第16話 時空鉄
「素晴らしいですねサシチ。ここまで時空魔法を使いこなすとは」
「ありがとう、ルド。魔法が使えるってことがこんなに楽しいとは思いもしなかった」
「そうでしょう、そうでしょう。私もここまで一緒に魔法について語れる相手ができて嬉しいかぎりですよ」
ルドと魔法談義に花を咲かせていると
「お楽しみのところ申し訳ないが、ルドよ。こやつの試験ワシの分が全く進んでいないのじゃが」
「ああ、レーブ申し訳ありません。どうも魔法のことになると歯止めがきかなくなってしまいますね」
歯止めがきかないって、あれはそんなレベルじゃないだろ。
こいつ完全にレーブの試験忘れてたぞ。
「ふむ、ルドは相変わらずじゃな」
は?
相変わらずで済ますのかよ。
だっておっさん少なくとも10年以上は放置されてただろ。
「ワシも試験のことなどすっかり忘れていたしな」
忘れてたのかよ。
「まあよい、思い出したからにはサシチよ。お主に試験を課す」
まあよくないだろ……
ホントに適当だな。
「お主の試験は時空鉄を使って、お主の武具を何かひとつ作成することじゃ。もちろん魔法の付与も必要じゃぞ」
必要じゃぞ、じゃねえよ。
魔法付与とか言う前に武具なんか作ったことねえよ。
そもそも時空鉄ってなんなんだよ。
「ふむ、いきなり言われてもなんのことだかわかっていないようじゃの」
安心しろよ、全くわかってないよ。
「そうじゃの、まず最初はワシの作業を見てもらおうかの」
「さて、まず最初は時空鉄の作り方じゃが」
「レーブ、その前にそもそもその時空鉄ってのはなんだ?」
「時空鉄は時空鉄じゃ」
時空鉄じゃって。
まずい、レーブは人にものを教えるのが壊滅的に向いてない。
「あれじゃよ。お主が最初に壊したこの屋敷の扉。あれの素材が時空鉄じゃよ」
「ああ、あの変な手応えのある金属か」
「変な手応えか。まあよい、この時空鉄はな時間と空間を打ち付けて圧縮し、固めることで完成する」
?
いや、完成するじゃないだろ。
時間と空間を圧縮したら金属になるってか。
さすが魔法のある世界はとんでもねえな。
「まあ、みていろ」
いやいやいやいや。
ゴツイおっさんがなにもない空間に、真剣な表情でハンマー打ち付けてる姿とか何とも言えない絵面だな。
って、おいおいマジかよ!?
なにもない空間に金属板が見えてきた。
ありえねー。
「ふむ、金属板が見えてきたじゃろ。今回は時間をかけて打ち付け、もうすぐ金属板になる部分だったからすぐに金属板になったが、普段はここまでくるのにそれなりの時間を有するからの」
「ちなみにこの金属板になるまでに、どのくらいの時間がかかっているんだ?」
「そうじゃな、半年ほどかのう」
ありえねー。
あの3センチ四方位になるまでに半年かよ。
なによりもあのなにもない空間にむかって、真剣な顔でハンマー振り続けるのがありえねぇ。
「ではお主の番だ」
俺の番て、いきなりすぎるわ!
全然わかんねぇよ。
「レーブ、申し訳ない。もう一度見せてもらえないか?」
「しょうがないのう。もう一度だけじゃぞ」
しょうがないとか言いながら、ちょっと嬉しそうだなゴツイおっさん。
と、集中集中。
あー、あのハンマーか。
あのハンマーに時空魔法の魔力を集めてそれをどんどん圧縮していくのか。
しかし圧縮した魔力が金属になるとか、さすがは魔法のある世界だな。
「ほれ、やってみろ」
渡されたハンマーはとてつもない重さでした。
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