第56話

 ……激闘だった。

 艶かしい姿で眠る妻たちを置いて外に出る。

 いつの間にか妻が増える話になっていた。

 ナディもカシュタンテも魅力的な女性だ。

 後悔はない。


「なかなか順調のようですね、我が主」


 朝一からうるさいよ。


「順調に奥方さまが増え、我が主のこれからも安泰だということですよ」


「なあルド。好かれるのも好意を寄せられるのも嬉しいんだが、なんというか急過ぎないか?」


「急とは?」


「惚れらるれるのも、そこから先に進むのもいきなり過ぎてな。さすがにコレが普通とも思えん」


「ふむ、これは予想なのですが。一つは主の強さが原因かと」


 強さねぇ。


「長い間、自分達より強い男性がいなかった所に、自分達をはるかに凌駕する強さを見せつける男性が現れた。その事に対する未体験の衝撃ではないでしょうか」


「なるほど」


 強烈な吊り橋効果みたいなもんか?


「もう一つが種の保存に対する本能ですね」


「どういうことだ?」


「主の奥方様達はみな御子様ができづらい長寿種の方々です。しかもそれなりに長い時間を生きられている方々が多い。なので御子様を身籠らせてくれる力をもつ主を、本能的に求めてしまうのではないでしょうか」


 なるほどね、本能的な勘もあるのかね。


「そういう話もあるのかも知れんが、惚れてもらってごちゃごちゃいうのは野暮ってやつだな」


「そうですね。私のは所詮はただの予想です。奥方様達の本当のところは奥方様それぞれにしかわかりません」


「その通りだな。そんなことより、本来なら出逢えなかった女性達に出逢えたことに感謝するべきか」


「それでよろしいかと」


「だな。一緒にいてくれる女性達を大切にする為にこれからも頑張りますか」


「それでですね我が主、報告があります」


「なんだ?」


「今の会話が奥方様達につつぬけです」


「主様!」


 カシュタンテが飛んできた。


「ヒダリ殿!」


 ナディも飛んできた。


 次々と妻たちが物理的に飛んでくる。

 肉体強化ありがとう!


 そしてもといた空間へ引きずり込まれる。


「我が主、頑張ってくださいね」


 うるせーよ。




 背中にナディが引っ付いている。

 なんだろうね、女王さまがものすごい甘えたがりなんだが。


「ヒダリ殿。ヒダリ殿達は何故、あの場にいたのだ?」


 横でカシュタンテも頷いている。


「ああ、あれな。ランプ草ってのがこの世界にはあるだろ?」


「灯りに使うあれか」


「そうそう、あれ。あれをめずらしがってたら、群生してる所があるってレイラさんが教えてくれてな」


「私がヒダリ様達を案内していたの」


「それでランプ草を見てる時に、警戒網に色々引っかかってきたからな」


 光る花が大量に咲いている景色は中々幻想的だった。

 ああいう景色を色々探してみるのもいいかもしれないな。


「折角のいい景色を潰されちゃもったいないと思って殴りに行ったら、ナディ達が変態に襲われそうになってたってとこだな」


「なるほど。偶然とはいえ、凶壁に感謝せねばな」


 んで、ナディはいつまで背中に乗ってるんだろな。


「ねえねえ、ナディさんそろそろボクと変わってよ」


 巴とキョウが横で順番待ちしてるのもどうなんだろね。


「俺の背中は遊園地のアトラクションか」


「あはは。10分1ラルくらい?」


「それはなんでも長いだろ。3分1ラルくらいじゃね?」


「じゃあ今度からそれで」


「え?」


「左の字の背中、3分1ラル」


 え?

 巴さんなに言っちゃってるの。


「トモエよくやった! これでヒダリ殿の背中に乗り放題だ」


 乗り放題って。

 俺は公共交通機関かよ。


「トモエさん、すばらしいです。これで私もヒダリ様の背中に」


 なに、レイラちょっと頬染めてるの?


「1ラルで私もサシチ様の背中に乗れるのか」


 セフィ、そんなに乗りたかったの?


「1ラル」


 いや、カシュタンテ。

 顔にグリグリしないでくれるかな。

 口はお金いれる所じゃないよ。


「ご主人様、ご主人様」


 なんだよリシャル。


「はい、1ラル」


 とりあえずリシャルは殴っておいた。

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