第49話

「基本的には講義スケジュールを確認して、自分の好きな講義に自由に参加するのがデルバレバのスタイルになります、あなた」


 レイラさん。

 艶々ですね。

 そしてその呼び方は確定なんでしょうか。

 市長が男と腕組んで歩いてるだけでも注目の的なのに、その呼び方のせいでさらに注目浴びてるんですが。


「どうかしましまたか?」


「いや、えらい注目を浴びてるなぁと」


「気にする必要はありませんわ、あなた」


 いや、スゲー気になりますよ。

 なんかレイラさん、あの凶壁がとか言われてますよ。

 しかも驚愕の視線の他に、憐れみの視線が混じってるんですが。


「ねえねえ、左の字これって大学みたいなもんかな」


 そんな感じはするよな。

 あと両腕がレイラさんとキョウで塞がってるからって、ずーっと背中にしがみついてるのはどうなんだろうな巴。


「試験等は?」


「ほぼありませんね。聴きたい講義に参加して必要な情報や内容を自分で持ち帰る。一度入学してしまえば毎月の学費を納めている限りは滞在自由ですし、学園自体も明確な卒業というものがありません」


 ふーん、好きなときに来て好きなときに学べるってのはいいね。

 学費も学費という名の税金みたいなもんか。


「それでどんな講義を受けるつもりですか?」


「とりあえずは天文学とか気象に関する講義かな? その辺の基礎的な部分が知りたい」


「それなら最初はチキュウ出身の方むけの、この世界の基礎的な部分を教える講義がよろしいかと」


 お、助かるね。

 あの屋敷にはその辺の資料が少なかったからな。


「じゃあ俺はレイラさんが言っていた講義に行ってみる。みんなはどうする?」


「主、私は図書館にいってみます」


「僕はその辺のブラブラしてるよ」


「旦那さま私もブラブラしてますね」


「私は鍛練場の方に」


「ボク達三人は左の字と一緒にいくよ」


「私は引き継ぎのための仕事にいきますね、あなた」



 ここが講義の講堂か?


「あ、チョコ太さんだ」


 巴が知り合いを見つけたようだ。


「おーい、チョコ太さーん」


 2m近い背丈の猫耳と尻尾のある男性が振り向いた。

 チョコ太???


「佐七さん、言いたいことはわかります、わかりますがおさえてください」


 いやだって、チョコ太て。

 しかも猫みたいな耳と尻尾だよ。

 突っ込むところしかないだろ。

 ゴツイおっさんの猫耳とか需要あんのかよ……


「おお、巴じゃねーか。無事たったのか」


「うん、ルルとキョウも一緒だよ」


「そうか、みんな無事だったか。なんか闇属性連中が三人は行方不明だって言ってたから心配してたんだ」


「うん、何とか大丈夫だったよ」


「そうかそうか、それで後ろのやつは?」


 スゲーにらまれた。

 にらまれてるんだけど、耳と尻尾が気になって全然気にならねぇ。


「えっとねボク達の旦那さま」


 巴さん、説明はしょりすぎじゃないでしょうか?

 おっさんに笑顔で肩つかまれてるんですが。

 耳がピクピク可愛く動くのやめてください。


「ほう、どういうことか説明してもらおうか」


 嫉妬というよりは純粋に心配してる感じだな。

 気のいいおっさんみたいな人なのかね。

 尻尾をゆらゆらさせるなよ、気が散るだろ。


「巴、きちんと話さないと。お久しぶりですチョコ太さん」


「おう、久しぶりだなキョウ。これはどういうことなんだ?そしてこいつは誰なんだ?」


「無属性で面白い人がいて、良く一緒に遊んでいたって話覚えてますか?」


「おう、なんでも無属性の癖にかなりの手練れって話だったよな」


「その方がこちらの佐七さんです」


「ほう、そいつがね」


「それでですね、さっきの巴の話なのですが。チョコ太さんがさっき言っていた闇属性の一部の方々に襲われまして、寸でのところで助けてくれたのが佐七さんだったんです」


「なるほどな。それでどうして旦那さまなんだ?」


 だよな。

 俺でもそう思うは。


「えーと、それはですね。チョコ太さんも女神さまのところで修行みたいなことされました?」


「ああ」


「あそこにいる間は各種の欲求が押さえられていましたよね?」


「そうなのか?」


「そうなんですよ。だからあそこにいる間は眠くないし、お腹も減らないし

 、あとはゴニョゴニョ」


 キョウが顔を赤らめる。


「それでですね、あそこから外に出ると、拘束されていた時間が長いほど欲求がブーストされてしまうんです」


「なるほどな、思い当たる節はある。だがそれがどうして旦那さまなんだ?」


 ルルに確認か。

 たしかに一番言い訳が下手そうではあるよな。 


「エーとデスネ。ワタシたちは、それぞれ彼のことを想ってイタようデしテ、ソノ想いがブーストされて、再開したソノ夜にデスネ」


 ルル達三人が真っ赤になっていく。


「彼のベッドにオシカケましテですネ」


 なんだろうね、これ。


「ああ、すまん。わかったからもうそれ以上は勘弁してくれ」


 勘弁してほしいのは俺の方だよ。

 講義受ける前に悶絶して倒れそうなんだが、おっさんどう責任とってくれんだよ。

 猫耳と尻尾引っこ抜くぞ。

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