは私達の仕事は?」
「そちらの方、アカデさんから薬の作り方と言うか、材料の増やし方と精製方と、その論文は受け取って居ますから、既に達成と言う事で問題無いですよ」
「其れなら安心しました」
ふぅ……
と、思わず安堵のため息を付いた。
「依頼料と追加の報酬はこの騒ぎが終えた後で届けますから」
役人さんはコレで会話は終わりとあっさり帰って行った。
頼まれた依頼自体は終わったと会話を終え、一安心して振り向くと不安気な表情をした面々が居た。
いや、不安気なのはリカとロニの2人だけ、サンはまあしょうがないかと言った様子で、嫁達である4人はどうするかは知って居ると言った自信満々な様子でこちらを見ていた。
「で、この後どうしますか?」
答えは知って居ると言った様子の灯が聞いて来る。
「依頼終わってるにしても、見捨てる訳に行かんのだろう?」
ピークアウトはしているが、患者は未だ結構居るのだ、此処で人手を纏めて引っこ抜く様な非道は出来ないだろう。
リカとロニはある意味露骨な安堵のため息を付きそうになって、慌てて堪えていた。
「まあ、予想通りです、和尚さんならそう言うでしょうね?」
灯が其れで良いと言った調子の上から口調で肯定してくれた。
「それじゃあ、作業を再開しましょうか」
やれやれと言った様子のアカデさんが諸々手当ての作業やら何やらの再開を指示するように手を叩く。
「全く人が好いんですから」
そんな事を言いながら、悪く無いと言った様子のエリスが炊き出しやら何やらの作業に戻る。
「良いんですか?」
サンが確認してくる、敬称を付けられると違和感が凄いと言う事で呼び捨てが安定した次第である。
「乗り掛かった舟ですから、此処から先タダ働きなのはもにょりますけどね?」
まさかの自分からのサービス残業である。タダ働きは嫌なんだけどなあと内心で呟きつつ、苦笑を浮かべた。
「分かりました、お互い大変ですね?」
色々察したと言った調子でサンも苦笑を浮かべた。
「そんな訳です」
自分だけなら仕事終わりと帰っただろうが、嫁が4人揃って此方が善人ムーブをかます事を前提と期待されてしまっては、折れない訳には行かないのだ。
後で届くと言われる追加報酬を期待しようか?
この追加報酬に関しては前回のアレのせいでバレバレなのだが、気がつかなかった事にして忘れて置こう。金額換算すると高いかも知れないけど、確実に面倒なのが問題だ。潰れかけの領地経営は罰ゲームに近い。
と言う事で、現状伝染病治療の最前線に復帰する羽目に成った。
結局、特効薬が有ろうとも其れを服用した瞬間に病気が消滅するファンタジー世界では無いので、諸々患者の流れが落ち着くまで約一か月程余計にかかった事を追記して置く、鼠を食い尽くして蚤の感染経路を潰そうと、飛沫感染も有るし、古い布団やら毛布やら古着なんかに残っていた瘡蓋(かさぶた)なんかに触れただけでも感染する為、更に地域事衛生状態をどうにかしなくては行かなかったのだ。
病院だけで全解決とは行かない物である。
既に冒険者の仕事でも無く、医者の仕事でも無く、その上の領主やら何やらの仕事になっていた気もする。
追伸
因みに、毎日のお勤め的な読経、般若心経と薬師如来系の真言の序に烏枢沙摩明王の真言でトイレ系の汚物浄化も発動して居る為、実は建物全体で衛生状態がかなり改善されていて、患者の生存率がかなり上がって居ます。其処を含めると倒れた甲斐は在ったり無かったり。
和尚が倒れたには病気以外の原因として心労分も有ります、新薬調合でどうしても間に合わない分が、自分の意志で見捨ててるみたいな妙な心境に成ってぐったりしてた感じです。
他の面々は其処まで考えていないので、相対的に強く見えたりする流れでした。知りすぎてるのも問題って奴です。
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