第143話

「あ、あのこんなことお伺いするのは失礼かと思いますが、ほんとうに予算が数十億ラルもあるのでしょうか?」


 まあ、そうだよな。

 言ってる俺も言葉だけとか胡散臭いと思うわ。


 しかしナセルリナさん、商売絡むとぐいぐいくるな。

 さっきまで言いくるめられておどおどしてたのとは別人だね。

 目付き変わってから、あの男ずーっと無視されてるしな。


「もちろんですよ。ですがたしかに口頭のみでは信用には足らないですね。わかりました、今度はあなたに私達を審査してもらうとしましょう」


 百聞は一見にしかずって言うしな。

 見てもらったほうが早いだろ


「エチゴラさんとナセルリナさんを私達の村に招待させていただきます。そして私達の村をその目で見ていただいた上で、私達にご協力いただけるか再度お伺いさせていただきます」


「ヒダリさま達の村を見て判断しろと?」


「そうですね。いくら叔父であり会頭でもあるエチゴラさんからの命令とはいえ、やる気のでない場所でやる気のない仕事をしてもらうのは、私達にとってもナセルリナさんにとっても良いことではないですからね」


 つまらんと思いながら仕事してもらうのもねぇ。

 しかも上司の命令で拒否権ない仕事とか、なおさらね。


「わかりました、そのお話お受けさせていただきます」


「おい、無視するな。ナセルリナ、こんな胡散臭いやつの言うことなんか聞くなよ!」


「ごめんね、ドラヤナン。心配してくれるのは嬉しいけど、私行ってみる」


 いやナセルリナさん、多分それは違うような……

 ほらドラヤナンさんだっけ?

 なんか悲しそうな顔になってるし。


「お前みたいな女は、この街がお似合いなんだよ!」


「うん、わかってるよ。私にどこまでできるかわからない、けどやってみる!」


 ナセルリナさんは素直で鈍感。

 ドラヤナンさんは素直に気持ちを伝えられない。

 この二人全然噛み合ってないよな?


「ドラヤナン、小さいときからいつもいつも話を聞いてくれてありがとう」


 幼馴染みだったのかよ。

 もしかしてドラヤナンさん、昔からナセルリナさんに可愛くないとか男みたいだとか連呼してたんじゃないのか?

 そしてナセルリナさんは素直にそれを受け止めて、ドラヤナンさんからは女性だと見られてないと思ってるんじゃ……


「でもドラヤナンに迷惑ばかりかけてられないから、これからは私一人で頑張ってみる」


「俺がいないところで、お前にそんなことできるわけないだろ!」


 ドラヤナンさん、もう少し素直になろうか。

 その物言いじゃ、ナセルリナさんには一生思いは伝わらないと思うんだが。


「そうだよね。いつまでもドラヤナンが、側にいてくれるわけじゃないもんね」


 ナセルリナさん違うよ、そうじゃないんだ!

 てか、ドラヤナンさん本気でここで気持ち伝えないと!


「だから俺の」


「ドラヤナン、今までありがとう! 離ればなれになっちゃうけど、これからもドラヤナンは私の一番の友達だよ!」


 おあああああああ。

 告白しようとしたら、話遮られた上に友達宣言かよ。

 ドラヤナンさんあまりの事に固まってるぞ。

 今までの言動から考えて、ドラヤナンさんの自業自得の積み重ねなんだろうけどなぁ。


「ヒダリさま!」


「は、はい!」


「会頭の所へご案内します」


「よろしくお願いいたします」


 いきなり仕事モードかよ。

 ドラヤナンさんどーすんだよ。

 天然鈍感怖ええよ!

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