第45話 入試の後に

 「んで、これはどういうことなんだ。案内人さん」


 入学初日の施設案内で武器をもった連中がいきなり押し掛けてくるとか、異世界の学園はなに考えてるんだ?


「申し訳ありません」


「いや、いきなり謝られても。事情を説明してもらえませんか?」


「それがですね」


 なんだろうね、なんか気まずそうだ。


「この学園の伝統みたいなもので。新入生の力をみるというか自分たちの力を誇示するというか……」


 マジかー。

 ホントにそんなことやってるのか。

 恥ずかしくね?


「趣旨は理解しましたが、それでこの始末はどうされるのですか?」


「幸い死者は出ていませんし、街の被害も軽微ですので。あとはこちらで何とかします」


「いえ、そちらの被害はどうでもよくてですね。この件に関してそちらはどう始末をつけるのかと聞いているのですが」


「この件とは?」


 はあ、本気でいってるのか?


「えーと、小さいとはいえ一国の領主に刃をむけたのですが。それがどういう意味を持つのか、わかっていますか?」


「そ、それは」


「あなたの国では客人で来た他国の王族や領主に、刃を向けることが許されていますか?」


「いえ、ゆるされていません」


「では、そのゆるされないことをやった人はどうなりますか?」


 顔色が悪くなっていくな。

 うん、そうだよな。

 かなりまずいことをやらかしてるよな。


「重い罰を与えられるかと思います」


 思いますって、頭の中お花畑かよ。

 自国の国民が客人で来ている他国の領主に刃物だしたら、大問題だろが。


「まあ、死罪でも文句は言えませんよね」


「そんな」


「そんなって。そもそも武器をもって相手に対峙した時点で自分が殺されたとしても文句はいえませんよね?」


「それは……」


「はあ、覚悟もないのに武器持ち出して、自分の命が危なくなったら、言い訳か?」


「そんな、学園のルールでは」


「あのな、学園のルールなんて知らねーんだよ。俺はそもそもそのルールの説明も受けていない。何の説明もされずに刃物むけられたらあんたはどう思う?」


「殺されるとか乱暴されると思います」


「だよな? んでおまえらはそれをやったんだよ。他国の領主に」


「……」


「それを踏まえた上で、どう始末をつけるのかと聞いている」


「特になにもしません」


 なんか現れた。


「あんたは?」


「運営委員長のエーラ・デルバレバともうします」


 フィールドを厚く張ってるねぇ。

 破られない防御があると思っての強気発言か。


「こちらに特に落ち度があったと思えませんので」


 んー、めんどくさいな。


「お前の首でいいや」


 顔面アイアンクロー。


「な」


 お、驚いたみたいだね。

 この学園にいる連中は、あのフィールドがあるから慢心してるのかね?


「それでは」


 案内人さんは……駄目だな。

 叩きつけられたデルバレバさんを見て呆然としている。

 しょうがない、自分たちで勝手に歩くか。


「案内人さん、あとは勝手に歩きますので。案内はここまでで」


「あ、え」


「では、短い間でしたが案内ありがとうございました」




「ご主人さま。どこに行けばいいのか、わかってるの?」


「全くわからん」


「どうするの?」


「適当にブラブラするさ。宿も店も金も時間もあるし大丈夫だろ」


「そうだね、でも時間はあんまりないかもね」


「どういうことだ?」


「聞くより見た方が早いかな、ほらあっち」


 なんだ?


「旦那さま」


「サシチ様」


「左の字」


「セブン」


「佐七さん」


 なんでそんな顔になってるの?

 ハアハア言ってるし。

 今のやり取りに興奮するところあったか?


「ご主人さまの戦闘見てて、我慢できなくなったみたいだよ」


 意味がわからないんですが。

 俺の妻たちは変態の集まりか?


「とりあえず、がんばってくださいご主人さま」

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