♥️第25話 クリスとセフィと

 これが異世界の町か。


「本当に久しぶりの人里ですね。何年ぶりか分からないくらいですよ」


「そうじゃな。封印されてる前となると何年前じゃ?」


「あちらとこちらの時間の流れが違いすぎていまいち分かりませんね。グラセルフさんの言っていた国の名前も聞いたことがなかったですし」


「カシュタンテを知らないのですか?」


「ええ、なにせガンドラルにいたのが遥か昔の話ですから」


「皆様はガンドラルという国からいらっしゃったのですか?」


「?」


「あまり聞いたことがない国の名前ですね」


 どういうことだ?

 この世界をガンドラルというんじゃないのか?


「おい、ルド」


「我が主よ、なんとなく予想はできます。我らが封印されたと同時にガンドラルという名前も消されたのでしょう。まあ、世界を破壊し尽くした邪神と同じ名前にしておくわけにもいかなかったのかと」


 あー、そんな感じかもな。

 自分の住んでる世界と邪神が同じ名前とか、復興のどたばたに合わせてなかったことにしたのかもな。


 んー

 建物は木造や石造りばかりだな。

 あんなモビル◯ーツみたいな機体があるわりには、何というか普通だな。


 まあ、魔法なんてものがあるからな。

 あえて木造や石造りなのかもな。


「サシチ様、どうされましたか?」


「いや、なんでもないですよ」


「では宿の方にまいりましょうか」


 今なら引き返せる!


「行きましょう! ご主人さま。僕久しぶりに体に時間が流れているせいなのか、お腹がすいてお腹がすいて」


 リシャルだまってろよ、ほんと。

 てか、おまえら。

 さっきから俺の話の邪魔するなよ。


「ここの宿はどうじゃ?」


 だから先にいくなよ。

 1人一泊1000ラルねぇ。

 高いのか安いのかわからんな。


「ではここにしましょうか」


 グラセルフさんがあっさり決めたってことは、1ラル10円くらいで10000円くらいな感じか?


 んー、異世界来てまで円の価値観がものさしか。

 ものの価値観つかみやすいし、今はしょうがないか。

 早めにこっちの通貨の価値観、身に付けんとな。


「部屋は1人一部屋で。それとすぐに夕食の時間だそうです」


「わかりました。グラセルフさんありがとうございます」


「いえ、何度も申していますように礼など不要です」


「ご主人さまー、早く御飯に行こう」


「わかったよ、部屋に荷物おいたら飯にしよう」


 旨かった、

 久しぶりの食事は本当に旨かった。


 300年ぶりに満たされた食欲。

 満足感が凄まじい。

 明日の朝食も楽しみだ。


 そしてこの風呂だ!

 宿に大浴場のようなものがついていて、早速使わせてもらっている。

 300年ぶりの風呂!


「ぁあぁあぁ」


 体から300年分の疲労が抜けていくようだ。

 あー最高!




 最高の食事と風呂、幸せ気分でベッドにダイブ。

 ああ、幸せ。


 ん?

 ノック?

 アスクリスさんとグラセルフさん?


 ……。

 パジャマというには扇情的な服装ですね。

 

 わかったよ。

 もうね我慢しませんよ。


 本音ではこの二人のこと結構気に入っていたんだよ。

 だからあのポンコツ4人衆に流されたふりして、強く拒否しなかったんだよ。


「どうぞ」


 二人とも恥じらいつつも部屋に入ってくる。

 こんな美人二人にこんな顔されて、我慢なんかできるかよ。

 俺でいいのかとか何で俺なんだなんて野暮は言わない。


 ただ覚悟は決める必要はある。

 この二人は美人で面白いやつらだが絶対にヤバい。


……。

 よし、覚悟はできた。

 たとえポンコツ6人でも何とかしてみせる。



 二人をベッドに座らせる。

 うん、二人ともかなり緊張してるな。


 緊張をほぐすため、まずはクリスに薄く軽く口づけ。

 続けてセフィにも同じように。

 そのままセフィの首筋に軽く口をつけ。

 同じようにクリスの首筋にも口づけ。


 ヤバい、二人の香りで理性が飛びそうだ。

 落ち着け、二人ともまだ緊張してる。

 ゆっくりふたりのペースにあわせろ。


 再度、クリスの唇に軽く口づけ。

 続けてセフィ。


 クリスが腕を首に絡ませ強く唇をおしつけてきた。

 それをみたセフィもクリスが唇を離した瞬間、横から腕を絡め同じように唇を押し当ててきた。


 そこからはまあ、むさぼり、むさぼるみたいな?

 情熱的な戦いだったよ。




 ベッドに横たわる二人の美女。

 なんとも可愛らしい寝顔だね。

 色々大変そうだけど、まあ何とかするさ。


 眠る二人を置いて一足先に部屋を出るとルドがいた。


「おめでとうございます、我が主」


 こういう時なんて返せばいいんだろうな?


「二人を焚き付けた甲斐があったというものです」


「おい」


「なんです?」


「何を言った?」


「簡単ですよ。我が主は300年ぶりに女性に触れられて、若干冷静さを欠いている、既成事実を作るなら今ですよと」


「おい」


「なんですか? 我が主。あなたもあの二人を気に入っていたでしょう? もし嫌ならすぐに追い払うなり、なんなりしていたはずですよ」


「はあ、普段はポンコツなのに気がつくところは気がつくのな」


「褒め言葉として受け取っておきますよ」


 ポンコツ4人衆と朝食か。

 朝の景色に比べるとかなり劣るな。


「旦那さまー、おはようございます」


「サシチ様、おはようこざいます」


 艶々だなおい。


「クリス、セフィおはよう」


「あ、あああセフィ、聞きましたか?」


「あ、ああ。サシチ様がクリスとセフィと」


「旦那さまー」


「サシチ様ー」


「これからよろしくな」


「「はい」」


 んで聞きたかったことが。


「セフィ、なんであそこでクリスと戦闘になってたんだ?」


「それは任務に向かう途中でクリス殿に追いかけ回されまして、それで」


「クリスはなんでセフィを追いかけていたんだ?」


「セフィが乗っていたあの羽虫のようなものですが。あれの大群に何度か襲われたことがありまして、あの経験以降見つけると増える前に潰すようにしていたんです」


 二人ともいつの間にかお互いを愛称で呼ぶようになったのな。


「セフィ、ちなみにその任務について聞いても大丈夫か?」


「かまいませんよ。この世界で主要な国全てが一斉に行っている任務ですし」


「一斉に?」


「はい。3年ほど前に新しい世界がこの世界に取り込まれました。チキュウという世界らしいのですが。そのチキュウの住民のなかでですね、8柱の女神さまがそれぞれ十人だけお力をお与えになるそうです」


 爺さんが言っていたのと似たような内容だな。


「その女神様から力をもらった住人達を保護し、力の使い方とこの世界について勉強してもらう学園がありまして、そこにチキュウの住人をお連れする任務でした」


「へー、ちなみにどんなやつなんだ?」


「えーと私が聞いているのは三人のチキュウ人で、たしか三人ともエルフの女性でしたね。チキュウにもエルフがいたんですね」


 三人の女性エルフ。

 まさかな。


「たしか名前がともえ 六車むくるま、ルーシェル・クルーズ、杏華きょうか 氷室ひむろだったはずです」


 まさかじゃなかったか。


「セフィすまないが大至急その三人のいるところに案内してくれ」

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