サバサバクエスト

ゆにろく

第1話 魔王を倒せ!

◆黒木暗子◆


「え?」


私は目を覚まし、体を起こす。

周り見渡せば一面の砂。

砂漠。


「起きた? 暗子」


カノは私を覗き込むようにして立っていた。


「……カノ?」


疑問系になったのには訳がある。

カノの服装がいつもと違う。

露出度は相変わらず高いのだが、ヒラヒラとした布が付いていて……。


「踊り子……?」


そんな衣装だった。


「そう! 私は踊り子のカノ」


いつから?

カノは元々踊り子だったのかしら……?

いや、悪魔だしそれはないと思う。


「そして、あなたは魔法使いの黒木暗子!」


「魔法……使い?」


改めて自分の服装を見ると、手元には杖があるし、ローブのような物を着ていた。


「……ま、魔法使いじゃなくて魔術使いじゃないかしら?」


「どうでもいいよ!」


「……そうかもしれないわね」


カノの言うとおり、今の状況に比べれば些細なことだ。


「……ここはどこなの……かしら?」


「ここは砂漠だよ! みてわかるでしょ?」


「そ、それはそうね」


確かに砂漠だ。


「暗子。 私と一緒に魔王を倒そう!」


肩をガシッと捕まれた。


「えぇ……」


魔王?


「魔王はとにかく悪いやつなんだ! 倒さなきゃいけない!」


「悪いやつなのね」


「一緒に倒そう!」


カノは私の手を取りそういった。


「そう言われても……」


「嫌?」


カノは悲しそうな顔をして私の顔を覗き込む。


「……わ、わかったわ。 やりましょう」


なんだかよくわからないけれど、カノが困っているなら助けるのが友達というものだ。

それに、カノの頼みは基本的に聞いてあげたい。


「やったー!!」


「で、魔王というのはどこにいるの?」


「魔王城!!」


「……だいぶ、テンプレね」


「魔王城はここ!」


カノは懐から地図を出し、はしっこの方にある城を指差した。

魔王城と大きく書いてあるので間違いない。


「で、今はここ!」


カノは地図の中心あたりにある砂漠を指差した。


「……と、徒歩?」


「うん!」


「……どのくらいの……距離?」


「50km」


ファンタジーのような世界なのに、出てきたのはやけに現実的で、歩くには残酷な数値であった。


「……無理……じゃないかしら」


「私達ならできるよ!」


「……」


「ね?」


「……がんばるわ」


カノにそう言われるとなんとなく大丈夫な気がしてきた。


「よおーし! いくぞぉー」


カノは歩き始める。


──ザザッ。


「えっ。 なに?!」


「暗子!! 魔物だ! 構えて!」


目の前に手と足が生えたサボテンがいきなり現れた。

サボテンには目が付いており、こっちをじーっと見ていた。

……不気味。


「暗子! 攻撃して!!」


「どうすれば……」


「なんか魔法を唱えて!」


「燃えよ、地を焦がせ。 燃え──」


「詠唱なんかいらないよ!」


「そうなのね。 『炎塊ファイヤーボール』!」


唱えながら杖を振るうと炎の弾が出現しその弾はサボテンに向かって飛び、炸裂した。


「ナイス! 暗子!! よしっ! 次は私ッ!!」


「待って!」


カノはサボテンに近づこうとしたので、引き留めた。


「どうしたの暗子!?」


「か、カノ。 どうやって攻撃するつもり?」


「えっ。 蹴ろうかなって」


「ダメよ。 サボテンには棘があるわ」


「……確かに」


あんな大きなサボテンに素手で攻撃すれば棘が刺さってしまう。

考えるだけで痛い。

カノはススっと私の近くまで戻ってきた。

そして、サボテンが動く。

サボテンに殴られた。


「いたっ」


「ダイジョブ?! 暗子!!!」


「えぇ」


サボテンの腕はごく普通の人間の腕だった。

肩辺りを殴られたので痛いが、棘が刺さるとかそういうのはなかった。


「……自分がサボテンだというのを理解してないのかしら」


サボテンは殴るとススっと元の位置に戻る。


「暗子、また魔法で攻撃するんだ!!」


「えっ、あ。 そうね。 『炎塊ファイヤーボール』」


炎は飛んで行き、サボテンにぶつかり、サボテンは弾け飛ぶようにして消えた。

……1つ分かったことがある。


「ターン制……なのね……」


テレレーン!


「……なんの音かしら」


「レベルアップだよ! やったね」


確かになんとなく力が湧いたような気がする。


「この調子で敵を倒しながら魔王城にいこー!!」


「……おー」

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