第168話 研究者の一日(133話 夜明かしの後)

前置きのご挨拶。

あけましておめでとうございます。

今年もよろしく願いします。

一寸遡って、ドラゴンの死体確保してウキウキで解体するアカデさんです。



 魔の森でガンダーラのチームに護衛してもらった結果、ブラッディベアと、小型だがドラゴンの死体が手に入った、夜明かしの際にあの3人には、私のみっともない体を見せてしまったが、特に後悔はしていない。

 今更勿体着ける様な立派な物では無いのだ。

 正直、散々動き回ったあの後にお風呂で汗を流せると言うのなら、そうでなくても間違い無く裸に成った事だろう。

 和尚さんに裸を見せたのは一寸予定外だったが、特に後悔は無い。

 裸を見たのはお互い様だし、中々立派な裸だったと思う。

 何気にまだ私が女だと認識してくれると言うのは嬉しかったりもした、まあ、内心で嬉しいだけで、表に出して喜ぶものでは無いが。

 そう見てくれるのなら少しぐらい手を出してくれても良かったのだけどと言う、謎の未練も沸いてきたりもするが、其処まで都合良くは行かないだろう。

 あの人、嫁はもう2人も居るのだし、私の様に産めない女を相手にする必要は無い筈だ。

 何だかんだで、今回は有意義なフィールドワークだったと思う、餌が有ったとはいえ、深部に居ると言われるドラゴンやブラッディベアを確保できたのは大きい、解剖して骨格や筋肉、内臓の配置図を調べるだけでも大仕事だ、ギルドからしっかり人手を借りて、じっくりと調べさせてもらおう。


 そんな訳で、ギルドの解体場でそれぞれを解剖して構造を調べる。 

 先ずはドラゴン、骨格は前回手に入れて居たが、鮮度が段違いだ、前回擦り減って潰れていた歯の結晶構造も確認できた、どうやら金属、カルシウムでは無く明らかに金属の結晶構造が並んでいる、この結晶構造は何処かで見たなあと思いながら、スケッチだけして置く。

 目玉の部分を調べると、透明な瞬膜(しゅんまく)が付いて居た、目玉を保護する構造だ、水中で生活する鰐(ワニ)にもあるが、果たしてこれは同じ意味か? 水中用なのか? 半水中型生物なのだろうか? 若しくは耐火構造?

 歯の構造はゆっくり噛み砕くのではなく、明らかに丸呑みの類だ、顎(あご)や首周辺の皮が引っ張るとビローンと伸びる。蛇と同じように丸呑みするのか?

 あごの骨が外れたりしないだろうか?あの骨では蛇の様に下あごが横に開く構造は無かった。縦に外れたら色々大発見で大笑いで論文に書いて大騒ぎにだろうと、変な事を考える。

 ・・・・軟骨で関節が増えて居て、二段階的に開くように成って居た、何だこの面白構造。

 ああ、前回のは軟骨だったから腐って落ちちゃってたのか、確かに組み立てた時に顎の安定が悪かったなと思い出す。

 うーん?

 軟骨?

 もしかして成体に成るとこの軟骨が正式に骨に成ったりする?

 いや、蛇系だと顎回りほぼ軟骨だから、うーん?

 蛇と同じような呼吸菅が大分前まで伸びて居る、丸呑み構造なら納得。

 ん?2本?何で?

 ガリガリと刃先に引っ掛る鱗を皮ごと剥がし、切り開いて辿って行くと、油をためて置く袋状の内臓を発見、冗談で言って居たのに本気で油を吐き出して着火できそうな体の構造をしている、新発見が多すぎて楽しくて笑えて来る。

 ほうほう、肺の横隔膜と独立した構造で別々に動かせると、之だけで一冊書けそうな。

 で、背中周りの羽の構造は?

 いや、何でこの構造で飛べるの?

 鳥だとしたら筋肉が足りない。

 関節がロックできる構造で、ああ、コレ軟骨とケンで固まってるのか、もう一回生きて動いてるのを確認したいけど、其れは出来ないから記憶頼りで。

 書きたいことが色々出て来る。時間がいくらあっても足りない。

「あの、もうそろそろ時間です・・」

「え? ああ、もうこんな時間?」

 ドラゴンの構造を解剖しながらスケッチして行ったところ、いつの間にやらギルドの営業時間が終わってしまっていた、そろそろ店仕舞いして帰りたいのだろう、手伝ってくれていた職員はちょっと不安気な目でこちらを見て来る。

「はい、ありがとうございました、今日は此処迄ですね」

「はい、お疲れ様でした」

 職員が先に帰ると、私だけが解体場に残された、因みに、私は現在この解体場の主扱いされている、宿代や家賃が勿体無いので、ギルドの一角を借りて巣を作って居るのだ。


 さてと、今夜の御飯はこの珍しいドラゴンの肉をいただきましょうか。


 肉の感触としては、鰐(ワニ)とか蜥蜴(トカゲ)か、爬虫類系の癖に肉が赤い、運動量多いのかな?

 肉を斬り分けて、先ずは味を付けずに鍋に油をひいて念入りに火を通して、少量だけ口に入れる。

 特に癖も無い、寧ろ美味しい方で、肉の方に油は少なめ、毒も無さそう。

 美味しく見えても変な毒持ちも居るので、こう言った物は慎重に食べるのがコツだ。

 毒が有ると、喉が反射的に吐き出そうとするし、独特の味と違和感を感じるので、其の感覚を大事にするのだ。

 こう言った初見の食材では、そう言った五感を使った毒の確認が大事に成る。

 尤も、毒見用オタマジャクシとエビの実験は通して居るので其処まで神経質になる必要も無いが、毒の作用が少し違う事も有るので結構気を遣うのだ。

 一口だけ食べて暫く待つ、遅延性と言う訳でも無いと・・・・

 安心してニヤリと笑みを浮かべる。

 それじゃあ、たっぷり食べよう。

 安心と同時に食欲が湧いて来た、今度は大きく切り分けて、塩を振って焼き始める。

 今夜は宴会だ。ちゃっかり準備していた酒も取り出す。

 分かり易いタイプの獣で美味しく食べられそうな時は結構付き合ってくれるのも居るのだが、初見で毒見を含めて従業員を巻き込むと結構怒られるので、一人でささやかに飲み始めた。


  内心ちょっと寂しい気もするけど、まあ、何時もの事なので気にしない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る