第77話 都合の良い協力者

先の2話の前です。順番がたがたですいません。



 エリスが引き付けを起こしそうな様子で震えていたので、引き寄せて膝の上に乗せて抱きしめ、落ち着くように背中を撫でる。


 灯も心得ていますという様子で一緒にエリスの頭を撫でている。


「その娘は?」


 落ち着きを取り戻したらしいアカデさんが、察した様子で聞いて来る。


「ゴブリンの母体にされそうな処を私が助けました、それ以来懐いてくれています。」


 この場にはアカデさんとギルマスしか居ないので話しても大丈夫だろう。


「そう、助かったんですね・・・」


 眩しい物を見る様子でエリスを見る。


「助かる人が増えるのなら、私たちができる範囲なら協力しますよ。」


「さっきの理屈、浄化で助けられるのなら此奴はうってつけだ、教会の人間じゃないが、強力な浄化が使える、冒険者としての戦闘力も折り紙付きだ、次回ゴブリンの殲滅任務があれば真っ先にこいつを入れる、それで実際に母体に成って居るものを助けられると実証出来ればギルド側からも証明書を書いてやろう。それで良いか?」


 ギルマスが今後の方針を提案する。


「渡りに船です、是非、お願いします。」


 アカデさんがこちらに向かって来る。


 立ち上がる動きをすると、察した様子でエリスが立ち上がって膝から降りる、どうやら落ち着いたようだ。


「よろしくお願いします。」


 立ち上がって握手を交わした。




「そして、あの絵の通りに組み立てるとこんな感じですね。」


 アカデさんが灯のスケッチを頼りに全身骨格を復元する、概ねあの時に見たままの形になった。


「ドラゴンとしての死因はこの辺ですかね?頭蓋骨が陥没しています、他の部分は再生した様子はありませんが、此処だけ破片の部分が少しだけですが再生したような跡があります。」


 頭蓋骨に罅が入っている様子で拉げていた。接合部とは違う様子だ。


「他の部分の傷は細い棒で死んだ後に殴ったような傷ですね。骨蛭を討伐した時のものと言う事で?」


「コレですね?」


 いつも持っている金属製の方の槍を見せる。アカデさんが納得した様子で頷く。


「頭は丸太や棍棒と行ったところですね。」


「前回のゴブリン殲滅戦でキングが持っていたのが棍棒と丸太だったって報告が合った。その線だろう。


 だが、このサイズのドラゴンがキングとはいえゴブリンに負けるのか。」


 復元されたのは体長5mで体高2m程。前回の丸太キングが体高3mほどだから無理な線ではないだろう。


「因みに前回のキング2匹はどうせだから氷室で凍結魔法使って保管してある、折角だから確認しよう。」


 ギルマスが提案してきた、どうやらアカデさんが来るのを心待ちにしていたらしい。


「是非。」


 アカデさんも乗り気の様だ。




「で、この二体がこの和尚が一人で前回討伐して来たキングだ。」


 氷室から運び出された凍り付いている二体のキングの死体に、興奮した様子のアカデさんが駆け寄る、


「溶ける前に触るなよ?皮がへばり付いて剥げるぞ?」


 ギルマスが脅しのような警告を発する、どうやらかなりの低温に成って居るらしい。


 アカデさんがびくりと伸ばしかけた手を引っ込めた。


「こっちの小さいのが良く報告にある通常のキングですよね?」


「ああ。そっちが通常だ・・・」


 ギルマスがそうなるよなあと言う様子で肯定する。


 最初に居た物、体高2m程のこん棒を持って居た物だ。


「となるとこっちの大きいのはキングと言うには大きくないですか?」


「そうなんだ、通常のキングより明らかにデカイ、別種と言っても良い位だ。」


 後から出て来た丸太持ちのキングだ。体高3m程ある。


「顔つき同じだから同種では?」


 取り合えず聞いてみる。体格と角と牙が大型化しているがまあ許容範囲内だ、大型小型のヒラタクワガタやノコギリクワガタの大あごの形状の違い程度だと思えばそんなものだ。


「同じゴブリンだろうが、クラスが違うな、変異種としても極端すぎる。」


 確かに1.5倍は少し極端だが、通常の小型種とキングで既に2倍である。許容範囲で行ける行ける。


「伝説と言うか、噂話の域の筈のチャンピオンで良いのでは?」


「そっちで報告すると明らかに一騒ぎに成るからな。未だ中央にそのドラゴンも報告入れていない。」


「勿体無い・・・これだけでも追加予算取れますよ?」


「こいつ、和尚を下手に目立たせると中央と教会にかっさらわれる可能性が有る、目立たせたくないから未だに下級冒険者のままだ。」


「昇級試験受けさせてないんですか?」


「こっちの一存で中級に上げる事は出来る程度に実績は付いてる、上級も推薦は出せる、だがランクアップさせると上に書類で把握されるし、上級の昇級試験は中央の王都だからな、王都の中央で強制的に召し上げられるとか言われると面倒にも程が有る。」


「こっちで飼い殺しするのもどうかと・・・」


「やかましい、家の婿殿を囲って何が悪い。」


「あ、何でも無いです。」


 察したらしい。アカデさんが引き下がった。


「何だか神託使って援護する準備はあるらしいですよ?」


 一応言ってみる。


「中央の利権争いに利用される落ちが見えるから未だ止めとけ。」


 予想通り止められた、この世界でも其処等は碌な物では無いらしい。エリスもそれはやめてほしいと言う様子で顔をフルフルと横に振りながら腕にしがみついていた。


 自分自身それは止めて置きたいので、意見が揃って居るのは良い事だと思う。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る