【完結】漫画家になるぞ

宝希☆/無空★むあき☆なお/みさと★なり

第1話 35年前の田舎

私は4才の頃から漫画家になりたかった。でも描き方を知らなかった。今でこそアニメイトで画材をそろえれば、その当時の漫画を描く道具がそろう。今の作法だとタブレットかPC(イラストを描くソフトに写真加工ソフト)が必要なのだろう。そんなこんなで今は何処に道具を買いに行ったら良いかわかっている。だが、35年前の田舎はそうではなかった。

画用紙がケント紙なのかと問答した田舎のスーパーマーケット。ペンは中学校入学祝いに貰った紺色のインクの万年筆で良いかと挑んで居た。但し『描き方』がわかっていなかったのだ。まず絵が描けること。人物も花も背景もだ。そしてお話を展開して書き上げる事。が、知的な技を知らない私にすら欠けていた。画用紙に描いては消して描いては消したヒロインの顔はペン入れが出来ないくらい、画用紙をザラザラにしていた。恐らくペン入れをしていたら、インクが滲んでぐちゃぐちゃになっていただろうと想われる。そんなぐちゃぐちゃの紙に描かれた絵が愛しい私は、ペン入れをせずに大切に持っていた。キャラクターデザインの前段階のラフですら、愛しくて捨てられなかった。また、ある向きだけの顔のドアップが描けたが、それ以外は描けなかったので、普通の漫画の様に描けないなと想っていた。そんな私もcobaltから出てる『漫画の描き方入門』に出会い、お話を展開してネーム(発生する全ての日本語ほか言語?)を作り、絵コンテをきって、完成図のイメージを紙に何度も何度も吐き出して決めるという事を知った。勿論、嫌いなデッサンを練習して描けるポーズを数多く習得せねばなるまいと、脳裏にすら描けないポーズにイライラしていた。だいたい、桜の木をどの様に描けば良いのかすらわからなかった。生を見ても写真を見てもわからなかった。季節の植物の勉強ができていなかった。木々の見分けがつかなかった。教室の描き方もわからなかった。机を沢山どころか1つも描けなかった。遠近法同じサイズの何おもも描けなかった。集合写真が描けなかった。どうやって練習すれば良いかはわかっていたけれど。嫌いなデッサンを積みかさねばならないと知っていた。だけど母のカウンセリーをしている私には時間が絶望的になかった。モチベーション向上の為に、文通募集葉書投稿用葉書に、描けるポーズを描いて、ペン入れした投稿用葉書のイラストにスクリーントーンを貼ることも難しかった。スクリーントーンナイフの切れ味が悪いのと、粘着力が悪かったからだ。ベタ入れもわかってなかった。黒髪の艶の入れ方どころか、ベタフラッシュ効果どころか、真ベタも塗れなかった。まさに、 しっちゃかめっちゃかである。それに加えて不眠症対策と勘違いして飼っている忠犬達のお世話がろくに出来てない。愛犬日記を描く権利も剥奪されたし。詰まるところ今はまだ絵が描けない。仕方がないので忠犬達の最後を看取ってから、頑張って絵を描けることを目標にするところから始める。




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